今年前半、外出もままならず仕事はテレワークにと、コロナ禍によってガラリと変わった我々の暮らし。そうした新しい生活様式の中で、「炭酸水」の売れ行きが好評だという。確かに、コンビニ・スーパーに行くと、以前に比べて様々な炭酸水が棚に陳列されていることがわかる。他の飲料とは異なる炭酸水の特徴や効果はどこにあるのか?「サントリー天然水スパークリングレモン」等を開発・販売している、サントリー食品インターナショナル ジャパン事業本部 ブランド開発事業部の村上公規さんにその魅力についてお話を伺った。
「直飲み」「お酒の割材」の二つの需要
――炭酸水というと、昔はお酒を割るもののイメージでした。今はコンビニ、スーパーにも多くの商品が並んでいて、単独で飲む飲料として定着している印象です。まず、炭酸水を取り巻く現在の状況を教えていただけますか。
炭酸水はおかげさまで市場全体が伸びています。ただ、コロナ禍で急速に伸びたというわけではなくて、ちょっと前ぐらいから少しずつ伸びているカテゴリーではありました。具体的に申し上げますと、2015年ぐらいの市場と比較したときに、2019年の市場がだいたい1.6倍ぐらいにマーケットが大きくなっています。その中でもレモンは2倍ぐらいに市場が伸びています。僕らは所謂「非糖化」と呼んでいるんですけど、砂糖の入っていない無糖の炭酸水になるので、「あんまり甘い飲み物は控えよう」とか、「身体の健康に気遣おう」というヘルシー志向のお客さまが飲み始めて、マーケットとしては堅実に成長していったというのが1つあります。その上で、コロナ禍に入ってグッとそこの成長にドライブがかかったという状況です。コロナ禍に於いてはやはりお客さまがなかなか外出しずらいということもあって、全飲料の前年比が10%ほど落ちているんです。その状況に対して、炭酸水は1.1倍ぐらいに伸びているんですよ。つまり、全体の飲料からすると20%ほど伸びています(2020年1月~8月分)ので、市場として炭酸水は好調です。
――2020年に入り「サントリー天然水スパークリングレモン」のリニューアルや「サントリー天然水 贅沢スパークリング 白ぶどう&赤ぶどう」の新発売などがありました。このあたりはそういった需要を踏まえて開発してきたということでしょうか。
もともと炭酸水が伸びているというところに着目して開発もずっとしていたんですけど、「コロナ禍でなぜ炭酸水が伸びたのか?」という話をもう1度社内でもひも解いてはいて。簡単に言うと、冒頭におっしゃっていただいたように、炭酸水を直に飲むお客さまが増えていますし、同時にお酒の割材として飲む人も増えていますし、両方の需要が伸びているというのは間違いなくあるんですよ。結構、お酒を飲まれる方が居酒屋に行けなくなったから割材需要は伸びるだろうという肌感がある方が多いと思うんですけど、割と直飲みの需要も増えているんです。いつもは水やお茶を飲んでいた人が、通勤もなくなりテレワークが始まり、自分の中で生活リズムが作れないというときに、リフレッシュのために水やお茶の代替えとして炭酸水を飲み始めたという人が多いです。割材の方はイメージ通りで、居酒屋に行けなくなって自宅でお酒を飲むときに炭酸水を飲まれる方が増えました。ただその中でも、直飲みにしても割材にしても、じつはレモン味が伸びているんです。なぜかと言うと、無糖の中でもお茶って味があるじゃないですか?でも炭酸水は味がないですよね。ですからお茶の代替えとして炭酸水を飲む方が好まれるのが味があるレモンの方で、しかも気分が上がりそうな果実なので、そういう意味でもリフレッシュに向いているのがレモンの需要が伸びている理由になっています。
――なるほど、確かに炭酸プラスレモンってすごくリフレッシュされそうなイメージです。割材の方でレモンが好まれているのはどんな理由なんでしょう。
割材の方は、例えば居酒屋だとボタン1つで注文できるものを、やはり自分で作るとなると面倒くさいという声があります(笑)。氷を入れてウィスキーを入れてレモンの炭酸水を入れるだけで、その味が簡単に作れるという楽さで、よりレモンの炭酸水が伸びているところなのかなと思います。直飲みで色んな人が無糖炭酸水を飲まれていたり、有糖の飲料を飲んでいる方もずっといますので、そういうお客さんのニーズをレモン以外でも満たしていった方がいいかなというところもあって、今年9月に「サントリー天然水 贅沢スパークリング 白ぶどう&赤ぶどう」という商品を発売させてもらいました。直飲みで盛り上がっている需要をちゃんと押さえに行こうということですね。
――直飲みと割材の両輪で市場が伸びているということですね。
そうですね。炭酸水が家にある生活をしているお客さまが増えているなと感じています。特にイメージが付きやすいのが、通販系の会社でうちの商品(サントリー天然水スパークリングレモン)のボリュームが1.4倍ぐらい伸びていて(4月~9月の前年比)。ケースで買って家に置いて、直飲みもするし、割材としても使うしという。新しい生活様式に合わせて「家に炭酸水がある生活」をしているお客さまが広がっているな、という実感がすごくあります。だからこちらとしても、直飲みと割材の両輪を含めて、マーケティング活動をしていかないといけないなと考えています。