平均寿命が長くなるにつれて、定年後の人生も長くなります。仕事に追われることなく悠々自適の生活を送る老後を夢見る人もいることでしょう。しかし、老後の生活を安心して送るためには、ある程度の資金が必要です。老後の生活を支えてくれる資金は、現役時代に貯めておく必要がありますが、いくらあれば安定した老後を過ごすことができるのでしょうか。

老後資金の考え方や、具体的にいくら用意しておけばいいのかご紹介します。

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    老後に必要な資金はどれくらい?

平均余命から老後に必要な資金を算出しよう

老後に必要な資金を考えるには、まず老後が何年あるのかを知る必要があります。「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書『高齢社会における資産形成・管理』」によると、高齢で無職の夫婦の場合、毎月の赤字額は約5万円ですから、年間だと60万円の赤字です。これに老後の年数を掛けることで、おおまかですがどのくらいの老後資金が必要なのかを算出できます。

2019年における男性の平均寿命は81.41歳、女性は87.45歳ですが、これは若くして亡くなった人を含む統計です(厚生労働省「令和元年簡易生命表の概況」)。老後が何年あるかを考えるうえでは、その人があと何年生きるかの平均年数を指す、「平均余命」を参考にするといいでしょう。

65歳の人の平均余命は、男性19.83年、女性24.63年です。平均的な年齢まで生きた場合、男性なら約20年、女性なら約25年の老後生活が続くということになります。

とはいえ、平均余命は毎年長くなっていますから、今現役の人が65歳、70歳、80歳になっていくうちに、さらに延びる可能性もあるでしょう。また、上記はあくまでも平均ですから、実際には100歳まで生きるケースも十分ありえます。

100歳まで生きると仮定した場合、老後35年間の生活費の赤字は、「60万円×(100歳-65歳)=2,100万円」になります。しかし、これはあくまでも平均値で、それぞれの人の生活に即して算出されたものではありません。

生活費や年金額、退職時の貯金額は、個人差が非常に大きいものです。自分の場合はどうかについて考え、資金計画を立てましょう。

定年前と定年後の生活の違いとは?

定年後の生活費がいくらかかるのかを考える際、多くの人は、今(定年前)の生活費をベースに資金計画を立てるでしょう。しかし、定年前の生活費と定年後の生活費には、いくつもの違いがあります。生活の変化を考慮したうえで、どの程度の生活費が必要なのかを考えましょう。

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    定年前と定年後の生活の違いとは?

支出が減少する要素

定年前よりも定年後の支出が減少する要素として、働かなくなる点が挙げられます。会社員の場合だと、スーツ代や靴代のほか、社内の飲み会費用やランチ代、仕事関係のセミナー参加費など、仕事をやらないことで必要がなくなる支出は多岐にわたります。

また、具体的に定年に関連するわけではありませんが、65歳を過ぎると子どもは学生から社会人へと独立している場合が多いでしょうから、教育費がかからなくなるケースも多いと予想できます。人によっては、住宅ローンを完済して、住居費が大幅に削減されている可能性もあります。

支出が増加する要素

定年後は、仕事に関する費用などは不要になりますが、新たに生活で必要になる支出もあります。

定年後、年齢を重ねるにつれて、医療費はかさんでいく可能性は高くなるでしょう。大病をして、入院や手術で多額のお金が必要になるかもしれませんし、その後、思うように回復できずに、介護が必要になるかもしれません。夫婦2人での生活の場合、介護しきれずに施設に入居することになれば、その費用も必要です。

老後の生活費は、現役時代よりも下がることがありますが、医療費や介護費など、まとまった支出が必要になる可能性がある点には注意が必要です。

老後に必要なお金はどうやって計算する?

老後に必要なお金は、収入から支出を引き、余命を掛けることで求めることができます。具体的にイメージできるよう、老後に準備しておく金額をシミュレーションしてみましょう。

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    老後に必要なお金の計算方法とは?

平均値による計算シミュレーション

年金額と毎月の生活費の平均値から、100歳まで生きた場合に必要な老後資金を計算してみましょう。

<夫婦2人世帯の場合(夫が会社員、妻が専業主婦で年金収入以外の収入はなし)>

・年金額…22万1,504円※1

・支出額…27万5,630円※2

(27万5,630円-22万1,504円)×12カ月×(100歳-65歳)=2,273万2,920円

このケースでは、2,000万円以上の費用が必要という結果になりました。夫婦それぞれの葬儀代も用意しておくと考えると、必要なお金はさらに膨らむでしょう。

<単身世帯の場合>

・年金額…15万3,049円(老齢年金と基礎年金を受け取っている人の平均)※3

・支出額…14万6,036円(所得税・住民税・健康保険料等を含まない)※4

これだけを見ると、年金額が支出額を上回っているため、一見問題がないようにも見えます。しかし、上記には税金等が含まれていません。

例えば、この人が千代田区に住んでいる国民健康保険加入者だった場合、年額6万7,000円程度の国民健康保険料がかかります。そのほかの支出を鑑みて、毎年10万円不足するとした場合、10万円×(100歳-65歳)=350万円が必要です。

自分の場合の計算方法

平均値は、あくまでも平均値でしかありません。例えば、国民年金にしか加入していない人は、平均で月に6万5,008円の年金しか受け取れません。また、厚生年金に加入していても、現役時代の給与額や加入年数によって、もらえる年金額は大きく異なります。

自分の場合はどうなのかを考えるときは、ねんきん定期便やねんきんネットの見込み額試算などを参考にしましょう。いくら受け取れるのかの見込み額と、現在の支出をもとにした将来の生活費の目安から、老後の生活に必要な金額を算出してみてください。

その結果に、必要だと思われる介護費用や医療費を足すことで、老後までに用意しておきたい金額がわかります。