秋ドラマが中盤戦へ突入した。

やはり世相を反映するのか各作品でもコロナを扱ったシーンが見られる。例えば『共演NG』(テレビ東京系)の第1話でも、制作発表会のシーンでは検温やフェイスガードなど、テレビでよく見ている光景が出てくる。主演の中井貴一さんが検温をすると、まさかの32度台で

「死んでるんじゃないの(笑)?」

と、鈴木京香さんから突っ込まれるシーンが。その他『姉ちゃんの恋人』(関西テレビ・フジテレビ系)ではホームセンターで働く主演の有村架純さんが、コロナ禍で客同士がマスクの奪い合いをしていたことを回想していたり。

その最中で波瑠さん主演の『#リモラブ~普通の恋は邪道~(以下、リモラブ略)』(日本テレビ系)は出演者全員がマスク姿、ソーシャルディタンス……と、2020年の日本のリアルがそのまま描かれている。これに賛否あるのは承知だが、個人的にはとっても推している。

これは国内ドラマの"挑戦"なのかもしれない

  • ドラマ『#リモラブ~普通の恋は邪道~』主演の波瑠

    ドラマ『#リモラブ~普通の恋は邪道~』主演の波瑠

まずは『リモラブ』のあらすじを。

企業の産業医として勤務する大桜美々(波瑠)は長らく彼氏のいない、28歳。正論しか言わない、カタブツな姿勢に社内では変わり扱いをされている。そんな美々が自粛期間中、同僚から紹介されたオンラインゲームで出会って交流をする"檸檬"という男性が現れる。顔も名前も知らなかった相手に想いを寄せる美々。その相手が社内の青林風一(松下洸平)と判明して、リアル交際を始めることに。

第6話を終えて、ついに二人は心を通わせた。ハンドルネームではなく、お互いの名前で呼び合う関係になったわけだ。

このドラマが一番すごいと思ったのは、新型コロナウイルスにより、緊急事態宣言が出されて、私たちの生活は今まで体験したことのないパターンへ突入した。でも今の状態がベストかといえばそうではない。本音は2019年のライブや宴会へ行くことに躊躇のない、普通の日々に戻りたい。

そういう少しくすんだ気持ちを『リモラブ』はすべてラブコメディに変えてしまったという、仕事の速さには敬服する。おそらく何か他の企画のドラマが予定されていただろうに、あっという間に時代を反映してしまった。

先ほどカタブツだと紹介した美々は、社内でコロナウイルスに関する対策を徹底、そしてパトロールも怠らない。消毒、マスクの装着から捨てる方法、ソーシャルディスタンスの指示。見慣れたはずの光景が物語として映ると、笑いに変わる。そう『リモラブ』はコロナ禍を笑いに変えた、救いの手。そして日本ドラマの大胆な挑戦である。

目が口よりもモノを言う、マスク装着の演技

出演者が全員マスクを装着しているという状態も、放送回を重ねるごとに見慣れてくる。でも大変なのは演じている当の本人たちだ。

マスクでこもってしまう声は音声で調整するとしよう。でも肝心の口が隠れていれば伝えられるはずの魅力が、半減してしまうこともあり得る。

そこでよーく俳優陣を見ていると、大雑把に演技が2パターンに分かれていることに気がつく。まずは"リアクション"派。青林の所属する人事部の三人は、全員。及川ミッチー(光博)はイメージを裏切らない、オーバーリアクション。青林は弱気な性格ゆえにいちいち驚く特性を大袈裟に表現している。お見事なのはやる気のなさそうな五文字を演じる、間宮翔太朗さん。明るそうなパブリックイメージを見事に封印して、引きこもりに憧れる暗い雰囲気を醸し出している。

それから看護師・八木原くん(高橋優斗)が言っていた"眼圧"派。これはもう言葉のまま、目力だけで相手を押し倒す演技を見せている人たち。波瑠さん、高橋優斗さん(HiHi Jets)、そしてたまにわがままを振りかざしてくる営業部の岬演じる渡辺大さん。特に高橋さんはジャニーズ仕込みの舞台で培った血が騒ぐのだろうか? 新人とは思えない存在感を目から放っている。

キャスト全員がマスクを装着しているドラマを見られるのは、おそらく今回限り。時間がある人はぜひ見て欲しい一作なのだ。