長谷川博己主演のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』(毎週日曜20:00~)第38回で、長谷川演じる明智光秀の娘・たま役として初登場した芦田愛菜。たまは、のちに細川忠興の正室となり、愛と信仰に生きた「細川ガラシャ」として名を馳せるのはよく知られたところだが、芦田はどんなたま像を演じていくのだろうか。今回は、かつて国民的天才子役として名を馳せた芦田の盤石なキャリアと、人間力を感じさせるスピーチ力に着目したい。

  • 『麒麟がくる』たま役の芦田愛菜

芦田の大河ドラマ出演は『江~姫たちの戦国~』(11)以来9年ぶりとなったが、同作ではのちに淀君となる茶々の幼少期と、豊臣秀頼の妻となる千姫の幼少期を演じていた。いま16歳である芦田が、『麒麟がくる』でたま役を演じるということで、芦田の成長をお茶の間から見守っていた視聴者たちも感慨深いのではないだろうか。

子役時代から利発さと卓越した演技力でもてはやされてきた芦田。事務所の方針もあったとは思うが、常に学業を優先しつつも、決して安売りをすることはなく、かといって無難な仕事を選ぶわけでもなく、与えられた仕事に真摯に挑み、着実に成果を上げてきたように思う。そのマルチぶりがすばらしい。

例えば、鬼才ギレルモ・デル・トロ監督作『パシフィック・リム』(13)でいきなりハリウッドデビューを飾ったり、『怪盗グルー』シリーズで声優としての演技力も知らしめたり、連続テレビ小説『まんぷく』(18)のナレーションを1年間務めたり、バラエティ番組『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』のMCを務めたり、仕事での守備範囲を確実に広げてきた。

クレバーすぎる子役は、下手をするとあざとさから反感を買うというケースも少なくないが、芦田については、好感度と精錬さが際立つ。また、演技だけではなく、舞台挨拶での全くほころびのない発言の数々にも多くの人々がうなった。

例えば2018年に行われた『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』のイベントで、芦田は川栄李奈から「発言の一言一言が大人で、20代後半のしゃべり口調だからカッコイイ」と称えられ、中川翔子からは「お仕事もバリバリしてるけど、プライベートも充実してて文武両道」と羨望の眼差しで見られていた。

2020年は、思春期ならではの繊細な心の揺れを表現した『星の子』で主演を務め、『映画 えんとつの町のプペル』では声優のスキルに驚嘆した。両作とも作品としての評価が高かったが、やはり舞台挨拶でのすばらしい発言にも多くの人々が心を打たれた。

『星の子』では、作品のテーマである「信じること」について芦田はこう述べたのだ。

「その人自身を信じているのではなくて、自分の思う理想像を期待してしまっているのではないかと。だから『期待していたのに』とか『裏切られた』といった言葉が出てきてしまう。でも、それは普段は見えなかった側面が見えただけで、裏切られたわけではないのかなと。知らなかった側面が見えたとき、それもその人なんだと受け止めて決断できる揺るがない自分がいる。それが信じるってことなんだと思いました」

16歳の高校生がここまで達観できるものだろうか。また、『映画 えんとつの町のプペル』の舞台挨拶でも、共に主演声優を務めた窪田正孝から「愛菜ちゃんが素晴らしすぎて、僕はもう頭が上がりません」と声優のスキルに脱帽され、隅々まで行き届いたコメントについても「おっしゃってることすべてが完璧で、そういう意味でも頭が上がらないです」と再度、絶賛されたのが記憶に新しいところだ。

すでに女優としても人としても、抜群の安定感を誇る芦田。その人間力はきっと演じる役柄にも反映されていくはず。きっとこの先、苦難の道を行く父・光秀を支えていくたま役を演じることで、また女優として一皮むけそうな予感がする。

ちなみに、たま役が決定した時に出した芦田のコメントもパーフェクトだった。「初めて彼女のことを知った時、自らの散り際をわきまえた、とても潔い最期に意志の強さを感じ、心惹かれたことを覚えています。そんなたまを演じられると聞いたときは、心からうれしく思いました。芯を強く持ち、そしてどんなことがあっても、大好きな父・光秀を慕い、優しく、温かく支える存在として、精いっぱい演じることができれば、と思っております」

『麒麟がくる』の新年1発目は、1月3日の第39回となるが、「本能寺の変」へ向けて、少しずつ信長(染谷将太)と光秀の関係性が悪化の一途をたどることになっていくので、光秀の家族であるたまも戦国時代の渦に巻き込まれていくことに。

朝廷より武士として最も高い冠位を授けられた信長の傍若無人ぶりはすさまじく、疲弊する光秀(長谷川博己)への無茶ぶりもエスカレートしていくばかり。

今後、光秀が窮地に立たされることがますます増えていくことになり、そのぶん、妻の熙子(木村文乃)や長女・岸(天野菜月)、嫡男の十五郎(深川大賀)ら家族のサポートが重要となっていく。そんななか、たまが、どんなふうに愛する父親を支えていくのか、そこにどんな葛藤が生まれるのか、芦田の熱演に期待せずにはいられない。

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