「セレンディピティ」という言葉を、ビジネス書やスピリチュアルの世界で見たり聞いたりしたことがあるでしょう。2001年にはジョン・キューザック主演の映画のタイトルとなったり、2017年にはBTSのアルバム「LOVE YOURSELF 承 'Her'」に「Intro:Serendipity」という曲が収録されたりと、エンターテインメント界でも注目される言葉でもあります。

“幸運を引き寄せる才能”として、紹介されることがあるセレンディピティですが、単なる偶然だけで得られる幸運とは少々異なります。

今回は、語源となったスリランカの寓話を紹介しつつ、セレンディピティの基本的な意味を解説します。

セレンディピティの発揮に大切な要素、作用メカニズムについてもまとめました。体験例やセレンディピティを磨くための方法についても触れていますので、興味のある方はぜひご覧ください。

セレンディピティとは

まずは、セレンディピティの基本的な意味と、語源となった寓話の紹介をします。

セレンディピティ=思いがけない物事を発見する才能

セレンディピティとは、「思いがけないものごとを発見する才能」のことを表す言葉です。単純に幸運を呼び寄せるのではなく、知識と観察、そして偶然によってある日思いがけない発見へと発展する、という経緯すべてがセレンディピティを形成します。

語源は寓話の『セレンディップ国の3人の王子』

セレンディピティの語源は、スリランカの寓話『セレンディップ国の3人の王子』に登場する、「セレンディップ」(スリランカ旧名)です。

この寓話を読んだイギリスの小説家ホレース・ウォルポールが、セレンディピティという言葉と概念を生み出しました。

この寓話について、あらすじを紹介します。

セレンディップという国の王であるジャファールは、3人の王子に、優秀な教師を与えて座学による勉強の期間を与え、知識をしっかりと身につけさせます。そして、王子たちが座学による知識を身につけたことを確認すると、彼らを王宮から追放して旅立ちを命じました。

その後、王子たちは、教育で得た知識を実際の社会体験で駆使し、3人で力を合わせることで、思いがけない発見を得るという活躍をします。

ジャファール王は、座学で得た知識を実社会で体験してはじめて「有益な知識」となることを知っていて、王子たちに実体験の機会を与えたのです。

この寓話のポイントは以下の3点です。

  • 座学による知識は必要
  • 座学で得た知識を実社会で使うことで活きた知識となる
  • 複数の知識人が特定の課題に対応する大切さ

セレンディピティの概念にもこれらの意味が盛り込まれています。

セレンディピティとの類語「シンクロニシティ」との違い

シンクロニシティは「共時性」とも言い、心理学者のカール・グスタフ・ユングが提唱した概念で「意味のある偶然の一致」を指します。

何の関連もないAとBという2つの現象が、意味のある関連性を持って同時に起こる、という現象がシンクロニシティの持つ特徴です。

例えば、何度かある人の夢を見ていると、偶然夢に見た人とばったり出会った、というケースで考えます。この事例を分解すると以下のようになります。

  • 体験A : 何度かある人の夢を見た
  • 体験B : 夢に見た人とばったり出会った
  • 体験AとBにはまったく因果関係がない
  • 体験AとBは「ある人」が関わる点で意味のある関連性を持つ

シンクロニシティは、これらの条件がそろった現象のことです。

セレンディピティとシンクロニシティは、人間が意識的に起こせるものではなく、無意識の力が作用するという点では似ています。

しかし、シンクロニシティは、「意味のある偶然の一致」という現象を表す言葉であり、セレンディピティの持つ「才能」の意味は含みません。

セレンディピティの発揮に大切な要素

セレンディピティの発揮に大切な要素は「知識」「観察力」「偶然」の3要素です。これらの要素が、セレンディピティの発揮にどのようにかかわっているのかについてくわしく解説します。

気づきを得るのに十分な「知識」

セレンディピティのベースとなる要素は、気づきを得るのに十分な知識です。知識量は、気づきの量に比例します。

一見関係ないことも丁寧に観察する「観察力」

知識と対になる重要な要素は、一見関係ないことも含めてじっくり丁寧に観察する「観察力」です。ある課題に対して継続的に取り組むことで、幸運な発見ができる「下地」ができます。

科学の分野で見られるセレンディピティの例では、特に観察力の重要性がわかるエピソードが豊富です。新たな発見に至る裏側を調べてみると、基礎となる知識と膨大な実験や試行錯誤が繰り返されている例がよく見られます。

知識が作りだす固定観念を緩める「偶然」

セレンディピティを構成する最後の要素は、偶然です。他人と会話をして別の視点を知って新たな気づきを得る、という経験は、多くの人が経験することではないでしょうか。

他人との会話だけでなく、偶然の事故や実験の失敗など、一見するとマイナスに見える現象が発生するときも、実は新たな発見を引き起こす原動力となる場合があります。

知識はとても重要な要素ですが、どうしても物事を固定観念で見てしまうという側面もあわせ持っています。その知識の固定観念を「緩め」、少し別の角度から物事を観察することが、セレンディピティの発現につながるのです。

セレンディピティの作用メカニズム

セレンディピティの作用メカニズムは、主に3パターンに分類されます。各パターンについて、順番に見ていきましょう。

既得知識に関する偶発的事象を観察

これまで学んできた知識の見直しを迫られる偶発的事象(定言的偶然)が起こり、その事象を観察することによって得られるパターンです。これまでの知識では説明できない事象を改めて観察することで、新しい発見が得られます。

疑問・課題に関する偶発的事象を観察

抱いている疑問や課題とは独立した、異なる偶発的事象を観察することによって得られるパターンです。

これまで考えていてアイデアが浮かばなかった所に、たまたま見た夢の内容から新しいアイデアを閃き、新しい発見につなげた――といったケースが、このパターンに当てはまります。

意外な失敗の体験

意外な失敗の体験から新しい発見を得るパターンです。失敗した結果を捨てるのではなく、生じた結果として受け入れた「離椄的偶然」の作用により、新しい発見を得られます。

「ポスト・イット」の製品化はその一例です。絶対に剥がれない接着剤の開発過程で、まったく逆の「剥がれやすい接着剤」という失敗作ができてしまいました。しかし、いつもぽろぽろ落ちる本のしおりにヒントを得て、粘着力はあるけれど剥がしやすいポスト・イットが誕生したのです。

セレンディピティの才能を意識的に磨く方法

セレンディピティは、起こそうとして起こせるものではありません。ただし、セレンディピティを構成する3つの要素を磨くことで、才能を引き出しやすくなります。

まずは、ベースとなる知識を磨きましょう。知識の引き出しは多ければ多いほど、気づきを得る可能性が広がります。

次に、一見関係ないことでも粘り強く観察する習慣を身につけましょう。座学で得た知識を、観察する際フルに活かすことが重要です。

最後の偶然性は、自分で意識的に作りだします。新しい人と会話をしてみる、別分野の情報を仕入れる、気分転換に旅行をするなど「いつもの習慣」を意図的に変えることがポイントです。