「態々」という言葉を漢字で読める人は少ないでしょう。態々は、通常行う必要のないことをする際に用いる漢字です。ただ、日常の会話で用いる機会は多々あり、幅広いシーンで使用可能な言葉です。

本記事では、態々の読み方や意味、類語、使用する際の注意点などをご紹介します。意味や使い方に気をつけてビジネスシーンに活かしましょう。

  • 日光を浴びている笑顔の女性

    態々という言葉を理解してビジネスに活かしましょう

態々の読み方

態々は「わざわざ」と読みます。ひらがなで見ると頻繁に使うワードであることが理解できると思います。「態」という字は、態度や状態、姿態などの言葉にもあるように「たい」という音読みがポピュラーですが、「わざ」という訓読みもあるのです。

態々の意味

態々には「ついでではなく、その事柄のためだけに時間を使う」という意味があります。おまけのように補足する意味ではなく、苦労を惜しまずにそのためだけに行動する特別感を表すときに使用されます。

一方で、「偶然ではなくわざと故意に行う」という否定的な意味で使われる場合もあります。まぎらわしい表現でもあるため、TPOをわきまえて使う必要があると言えそうです。

態々の語源

態々の語源は、「わざわざし」という古い時代の言葉に由来すると言われています。わざわざしには「わざとらしい」という意味があり、否定的な意味の言葉でした。時代が変わって「態々」という使い方になっても、意図的に行動するという点には通ずるものがあるでしょう。

  • 本を読みながら階段に座っている女性

    態々という言葉の意味を理解しましょう

態々の類語

態々にはいくつか類語が存在しています。類語を知ることで語彙力アップにもつながるでしょう。態々の類語には、「折角」「遠路はるばる」「殊更」などがあります。それぞれの意味をみていきましょう。

■折角

折角(せっかく)とは、「大切である」「尽力する」「滅多にない特別なこと」「苦労や無理をして」などの意味を持つ言葉です。折角を使う例文は以下の通りです。

  • 折角来たんだからゆっくり楽しんでいこう
  • 折角の休日なのに昼過ぎまで寝てしまい、充実させられなかった

1つめの例文の折角を態々に置き換えても意味としては通じ、「苦労や無理をして」というニュアンスと近しいものがあります。

■遠路はるばる

遠路(えんろ)はるばるとは、「長い道のりによって隔てられていること」「長い道のりを苦労して移動する様子」などの意味を持つ言葉です。例文としては以下があげられます。

  • 遠路はるばる来ていただきありがとうございます

遠路はるばるは、到着するまでの距離が遠い際に使用される使い方です。近場の場合は使用しないため注意しましょう。

■殊更

殊更(ことさら)とは、「何か考えがありわざとすること」「格別である」という意味を持つ言葉です。

  • 殊更観察でもしない限り気になるものではない
  • 殊更取り上げるほどでもない

こういった例文があり、態々の「わざとすること」という部分の類語になります。

態々の使い方

態々の使い方には、感謝を伝える場合と否定的なことを伝える場合があります。受け手に誤ったニュアンスでとられてしまうと大変ですので、使い方には気をつけましょう。

■感謝を伝える場合

態々は、「苦労を惜しまず、そのためだけに行動するさま」という意味もあるため、相手に感謝や恐縮であることを伝える場面でも使えます。

【例文】

  • ご多忙のなか態々お越しいただきありがとうございました
  • 態々ご連絡いただいたにもかかわらず、対応できずに申し訳ございませんでした
  • 態々お時間をいただき、感謝いたします
  • 態々ご尽力いただき、厚くお礼申し上げます

■否定的なことを伝える場合

態々という言葉は、「しなくていいことをする(された)」や「余計なこと」など、否定的な意味合いとして使用されることもあります。

【例文】

  • 些細なことだったが態々周囲に聞こえるように怒られた
  • こんなことのために態々連絡してきたのだろうか
  • 明日でもいいことを態々今日言ってくるなんて
  • 相性が悪い相手に態々近づく必要はない

■誤った使い方

同じ漢字が重なる熟語は反復記号の「々」を用いるケースがあります。図々しいや痛々しい、初々しい、軽々しいなど、「○○しい」と表現される言葉がありますが、「態々しい」はありません。偶然ではなく意図的にそうしようとする意味の言葉には、「態とらしい(わざとらしい)」があります。

■態々と業々の違い

「業」という字が訓読みで「わざ」と読むため、業々を「わざわざ」と読む人もいるかもしれませんが、この使い方は誤用です。業々は「げふげふ」と読み、大袈裟なさまを表す言葉と言われています。現代は使われていません。

態々を使うときの注意点

ここでは態々を使うときの注意点についてご紹介します。

  • パソコンで何かを見ている人の手

    態々を使うときの注意点を理解しておきましょう

言葉の表現

態々は、敬語などで使う際に文脈によっては失礼な表現になります。使用に迷ったときは使わないほうが無難でしょう。

例えば、「態々お越しいただきありがとうございます」と「態々お越しいただく必要はございません」をみると、前者は感謝の意を強調していますが、後者は拒否や拒絶ととられる可能性があります。

そして、前者を感謝の意として使っても相手によって嫌味に聞こえる場合があるため、相手や状況によって使用するか判断しましょう。

ひらがな表記

態々のひらがな表記は「わざわざ」です。漢字で書くよりもひらがなのほうが伝わりやすく、わかりやすいため無理に漢字で書く必要はありません。

読みやすさは相手への配慮の一つです。態々のような普段使わない漢字や常用外の漢字は相手を困惑させる可能性があるため、相手によって漢字とひらがなを使い分けるなどの工夫をするとよいでしょう。

態々の英語訳

態々には「all the way」という英語訳があります。シーンに合わせて適切に使いましょう。例文としては、このようなものがあります。

  • This is what I ordered all the way from France.(これは、態々フランスから取り寄せたものです)
  • Thank you for coming all the way.(態々来てくれて、ありがとう)」

態々という言葉への理解を深めて適切に使おう

態々という言葉は、いい意味の言葉なのか悪い意味の言葉なのか、使い方として不安に感じる人もいたのではないでしょうか。態々は感謝の意や恐縮を伝える際に用いられる使い方と、否定的で恩着せがましいニュアンスを持つ部分があり、使い方には注意が必要です。

使い方を間違えてしまうと印象が悪くなることもあるため、態々という言葉への理解を深めて、使用する際は適切に使いましょう。