「鑑みる」は仕事でも日常生活でもよく使われますが、中には間違った使われ方をしている場面も多く見られます。

本記事では、「鑑みる」「鑑みて」の意味や語源をはじめ、シチュエーション別の使い方や省みる/踏まえる/考慮するなどの類語とそれぞれの違い、さらには英語表現についても紹介していきます。

  • 鑑みるとは

    「鑑みる」の意味や読み方、例文などを紹介します

「鑑みる」「鑑みて」の意味や語源、読み方とは

早速、「鑑みる」「鑑みて」の意味などについて見ていきましょう。

「鑑みる」「鑑みて」の意味

「鑑みる」とは、「先例や過去の事例、手本などを参考にして考える」という意味の言葉です。何かと照らし合わせることがポイントで、単純に思いを巡らせているだけではありません。

「~に鑑みると」「~に鑑みて」といった使い方をします。

「鑑みる」の語源

「鑑みる」は元々、「鏡(かがみ)」が動詞化したものです。

「鑑みる」の「鑑」の字を使って「あの人は教師の鑑(かがみ)だ」などと表現しますが、「鑑」や「鏡」には「模範」や「手本」といった意味があります。

「鑑みる」の読み方は「かんがみる」

「鑑みる」は「かんがみる」と読みます。「鑑」という字は音読みでは「カン」、訓読みでは「かがみ」と読みます。

元々は「鑑る」と書き「かがみる」と読んでいたものの、これが変化していき「かんがみる」となったと言われています。

「を鑑みる」は誤用で、「に鑑みる」が正しい使い方

「鑑みる」は、「~に鑑みる」が正しい使い方です。一方で、「に」という助詞を「を」に変えた「~を鑑みる」という誤った使い方をされるケースがあります。

「鑑みる」と似た意味を持つ「照らし合わせる」という言葉も、「○○に照らし合わせる」のように「に」とのセットで使われます。それと同じく「『に』鑑みる」と使うと覚えるといいでしょう。「失敗を鑑みる」のように「を」を使うと、照らし合わせる手本がないため誤用となります。

「鑑みる」「鑑みて」の使い方と例文

  • 鑑みるの使い方

    「鑑みる」「鑑みて」を使った例文を参考に、使い方をイメージしましょう

誤用も多い「鑑みる」「鑑みて」という言葉を正しく使うには、実際の例文を知るといいでしょう。「鑑みる」「鑑みて」を使った例文をシチュエーション別に紹介します。それぞれの使い方を見ていきましょう。

会話シーンでの使い方

日常会話で「鑑みる」を使用する機会はあまり多くはありませんが、例えば何かを議論する場などでは使用される表現でしょう。

  • 例の案件は過去のイベント事例に鑑みた上で対応すべきだ
  • これまでの状況に鑑みると、彼の言っていることは正しかったと思う

ビジネスシーンでの使い方

状況や先例などから物事を判断していくビジネスにおいては、「鑑みる」が使われる機会は多いでしょう。

例文としては、

  • 前例に鑑みると、今回の案件は大きく改善の余地があるでしょう
  • チームとしてうまく連携が取れなかった先週の事情に鑑みて、今週は人員を増やしてほしい
  • 去年の実習内容の事例に鑑みるべきだと思います

などがあげられます。

会議シーンでの使い方

会議では会社の経営や今後について協議されるケースが往々にしてあります。そのような際は先例を参考に比較することが多いため、「鑑みる」を使う機会が必然的に増えると考えられます。

例文としては

  • 他社の福利厚生への取り組みに鑑みて、わが社も改善する必要があります
  • 不安定な情勢に鑑みると、楽観視できません
  • 先月の売り上げに鑑みて、当初予定していた予算を大幅に引き下げることを提言します

などです。

コロナ禍で聞く機会が増えた「鑑み」「鑑みて」

コロナ禍では、イベントの内容変更や中止などが相次いで起こるようになりました。このような時に主催者側が発表するお知らせ文に「新型コロナウイルス感染症の状況に鑑みて」「昨今の社会情勢に鑑みて」などという言葉がよく使われていました。

そのため、以前よりも「鑑みる」という言葉を聞く機会が増えたと感じた人も多いでしょう。

「鑑みる」の類語・言い換え表現と、それぞれの違い

「鑑みる」の類語も一緒に覚えれば、語彙が広がり表現に幅を持たせられます。それぞれの意味と違いを理解し、状況に応じて使い分けましょう。

省みる

「省みる(かえりみる)」は「自分のしたことをもう一度考える」という意味の言葉です。過去を引き合いに出す点で、「鑑みる」の類語と言えるでしょう。

しかし「省みる(かえりみる)」には反省のニュアンスが含まれます。「鑑みる」は手本を見習うような意味合いが強く、反省の意味合いは基本的にありません。

顧みる

「顧みる(かえりみる)」とは、「過ぎ去ったことを思い起こす」「心にとどめて考える」「振り返って見る」という意味の言葉です。こちらも過去を引き合いに出す点で、「鑑みる」の類語と言えるでしょう。

ただし、「顧みる」とは単に過去の出来事などを思い返すことや、気にかけるときに使われる言葉です。先例や規範に照らし合わせ考えるときに使う「鑑みる」とは、ニュアンスの違いがあるでしょう。

踏まえる

「踏まえる」は、「過去を考える」「しっかりと足で踏む」「根拠とする」「判断のよりどころにする」「配慮する」などの意味を持つ言葉です。過去を考えたり判断のよりどころにしたりすることが、「鑑みる」と類似した表現になるでしょう。

比較対象がある点で共通していますが、「踏まえる」は基準として現状を判断する意味として使われます。前提とするか参考にするかという点において、「鑑みる」との相違があるでしょう。

考慮する

「考慮する」とは、さまざまな要素を含めて物事をよく考える、配慮するという意味の言葉です。よく考えるという点で、「鑑みる」の類語に該当するでしょう。

しかし、「考慮する」は、判断や行動をする前によく考えることを表しているため、先例や規範など参考にする対象がなくても使用できる言葉です。参考の対象となる先例があるかないかで使い分けましょう。

勘案する

「勘案する」は、「あれこれと考え合わせること」という意味の言葉です。考慮と同じように、参考の対象となる先例やほかの事例の有無は問いません。

また「あれこれと」とあるように、複数要素を踏まえて考える場合にのみ使える言葉で、要素が一つしかない場合には使えないので注意しましょう。

「鑑みる」の英語フレーズ

英語では「In view of~」という表現があてはまります。

例文としては

  • The project is abandoned in view of the past situation
    (過去の状況に鑑みて計画を中止する)

  • In view of her failure, we should work out a new approach
    (彼女の失敗に鑑みて、私たちは新たな方法で解決しなければなりません)」

などがあります。

「鑑みる」を理解し正しく使えるようになろう

「鑑みる」は先例や規範に照らし合わせて考える意味の言葉です。類語もありますが、ニュアンスの違いがあるため状況に応じて使い分けましょう。

また、「~を鑑みる」という使い方は誤用で、正しい使い方は「~に鑑みる」であることも覚えておく必要があります。特にビジネスシーンでは使われる場面が多いため、正しく理解して使えるようになりましょう。