「本懐」という言葉を聞いたことがありますか? アニメ化された作品の名前で聞いたことがある方もいるかもしれませんが、多くの方が聞き慣れない言葉だと思います。

本記事では、本懐という言葉の意味や使い方を紹介します。

本懐とは

本懐とは「元から抱いていた願い」「本来の希望」という意味です。昨日、今日から考えていたことではなく、長い間願い続けていた願いや希望に対して用いられます。「武道館でのライブは我々の本懐」「このプレゼンは本懐を果たすためのチャンス」といった使い方をします。読み方は「ほんかい」。なお古来では“ほんがい”と読むこともありました。

「本懐」をそれぞれの漢字に分解すると、「本」とは「真の、本当、本質」という意味を持ち、「懐」とは「ふところ」という読み方をするほか、「心に抱く」という意味も持ちます。これらを合わせると「心に抱いた本当の気持ち」と読み取ることができます。

なお、浄土宗を開いた法然上人は説法の中で「釈迦にも出世の本懐(しゅっせのほんがい)なり」と話していたと言われています。これは「お釈迦様がこの世に生まれてきた目的はすべての人を救って成仏させ、浄土に導こうとするためです」と訳されます。このことから、本懐という言葉が古くより用いられてきたことがわかります。

  • 本懐とはもともと抱いていた願いという意味

    本懐の願いは「もともと抱いていた強い願い」

本懐の類義語

本懐のには、「本望」「本意」「宿願」などがあります。どれも強い願いや思いという意味では同じですが、少々ニュアンスの違いがあるため、以下ではそれぞれの言葉の詳しい意味を解説します。

本望

本望とは「元から抱いていた願い、意志」という意味です。意味は本懐とほぼ同じです。違いは使われている時代の差といえるでしょう。「大好物のハンバーグをたくさん食べることが本望だ」「大学院に行くことが本望だ」というように使います。

上記の例文において、本望を本懐と置き換えてもいいのですが、本懐は武士が使っていたイメージが強く「ハンバーグをたくさん食べることが本懐だ」と言うと命がけで食べているような印象を受けます。

本意

本意とは「本当の気持ち、真意」という意味です。本望や本懐との違いは「前から抱いていた気持ちかどうか」という点です。本意は現在の気持ちを表すので、それが以前から想っていた気持ちと同じとは限りません。

「不本意ながら決定を受け入れた」や「社長の発言が本意であるならば信じられない発言だった」などの使い方をします。

宿願

宿願とは「前々からの願い」という意味です。本望や本意と比べて、一番本懐に近い意味を持つ言葉といえるでしょう。「宿願を果たす」と言うと、ただの願望というよりも悲願をようやく達成したという印象を受けます。

なお、宿願の類語である「悲願」には一部マイナスのニュアンスが含まれています。例えば、甲子園で「○○高校、悲願の初優勝を決めた」と言うと“ずっと惜しいところで負けてうまくいかなかったけれど、やっと優勝できた”という意味が込められたものになります。

  • 本懐の類義語

    キ類義語は使い分けが難しいのですが、微妙に受ける印象や使い方が異なります

本懐の使い方

本懐は、「それが私の本懐だ」など単体でも使用することができますが、セットで使える決まった言葉もあります。本懐とセットで使われる「遂げる」「果たす」「至る」の使い方をご紹介します。

本懐を遂げる

「本懐を遂げる」とは、もともとの願いを達成するという意味です。「武道館ライブをしたあのミュージシャンは『本懐を遂げた』とアンコールのときに言っていた」と使えば、このミュージシャンは、武道館でライブのすることが長年の目標でそれがやっと叶ったということが伝わってきます。

本懐だけだと類義語は、本意、本望、宿願となりますが、「遂げる」を合わせることで初めから一貫した気持ちでやり遂げる「初志貫徹」と似た意味になります。

本懐を果たす

「本懐を果たす」とは、本懐を遂げると一緒で本懐を達成する、完遂するという意味です。「今が本懐を果たすための最後のチャンスだ」のように使います。

本懐の至り

「本懐の至り」とは、本懐を遂げて、思い残すことがないぐらい満足していることです。

「至る」には「今に至る」など“現在の状態に達する”という意味があります。また、ただ達するだけでなく“極まる、極限の状態まで達する”という意味も持ち、本懐と至るが合わさることで、もともとの願いが叶った最高の状態を表すことができます。

  • 本懐の使い方

    現代でも使えそうなフレーズもありますね

本懐という言葉が使われた有名な作品

現代でも「本懐」という言葉を使った作品は多くあります。現代ではあまり使われない言葉だからこそ、インパクトの強いタイトルになることもあるのでしょう。ここでは特に有名な漫画と長編経済小説の2つを紹介します。

漫画『クズの本懐』

『クズの本懐』(横槍メンゴ作)は、月刊ビックガンガンで2012年から2018年まで連載されていた人気漫画です。アニメ、ドラマ化もされたため、聞いたことがある方も多いでしょう。

それぞれ他に思いを寄せる人がいながら関係を持つ、一見理想的なカップル2人のストーリーで、叶わぬ「本懐」を抱えた2人の葛藤が見られる作品です。

長編小説『男子の本懐』

『男子の本懐』(城山三郎著)は、第27代内閣総理大臣の浜口雄幸(はまぐちおさち)氏と大蔵大臣を務めた井上準之助氏が行った経済政策の背景や、彼らの人間性を書いた長編経済小説です。

  •  本懐という言葉が使われた有名な作品

    会話で使われることが減っていても、本懐は作品名で使用され続けています

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本懐は、現在ではなかなか使うことのない言葉ですが、使われていた時代に思いを馳せたり、意味を知ることで使ってみたいと思ったりする方もいることでしょう。ぜひ、自分が持っていた強い思いを語るとき、それを達成したときに「本懐」という言葉を使ってみてください。