「春眠暁を覚えず」とは、教科書にも載るような有名な言葉ですが、詳しい意味について説明できる方はあまり多くないかもしれません。
本記事では、「春眠暁を覚えず」の意味と使い方を解説していきます。由来である漢詩の作者や全文、似た言葉の「春はあけぼの」との違いや、類語についても紹介します。
「春眠暁を覚えず」の意味と読み方とは
早速、「春眠暁を覚えず」の意味や読み方を見ていきましょう。
意味は「春の眠りは朝が来たことに気付かないほど心地よく、寝過ごしてしまう」
「春眠暁を覚えず」とは、春の朝の心地よさを表現する言葉で、「春の眠りは心地よいため朝になったことに気付かず、思わず眠り込んでしまって、なかなか目が覚めない」という意味を持ちます。「暁」は夜明けを、「覚えず」は知らず知らずのうちに、という意味を示します。
「春眠暁を覚えず」の読み方は「しゅんみんあかつきをおぼえず」
「春眠暁を覚えず」は「しゅんみんあかつきをおぼえず」と読みます。
「春眠暁を覚えず」の由来・語源は漢詩『春暁』
「春眠暁を覚えず」の由来は、中国の孟浩然(もうこうねん)という詩人による『春暁(しゅんぎょう)』という題名の漢詩の冒頭部分から来ています。
『春暁』の作者である孟浩然は中国・唐時代の詩人
孟浩然は、689年~740年の唐の時代に活躍した詩人で、自然を題材にした詩が評価されています。各地を放浪し、世間の事柄にはあまりとらわれない人だったと言われています。
「春眠暁を覚えず」には続きがある - 全文と解説
先ほど触れたように、「春眠暁を覚えず」は漢詩『春暁』の冒頭部分です。全文と訳は以下の通りです。
春眠暁を覚えず、
(春の眠りは心地よいため朝になったことに気付かず、思わず眠り込んでしまって、なかなか目が覚めない)
処々(しょしょ)に啼鳥(ていちょう)を聞く。
(鳥があちこちでさえずる声が聞こえる)
夜来風雨の声、
(昨夜から雨の音がしていたが)
花落つること知る多少。
(どれほどの花が散ってしまっただろう)
有名な冒頭だけでなく、詩全体から自然や春のすばらしさ、風情があふれていますね。
「春眠暁を覚えず」と「春はあけぼの」との違い
「春眠暁を覚えず」と同様に有名な、春にまつわるフレーズである「春はあけぼの」は、清少納言が書いた『枕草子』の冒頭に出てくる一説です。「春は夜明けが趣があっていい」という意味があります。
どちらも春の夜明けの良さを表現するという意味では同じですが、「春眠暁を覚えず」には“寝てしまう(寝過ごしてしまう)”といった意味が含まれています。
「春眠暁を覚えず」の類語「朝寝」は春の季語
俳句の季語に、「朝寝」と言う言葉があります。これは、「春眠暁を覚えず」の「春眠」から派生したとされる言葉で、心地よい、春の朝のうつらうつらする気分、朝遅くまで寝ていることを表現しています。
「今朝は、天気も晴れでついつい朝寝をしてしまいました」などのように使われます。
「春眠暁を覚えず」の使い方と例文
「春眠暁を覚えず」の例文は以下の通りです。
- 「春眠暁を覚えず」とはよく言ったもので、最近、休日はつい寝過ごしてしまう
- この季節、うちの子はまさに「春眠暁を覚えず」で、なかなか起きてくれません
日常会話やビジネスシーンでのコミュニケーションでも使用できる、情緒のある表現ですね。
春眠暁を覚えずとは、春の朝の心地よさを表すのに適したことわざ
春のうららかな気候は気持ちがよいもので、朝になっても、ついつい布団の中でまどろみ、のんびりしたくなるものですね。
7、8世紀の中国で「春眠暁を覚えず」として歌われたこの気持ちは、現代の日本でも変わらず、多くの人の共感を得ているのです。