俳優という仕事を選んだ10代の頃、奈緒は「なるべく長く続けられることを仕事にしたい」と考えていた。役者という仕事なら「自分の興味が長く続きそうな予感がした」と振り返るが、経験を重ねた現在は、仕事に対する考え方にも変化が生まれたという。奈緒が考える仕事を選ぶときに大切なこと、そして今、仕事をする上で大切にしていることについて話を聞いた。(前後編の後編)

  • 奈緒演じる薫/映画『シャドウワーク』場面カット

    奈緒演じる薫/映画『シャドウワーク』場面カット

奈緒が俳優を仕事に選んだ理由

――前編では、映画『シャドウワーク』(9月25日公開)についてお話を伺いましたが、ここからは「働くこと」についてもお話をお聞かせください。奈緒さんが俳優という仕事を選んだ理由を教えていただけますか。

今考えてみると、この仕事を選んだときはまだ20歳になる前で、これから先どうなるかは分からないけど、一つだけあったのは、なるべく長く続けられることを仕事にしたいという思いでした。

それがこの仕事を選んだ大きな理由の一つで、長く続けるためには、自分の興味が絶えず続かないといけない。その中で、役者という仕事は自分の興味が長く続きそうな予感がしたというのは、すごく大きかったです。

映画は何本観ても、到底映画というもののすべてを語り尽くせないほど、すごく広く深く、いろんな捉え方ができるものだった。だからこそ分からないことが多くて、こんなふうに取材をしていただいても、今もまだ自分の中で言語化できないなと思うこともたくさんあって。

それを知りたいからこの仕事をしているというところも大きいので、自分の関心がずっと続いてくれるだろうという期待は、この仕事に対してすごくありました。

就職や転職で選択を迫られたら…奈緒からエール「どちらの選択も応援されるべき選択」

――今もまだ興味や関心が尽きていないことが、当時の予感が正しかったことの証明になっている。素敵です。俳優の仕事と異なる部分はありますが、就職や転職で、自分の興味が向く仕事に就きたいと願う気持ちがある一方で、その人が置かれている環境によっては、条件などを鑑みて別の選択肢も考えないといけない状況もあります。そういった場合に仕事を選択するときに、奈緒さんだったら、どのようなことを考えて決断をすると思いますか?

私自身は最初、長く続けられることをやりたいと思ったことが、この仕事を選ぶ大きな理由の一つでもあったんですけど、当時は10代だったので、続けていく中で知ったこともたくさんあって。今は少し、始めたときの気持ちとは変わっていて、自分がやりたいと思うことを叶える、その手段としてお仕事があるというのも、経験を重ねたことで出てきた新しい視点なんです。

もし、自分がやりたいことを叶える手段がほかにあると思うのであれば、私は迷わずそちらに行くと思います。なので、皆さんの中のひらめきというのは、まず自分にしかきっと分からない、自分のことをよく理解しているからこそ起こる変化だと思うので、今こういうふうにひらめきが降りてきた、ということは大切にしてもいいのかなと私は思います。

いずれにしろ、やってみないと分からないことも多いですが、やってみないと分からないことに飛び込むか、飛び込まないかというのは、どちらの選択も応援されるべき選択だというふうに思います。

奈緒が今、仕事をする中で大切にしていることは?

――大学生で就活をしていたときの自分に、この奈緒さんのインタビュー記事を読ませたかったと思いました。最後に、奈緒さんが今、仕事をしている中で大切にしていることがあれば、教えてください。

自分の中で、自分自身を評価する軸というものが存在していて、自然とその軸を使って人のことも判断してしまうところがあると感じているので、なるべくたくさんの人と関わり合って、理解し合うことができるように、自分の軸を増やせるような仕事との向き合い方をしていきたいなと思っています。

――いろいろな軸があると思いますが、その中の一つを挙げるとしたら、どんなものでしょうか。もし差し支えなければ、教えていただきたいです。

一番曖昧で一番知りたい軸が、優しさですね。優しくあることを軸として持っていたいんですけど、この優しさというものが非常に難しくて。受け取り手によってどう思うかというところだと思うので、いろんな優しさを柔軟に持てる人間になりたいと思っています。

いろんな役や作品を通して、「こういう世界もある」「こういう決断をして、こういう環境だと、自分が守られてきたルールでは守ってもらえない人たちがいるんだ」ということに気づいたときに、初めて自分の中に「じゃあ、その人たちにとっての優しさってなんなんだろう?」という新しい視点が生まれるので、なるべくこの優しさの軸を太くしていけたらいいなと思います。まだまだ私の優しさは未熟なので、ここからどうにか太くしていきます(笑)。

(C)2026「シャドウワーク」製作委員会

■プロフィール
奈緒
1995年2月10日生まれ、福岡県出身。NHK連続テレビ小説『半分、青い。』(18)でヒロインの親友役を演じて注目を集める。近年の主な出演作は、映画『傲慢と善良』(24)、『死ねばいいのに』(26)、ドラマ『あのクズを殴ってやりたいんだ』(24/TBS系)、『東京サラダボウル』(25/NHK総合)、『塀の中の美容室』(25/WOWOW)など。映画『シャドウワーク』が2026年9月25日に公開されるほか、主演映画『かすかな彼を抱きしめて』が2027年1月15日公開、主演映画『あをの情』が2027年に公開予定。初のフォトエッセイ『いつか』が好評発売中。
■映画『シャドウワーク』ストーリー
日常的に暴力を振るう夫から逃げてきた紀子。絶望の中、入院先の看護師・路子に救われ、配偶者や親から暴力を受けた女性たちを匿うシェルター〈おうち〉に身を寄せる。そこでは暮らしのすべてが「持ち回り」というルールで成り立っていた。穏やかで守られた日々を取り戻していく紀子だが、少しずつ違和感を覚え始める。やがて〈おうち〉が“交換殺人”によって女性たちを解放している事実を知る。残るか去るか、選択を迫られる紀子。一方、ある事件を追う刑事・薫もまた夫からの暴力に苦しんでいた。疑われることのない夫・晋一と追い詰められていく現実のなかで、薫は事件の先に〈おうち〉の存在へとたどり着く。そして晋一の存在によって、その均衡が崩されていく――。