JR西日本金沢支社が10月3日に実施したダイヤ修正に合わせ、七尾線向けに新製された521系100番台が営業運転を開始した。金沢~七尾間(金沢~津幡間はIRいしかわ鉄道)の普通列車のうち、上下各6本を521系100番台に置き換え、2両編成で運転する。

  • 七尾線に521系100番台を投入。10月3日から営業運転を開始した

521系は交流・直流電化区間のある北陸エリアでおもに投入されてきた交直流近郊形電車。JR西日本の北陸本線をはじめ、IRいしかわ鉄道・あいの風とやま鉄道でも521系が活躍している。七尾線はこれまで415系800番台や413系を使用してきたが、新たに521系100番台を投入し、サービス向上を図ることになった。

七尾線の521系100番台は、北陸本線で運用される521系(3次車)のデザインを継承しつつ、ラインカラーに輪島の漆塗りを連想させる茜色を採用。ドア間の座席は転換クロスシートとし、七尾方の連結部側にロングシート(優先座席)、金沢方の連結部側に車いすスペースと多機能トイレを設けた。乗降ドアの上部に情報表示装置を設置し、列車の行先や次の停車駅などを案内する。車内灯はLED照明となり、自動温度調節による空調の最適化を図るなど、サービスを充実させている。

北陸エリアで初という車載型IC改札機も特徴。現在は使用していないが、乗降ドア付近に乗車用、運転台後方に降車用の車載型IC改札機を設置しており、全車置換えが完了する2021年春頃から使用開始するとのこと。これにより、七尾線でも「ICOCA」など交通系ICカードが利用可能(一部列車を除く)となる。戸挟み検知装置をはじめ、JR西日本の最新の車両で導入している車両異常挙動検知装置やEB-N装置(運転士異常時列車停止装置)、先頭車間転落防止ホロといった安全対策も施した。

  • 521系100番台の車内。車載型IC改札機は全車置換え完了後に使用開始する予定(写真提供 : JR西日本金沢支社)

  • 521系100番台の外観(写真提供 : JR西日本金沢支社)

七尾線の既存車両は415系800番台も413系も3両編成で、利用者の多い時間帯を中心に6両編成で運転されることもあるが、521系100番台を使用する上下各6本の列車はすべて2両編成。平日朝夕の通勤・通学時間帯に金沢駅を発着する列車もあり、混雑が増すことも考えられる。

一方で既存車両、とくに415系800番台は乗降ドアとホームの段差が大きく、駅での乗降りに苦労するケースもあった。走行中の騒音もかなりのもので、車内放送などが聞き取りづらい。新たに投入された521系100番台では、既存車両と比べてホームとの段差が軽減され、走行中も車内は静か。窓の部分に飲み物等を置きやすくなったこともあり、着席できた場合の居住性は向上したといえる。七尾線は津幡~中津幡間で交流・直流が切り替わり、既存車両はこの区間で車内灯が消灯していたが、521系100番台では解消された。LED照明を採用したため、より明るい車内空間となった。

  • 521系100番台も今後も順次投入され、七尾線の415系800番台など既存車両を置き換える

既存車両からの全車置換えが完了すれば、現在の片側2ドア(413系)・3ドア(415系800番台)の車両が混在する状況も改善されることになる。七尾線の521系100番台は2両編成を15編成、計30両を投入する予定となっている。