「塞翁が馬」とは中国の故事から生まれた言葉で、日本でも座右の銘として好まれています。本記事では「塞翁が馬」の意味や背景をわかりやすく解説します。実際に会話の中で使える例文についても紹介しますので、参考にしてみてください。

  • 塞翁が馬の意味とは

    「塞翁が馬」ってどういう意味? 使い方や由来、例文も紹介

塞翁が馬の意味と読み方とは

まずは「塞翁が馬」がどのような意味を持つのかを見ていきましょう

塞翁が馬の意味は、人生の禍福は予測できないということわざ

「塞翁が馬」は、「人生の禍福(不運と幸運)は転々として予測できない」ことの例えとして使われます。もっと砕けた表現にすると、「不運に思えたことが幸運につながったり、その逆だったりするため、幸運か不運かは簡単には判断できない」という意味です。

塞翁が馬の読み方は「さいおうがうま」

塞翁が馬は「さいおうがうま」と読みます。「塞(さい)」は「要塞(ようさい)」「城塞(じょうさい)」などに使われるように、「とりで」という意味を持ちます。

「翁(おう)」は訓読みだと「おきな」と読み、男性の老人の敬称という意味を持ちます。

塞翁が馬の由来・語源

「塞翁が馬」は中国の故事(大昔にあった物や出来事)に由来する言葉です。ここからは、故事の「塞翁が馬」について見ていきましょう。

塞翁が馬の出典は中国・前漢時代の哲学書『淮南子』

「塞翁が馬」は中国の哲学書『淮南子(えなんじ)』に登場する故事の一つです。『淮南子』は中国・前漢時代に編纂(へんさん)されたといわれています。道家思想を基礎に周末時代以来の諸家の説を取り入れ、世間の動向や逸話などが集められており、教訓を含む物語として知られています。

「塞翁が馬」の故事が生まれたのは、『淮南子』が編纂されたとする中国の前漢時代です。西暦でいうと紀元前206年から西暦8年くらいの頃。春秋戦国時代を終え、中華を統一した秦(しん)が滅んだ後、中国で複数の派閥が生まれ始めた混乱を極める時代でした。

『淮南子』がまとめられた場所は、当時の中国で「淮南(じゅんなん)」と呼ばれていた地域で、『淮南子』という名称は地名にのっとったもののようです。当然、「塞翁が馬」の故事が生まれたのもこの地域でした。

塞翁が馬のエピソード

「塞翁が馬」の「塞翁」とは、中国の北辺の塞(とりで)に住んでいた翁(老人)のことを指しています。

その昔、中国の北辺の塞に占いに長けた老人が住んでいました。ある日そこで飼っていた馬が逃げ出してしまいます。同情した人々に対し、老人は「この出来事が福を招くかもしれない」と言いました。

するとそのうち、逃げ出した馬が駿馬(しゅんめ:足の速い馬のこと)を連れて戻ってきたのです。たくさんの駿馬がやってきたことに人々は喜びますが、老人は今度は「これは禍(わざわい)となるかもしれない」と発言したのです。

すると後日、駿馬に乗っていた老人の息子が落馬して、足の骨を折ってしまう事件が発生しました。これも周囲の人があわれみましたが、老人は今度も「これが幸福を呼ぶかもしれない」と言います。

それから1年後、戦争のため頑健な男子はすべて兵役につくことになりましたが、骨折していた老人の息子は徴兵を免れ、親子ともども命拾いしたというのです。

この話の教訓から「塞翁が馬」は、人生とは何が「福」となるか「禍」となるかわからず、予測がつかないことを表すようになったのです。

人間万事塞翁が馬(にんげん/じんかんばんじさいおうがうま)とは

「塞翁が馬」という言葉を使うときに、「人間万事塞翁が馬」という言葉を見つけることがあるでしょう。これも「塞翁が馬」と同じことを指していて、「人間に起こることはすべて、幸か不幸か予測がつかない」といった意味になります。

「人間」を「じんかん」と読むという説もあり、その場合は「人と人との間」、つまり世の中全体を指す言葉になります。よって「世の中に起こることはすべて、幸か不幸か予測がつかない」といった意味になります。

塞翁が馬の使い方

  • 塞翁が馬の使い方と例文

    塞翁が馬の使い方を身に付けましょう

「塞翁が馬」の意味や背景について説明しました。ここからは、普段の生活に応用できる「塞翁が馬」を使う場面や例文を紹介します。

塞翁が馬の例文

(例文)
塞翁が馬」という言葉の通り、もう少し様子を見てみたらいかがでしょうか。

「塞翁が馬」は、目の前に起きた出来事を「福」と見ることもできるし、「禍」と見ることもできる、解釈の幅を広げてくれる言葉。知人や友人が悪い事態に陥ったとき、励ます言葉として有効です。

(例文)
同僚「〇〇部署に異動になった。まったくついてない…」
あなた「それは災難だったね。でも人生万事塞翁が馬っていうし、もしかしたらもっと良い方向に転がるかもしれないよ」

例えば同僚が不本意な仕事につかされたり、希望ではない部署に飛ばされたりすることがあったとしましょう。同僚は「ついてない」「災いだ」と感じて落ち込んでいます。そんなとき、「塞翁が馬」を使って励ましてみるといいかもしれません。

塞翁が馬の類語、言い換え表現

「塞翁が馬」の類語・言い換え表現を紹介します。

禍福は糾える縄の如し

「禍福は糾える縄の如し(かふくはあざなえるなわのごとし)」は「幸福と不幸は表裏一体だ」という意味の故事成語です。

怪我の功名

「怪我の功名(けがのこうみょう)」は「何気なく行ったこと、また過失だと思っていたことが、偶然良い結果を生み出すこと」という意味があります。

塞翁が馬の英語表現

「塞翁が馬」と「人間万事塞翁が馬」の英語表現を紹介します。

Inscrutable are the ways of heaven

直訳すると「天意は計り知れない」などになります。これは「人間万事塞翁が馬」の「世の中に起こることはすべて予測がつかない」と同義です。

Joy and sorrow are today and tomorrow

こちらは「悲しみの朝には喜びの夕べがつづく」という意味です。良いことと悪いことは隣り合わせであるという意味を表しています。

座右の銘としても使える塞翁が馬

「塞翁が馬」は座右の銘として使ってもいいでしょう。座右の銘とは自分の心に常に置いておき、自分が行動する上でモットーとなる言葉です。

座右の銘は特に、転職活動や就職活動などのシーンにおいて問われることがあります。以下に就職・転職活動時に使えそうな例文を紹介します。

(例文)
「私の座右の銘は『人間万事塞翁が馬』です。人生、良いことも悪いことも表裏一体です。だからこそ、成功したときにもおごらず謙虚でいて、ピンチや災難のときこそ決して腐らず前を向こうと心掛けています」

塞翁が馬を座右の銘にしている有名人

「塞翁が馬」は中国の有名な故事であるがゆえに、好きな言葉や座右の銘としてあげている有名人も少なくありません。

例えば、iPS細胞(人工多能性幹細胞)の作製技術を確立し、ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥氏もその一人です。自身が医学の道に進むことになったきっかけという体験談を交えながら、なぜ塞翁が馬を座右の銘としているのかを高校や大学などの講演会で話しています。

塞翁が馬は座右の銘にもおすすめの故事成語

「塞翁が馬」の意味や由来、使い方について紹介しました。

中国の故事から生まれ、人生の教訓として今日も知られる「塞翁が馬」は、座右の銘としても好まれており、ビジネスシーンでも活用できる言葉です。また、この言葉の意味を理解することで、自分自身が困難に立ち会ったときにも、気負わず、柔軟に対応できるようになることでしょう。

今回紹介した、「(人間万事)塞翁が馬」を普段の生活でも使ってみてください。