さらに、『麒麟がくる』の信長の面白さは「感情の波が激しい」ことだと言う。「今キレていたかと思ったら急にご機嫌になったり、ご機嫌だと思っていたら泣き出したり、泣いていたと思ったら喜んでいたり、目まぐるしく感情が変わる。自分の感情をコントロールできていないんですけど、その感情の波が最終回に向かってどう変化していくのかというのはすごく楽しみですし、その流れで光秀さんと対峙していったときに果たしてどういう現象が生まれるのか。想像ができていないくらい壮大なものになるじゃないかと思っています」

その感情の波は、1シーンの中にいろんな感情があるほど激しい。「1シーンに喜怒哀楽が詰まっている。いくつものシーンがあるくらいの感情の起伏の激しさはすごく心がけています。演じていてかなりやりがいがあり、とても楽しいです」

信長の撤退戦「金ケ崎の退き口」を描いた第31回「逃げよ信長」では、怒りと悔しさから声を上げて泣く信長を熱演し、SNS上で「染谷君の演技力がすごすぎる」「圧巻…!染谷将太すごい」などと反響を呼んだ。この場面はまさに、1シーンでいろんな感情が表現されたシーンだ。

染谷は「『ただ泣くだけではなく、怒りと悲しみと悔しさと、さらに、自分に対する怒りも混ぜてほしい』と演出の一色(隆司)さんがおっしゃって、たくさん引き出しを教えていただきました。長回しで泣き出すところから泣き終わるところまで一連で撮ったのですが、酸欠になって意識を失いかけました」と明かし、「そこまで激しく何かを出すという経験は今までなかったので、いい経験になりました」と振り返った。

そして、「こんなに長い時間、1つの役に取り組むのは初めてです。『麒麟がくる』の織田信長という面白い人物をみなさんと一緒に構築していくという、こんなにじっくり考えて、じっくり作り上げるというのはなかなかありません。大河ドラマで時間をかけてじっくりやるというのは自分にとっては宝です」としみじみと語った。

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