加藤桃子女流三段の挑戦を退け、タイトル獲得40期達成

第31期女流王位戦五番勝負第3局(主催:新聞三社連合)が6月17日に関西将棋会館で行われました。ここまで2連勝の里見香奈女流王位がストレートで防衛を果たすのか、それとも挑戦者の加藤桃子女流三段が踏みとどまるのか、注目の一局は143手で里見女流王位が勝利。このシリーズを制して、通算40期目のタイトル獲得となりました。

戦型は今シリーズ3度目の里見女流王位の中飛車対加藤女流三段の居飛車穴熊となりました。後手の加藤女流三段はがっちりと金銀4枚の穴熊に組み上げました。一方の先手の里見女流王位は高美濃囲いから穴熊の弱点の端攻めを決行します。

この端攻めは時期尚早だったようで、加藤女流三段の正確な対応により、後手が指しやすそうな局面となりました。ゆっくりしていると攻めの反動で、先手が苦境に陥りそうなところで、里見女流王位は角を見捨てて端攻めを継続する勝負手を放ちました。角を取らせる1手を利用して、穴熊を薄くしようという意味です。

加藤女流三段も端に歩を垂らして銀を打ち込み、反撃します。里見女流王位の玉を露出させてから、自陣の補強をしましたが、これがどうだったか。加藤女流三段の攻めが緩んだタイミングで、美濃囲いを崩しながらも玉頭を補強する好手を里見女流王位が指し、形勢が逆転したようです。加藤女流三段としては緩まずに攻め続けていれば優位を維持できていました。

形勢を損ねてしまったものの、そこからの加藤女流三段の追い込みは強烈でした。角を捨てて相手の守りを薄くし、玉頭から逆襲。1筋に両者の玉を含む駒が密集する複雑な局面になりました。

しかし、そのような難しい局面で間違えないのが第一人者の里見女流王位です。相手の攻め駒を呼び込んでしまうリスクのある切り合いにも、恐れずに踏み込んでいきます。玉と玉とが向かい合うギリギリの寄せ合いをしっかりと抜け出し、最後は加藤玉を即詰みに打ち取りました。

3連勝という圧倒的な力を見せつけて防衛を果たした里見女流王位は、通算40期目のタイトル獲得となりました。奨励会員の西山朋佳女流三冠以外にタイトル戦で最後に敗れたのは、2018年の第29期女流王位戦までさかのぼります。その女流王位も翌30期にはリターンマッチを制して奪取を果たしました。

女流7タイトルのうち四冠を保持して、女流棋界の絶対的存在として君臨する里見女流王位。もはや西山朋佳女流三冠以外敵なしというような状況です。この勢力図を打破する女流棋士は現れるのでしょうか。里見女流王位の次なる大勝負は、7月4日開幕の、上田初美女流四段を迎え撃つ第2期ヒューリック杯清麗戦の防衛戦となります。

強すぎる女流棋界の第一人者、里見香奈女流王位
強すぎる女流棋界の第一人者、里見香奈女流王位