コーチングとは

対象者の目標達成を支援する際、一般的には「教える」「アドバイスする」といった手法が用いられます。

コーチングはこういった一方的な指導ではなく、双方向の対話を通じてクライアントの内面にある考え方や行動変容を引き出すコミュニケーションスキルです。クライアント自らが考え、答えを作り出すことをサポートしながら自発的な能力発揮を促します。

一人ひとりが目標達成のためのプロセスを自身で導き出すことができれば、クライアント個人の成長のみならず「チームや組織全体の生産性向上」「コミュニケーションの円滑化」といった恩恵が期待できるため、コーチングは現在多くの企業で導入されています。

コーチングの由来

英語において指導者、監督、家庭教師といった意味合いを持つ「coach」ですが、元来「乗り合い馬車」を指します。乗る人が望む目的地に送り届ける、という意味が転じて目標達成をサポートする存在として認識されるようになりました。

今では「コーチング」はマネジメントにおけるコミュニケーションスキルとして世間一般に広く使われている言葉です。

ビジネスに活用するコーチング

年功序列、終身雇用といった言葉に代表される旧来の日本企業において、部下に対して「指示」ないし「命令」することがマネジメントの基本とされてきました。

しかしながら組織が急激な時代の変化に対応していくためには、コーチングによって部下が自ら考え、能力や自発性を引き出すよう働きかけることが重要になっています。

ただしコーチングはコーチ側のスキルも求められる上、対話の中で考え方や行動の変容をサポートするプロセスを繰り返す必要があります。したがって実際に効果が表れるまでに一定の時間を要することは認識しておきましょう。

コーチングとティーチングの違い

まずコーチングを理解するにあたり、ティーチングとの違いを明確にしておきましょう。

端的に言えばティーチングは相手に対して答えを「与える」こと、コーチングは相手から答えを「引き出す」ことです。

ティーチングが教える側から教えられる側への「一方的」なコミュニケーションであるのに対し、コーチングは「双方向」のコミュニケーションの中で培われる点が大きく異なります。

したがって緊急性が重要な場面ではティーチング、成長を重視する場面ではコーチング、といった使い分けをすると良いでしょう。

コーチング方法

それではコーチングを実践し、目標達成に繋げていくための流れをご説明します。ここでは大まかに6段階の重要なポイントを紹介していきます。コーチングを行う機会がある方は、ぜひ参考にしてみてください。

方法1:目標の明確化

ドラッカーも提唱している通り、目標を設定、管理することによって人は主体性を発揮し、大きな成果を目指せるようになります。

その際「優秀なエンジニアになりたい」といった漠然とした目標ではなく、いつまでに、どのような状態になりたいのかを明確化するよう心掛けてください。数値など客観的なものさしで成果を計れることが理想的です。

方法2:現状の確認を行う

「今どういった状況にあるか」に耳を傾けることで、クライアントの思考や感情を整理します。圧迫感を与えることなく、一緒に冷静に考えてみようというスタンスが大切です。正直で正確な現状把握なくしてコーチングが成功することはありません。

その過程の中で「大切にされている」と感じてもらうことができれば、より良好な信頼関係を築けるでしょう。

方法3:現状とギャップの明確化

「現状と目標の間にはどの程度のギャップがあるのか」「なぜそのギャップが生じているのか」などをクライアントからヒヤリングします。

その中から出てきた課題の解決を目的として共有します。弊害になっている人物や環境についても聞き出しておくのもよいでしょう。このギャップこそが目標達成のために必要な課題です。

目標達成までのプロセスにおいてクライアントがどのような状況にあるのかを正確に把握することで、今後のコーチングが進めやすくなります。

方法4:リソースを明確にする

今持っているリソースと、不足しているリソースについて具体的に聞き出します。ここで言うリソースとはスキル、時間、環境、お金、知識など、目標達成に必要な全ての要素を指します。

これらを明確にすることは目標達成において非常に大きな原動力となる上、コーチ側が何をサポートすべきなのか認識することにも役立ちます。

もちろんこれらすべて与えることは現実的ではありません。限られたリソースの中でどう目標達成にアプローチできるかを一緒に考えましょう。

方法5:行動計画

何から着手して、どのような手順で、いつまでに何の目標を達成するのか、段階を踏んだ現実的な行動計画に落とし込みましょう。半年から一年程度に収めるのが一般的です。

その際、クライアントの懸念事項や協力して欲しい人、進捗確認スケジュール等について触れておくことで行動計画の精度を高められます。

方法6:振り返りとフォロー

前項までの内容を明確にできたら、念を押して内容を確認します。クライアントが目標達成に向けて自発的に行動することを促すのです。

同時にコーチングを通じて気付いた点やサポートすべきことがあれば忘れずに整理しておきましょう。クライアントだけではなく、コーチと共有する目標であるという意識を持ってください。