――運動神経抜群の佐野さんは『鎧武』本編中で、変身前のアクションにも積極的に挑まれていましたね。お2人のアクションシーンの思い出をぜひ聞かせてください。

小林:でも、現場でアクションやって褒められた回数は、岳もオレも一緒なんだよ。

佐野:うーん、それは"求められるアクション"の内容が違うからなあ(笑)。ひょっとしたら豊のほうが褒められた回数は多いかもしれない。

小林:岳の場合は「アクションできる」のが"標準"だからね。

佐野:オレがいくらバック転とかバック宙とかやっても、豊がちょっと高めの段差を飛び越えたときのほうが、周りからの拍手の数が多い(笑)。

小林:そうかもしれない(笑)。ある朝、撮影所に「おはようございまーす!」って入るじゃないですか。そしたら、岳が"壁を走ってる"んですよ。僕からすると不思議な光景ですよ。「なんで岳は壁を走っとんねん?」って(笑)。

佐野:アクション監督の石垣広文さんが「佐野に"壁宙"をやらせたい」と話していて、自分もやりたかったので、もうノリノリで練習していたんだよね。念願だった「バック宙からの"変身"」もできましたし。『鎧武』に出てからですよ、アクションが楽しいなって思えるようになったのは。……でも、褒められるのは豊なんだよな。

小林:ホントね。

佐野:ホントね、じゃないよ(笑)。

小林:オレとしては、あのころほど毎日"痛かった"思いをしたことはなかったね。

佐野:豊はすぐ怪我するんです。"ワンアクション、ワン怪我"だったね(笑)。

小林:そうそう。脚をくじいたときは痛かったし、敵にキックを決めた際、思いっきり振った右手で自分の顔面を殴打したこともあった。特に目を強打したもんだから涙が止まらなくて、監督が「今のアクションよかったぞ。モニター見に来いよ」と言ってくださったんだけど、「ハイ、よかったです!」なんて答えながら目が痛くてぜんぜん見えなかった(笑)。

佐野:特に、高いところから飛んだときなんて、怪我しなかったことなかったんじゃないかな。

小林:一度、わりと高いところからジャンプするカットがあって、そのときもみなさんから「よかったぞ!」と褒めてもらったんです。おお、今回は怪我しなかったぞ~、すっげえ!って驚かれたんですけど、その直後ですよ。戒斗が着地するカットを"寄り"で撮ったとき、ヒザが自分のアゴにガツーンと当たって、すげえ痛かった……。

佐野:あ~、ちょっと油断したんだね。

小林:やっぱり、"ワンアクション、ワン怪我"なのか~~!とがっかりしたなあ。岳は怪我しなかったでしょ。

佐野:いやいや、オレも小さな怪我はしょっちゅうだったよ。言わないだけで。

――2017年の映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー』で佐野さんが久しぶりに紘汰を演じられたときも、橋の上での飛び蹴りを披露してくれましたね。当時の舞台挨拶で「一歩間違えば橋から落ちていた」と話していたように、あれも相当危険な撮影だったんでしょうね。

佐野:そうですね。落ちたら「人生クランクアップ」でした(笑)。でも、あのときもたくさんの仮面ライダーファンの方々に喜んでもらえたなと思って、やってよかったと思ってますよ。

――『鎧武』テレビシリーズの1年間を振り返り、特にご自身が「ここは頑張った」と思える出来事があれば、教えてください。

佐野:やっぱり、高岩成二さんと一緒にひとつの役を作り上げることができた、というところでしょうね。自分ひとりが演技したのではなく、周りの環境や、役柄同士、キャスト同士それぞれの関係性があったからこそ、ひとつの芝居を全力でやりきることができたんだと思います。戦闘中の鎧武に僕が声をアテる、というのもたくさんやってきましたが、あのシーンが浮いたものにならず、いつも説得力のある声になっているのは、僕が声を入れるのではなく高岩さんが声を出させてくれていたんだと、映像を観返して再確認しました。

『仮面ライダーウィザード』(2012年)の最終回に登場した鎧武が、僕が初めてアフレコを経験した場面なんですけど、石田(秀範)監督から「佐野、アフレコ意外とイケるな」って褒めてもらえたんです。 そのときは「俺アフレコ得意なのかな」なんて思ってたんですけど、そういう風に言ってもらえたのは高岩さんが僕の声を"出させて"くれたからなんだなって、後から気づいたんです。

小林:永徳さんと僕との関係も同じですね。永徳さんのバロンの芝居はカッコいいので、僕は戒斗としてその動きに追いつかないといけないって、すごく思っていました。戦うときのかけ声も、普通だと「ハァッ、ハァァァア!」みたいな感じでやるところを、バロンがあまりにも凛としすぎてているからこちらも「フン、フッ!」って、すごく重い感じの声になっていくんです。

佐野:今回の「CSM戦極ドライバー」では、僕らが当時のセリフを再現して新しく収録しているけれど、これも『鎧武』という作品で、みんなと力を合わせてやってきた実績があるからこそだと思います。紘汰の音声、戒斗の音声が入っていますけど、作品に関わったすべてのキャスト、スタッフの"想い"もまた、一緒に入っていると感じています。だからこそ、こういう商品が作られることがうれしいんです。

小林:こんなにもいろいろなキャラクターの"個性"が色濃く引き出せたのは、『鎧武』のキャストが多かったからもしれない。ライダーだけでも相当な数がいたからね。そんな中で、戒斗なら紘汰と対峙したときの"威圧感"というか火花バチバチ感とか、ザッペコ(チームバロンのザックやペコ)と一緒にいるときの"信頼感"とか、ひとりのキャラが誰と絡むかで、関係性が変わってくるじゃないですか。凰蓮に翻弄されたり(笑)。そうやって戒斗という人物像が深みを増していったんですね。