これで2勝2敗。王座戦五番勝負の決着は最終局に持ち越し!

将棋のタイトル戦、第68期王座戦五番勝負(主催:日本経済新聞社)の第4局が10月6日に兵庫県「ホテルオークラ神戸」で行われました。永瀬拓矢王座が2勝、久保利明九段が1勝で迎えた本局は、201手の激闘の末挑戦者の久保九段の勝利。両者2勝となり、番勝負の決着は最終局へ持ち越されました。

本局は先手の久保九段が得意の四間飛車を採用し、対抗形の将棋になりました。永瀬王座は序盤早々に角を5五~7三へと転回させます。久保九段がその角を目標に仕掛けていき、戦いが起こりました。

飛車角交換のさばき合いの末、久保九段は2枚の竜、永瀬王座は2枚の馬を盤上の要所に配しました。先に銀得の戦果を上げたのは永瀬王座。しかし久保九段もすぐにと金で銀を入手します。

持ち駒に桂香の飛び道具がない久保九段は、金銀3枚で守られた永瀬玉の攻略に苦慮します。少し遠巻きな攻めではありますが、6筋に歩を垂らしていきました。一方、銀・桂・香・歩の豊富な持ち駒を持つ永瀬王座。美濃囲い最大の弱点である端攻めを繰り出します。端を詰めてから2枚の馬を攻防に活用し、永瀬王座がリードを奪いました。

永瀬玉は鉄壁。さらに厳しい攻めが久保玉に突き刺さります。このまま永瀬王座が押し切るのか。もし対戦相手が久保九段でなければ観戦する誰もが思ったでしょう。

しかし先手を持つのは「粘りのアーティスト」の異名を持つ久保九段です。簡単に倒れるわけがありません。バッサバッサと馬2枚を切り飛ばし、金銀で寄せてくる永瀬王座に対して、徹底抗戦。竜を守りに使い、角を攻防に打ち、金銀を自陣に何度も打ち付けます。辛抱に辛抱を重ね、チャンスを待ちました。

粘り続けたのが功を奏し、一時は銀1枚だけの守りだった久保玉がみるみる固くなっていきました。▲2八金と打ち付け、ついには金銀4枚の穴熊が出現。ここで攻めを継続していれば、永瀬王座が辛くも勝利を収めていたのかもしれません。しかし、永瀬王座は自陣に手を戻します。

久保九段の辛抱が実を結んだ瞬間でした。ついに手番を得た久保九段が反撃に転じます。桂を王手で跳ねて玉を端に追いやり、▲1五歩と伸ばして圧迫します。1筋は永瀬王座に抑え込まれていた地点。その勢力図が入れ替わったとなれば、形勢逆転は明らかです。

永瀬王座も遅ればせながら穴熊攻略を目指しましたが、久保九段はがっちりと銀を守りに投入し、崩れません。攻めが続かなくなった永瀬王座はやむなく粘りに出ますが、久保九段はしっかりと寄せ切って、逆転勝利を収めました。

もうだめかと思われた局面から、驚異の粘りで逆転まで持って行った久保九段。最終第5局への意気込みを聞かれ、「しっかりと準備して当日を迎えたいと思います」と答えました。

一方、強靭な粘りに手を焼いて白星をつかみ損ねた永瀬王座。自身初防衛を本局では決めることができませんでした。最終局に向けては「ベストを尽くして頑張りたいと思います」と語りました。

大注目の第5局は10月14日に山梨県「常磐ホテル」で行われます。絶対に自分からは倒れない両者による対局は、熱戦間違いなし。今から楽しみです。

200手を超える大激闘を制したのは久保九段(左)だった(提供:日本将棋連盟)
200手を超える大激闘を制したのは久保九段(左)だった(提供:日本将棋連盟)