折田翔吾新四段のプロ入りの経緯を振り返ります。

今年度からプロ入りを果たした折田翔吾四段は年齢規定により奨励会を退会しています。その後、折田四段はプロ棋戦でアマチュアとして活躍しプロ編入試験の資格を獲得しました。これは史上3人目で、ほとんど前例がありません。試験自体も難関であり、強者揃いの三段リーグを勝ち抜いた新進気鋭の棋士5人から3勝をもぎ取る必要があります。折田四段はそんな逆境を跳ね返し、3勝1敗でプロ入りを決めました。異例の経緯でプロ入りを果たした折田四段のプロ入りまでの道のりを振り返ってみましょう。

奨励会退会とYouTubeチャンネル開設、棋戦での活躍
折田四段は奨励会を退会となったのちに「アゲアゲ」さんの名でYouTubeで将棋動画の配信を始めます。現在ではチャンネル登録者数が4.2万人もおり、人気YouTuberとなっていますがもちろん初めからそんなにいたわけではありません。配信をはじめたときはもちろん0人からのスタート。高い棋力と持ち前のユーモアでファンをじわじわと増やしてきたようです。動画の投稿数は1900本を超えており、地道な努力の継続でこれほどのファンを獲得したのでしょう。
また折田四段は奨励会退会後も、将棋ソフトなどを使って研究を続けていました。アマチュア棋戦でもその成果を見せつけ、プロ棋戦である朝日杯将棋オープン戦、銀河戦に出場できることとなりました。朝日杯は初戦敗退となりましたが、銀河戦では連勝を重ねて10勝2敗としました。この時点でプロ編入試験参加要件「現在のプロ公式戦において、最も良いところから見て10勝以上、なおかつ6割5分以上の成績を収めたアマチュア・女流棋士の希望者」を満たしました。


編入試験に臨む
折田四段はプロ棋戦で活躍し、編入試験の資格を得ました。しかし編入試験は54万円と高額の受験料が必要です。簡単に用意できるものではありません。資金捻出のため折田四段はクラウドファンディングを決意します。結果、520万円もの金額が集まりました。YouTubeチャンネルのファンやオンライン将棋教室の生徒など、たくさんの人からプロ入りへの挑戦を応援されていたことがわかります。

編入試験合格
編入試験の対戦相手は棋士番号が最も新しい5人であり、つまりそれは三段リーグを抜けてすぐの強者であることを意味します。特に4局目の本田奎五段はプロデビューから2年足らずでタイトル戦に登場しており、新四段の枠からは逸脱しています。3局目まで2勝1敗、あと1勝でプロ入りとした折田四段ですが、4局目の本田戦は分が悪いと見る人もいました。実際に、4局目は形勢が何度か入れ替わる難しい将棋でした。しかし、最後は詰めろ逃れの詰めろから本田玉を受けなしまで追い込んで勝利しました。


こうしてプロ入りを決めた折田四段は記者会見では「これからも動画の活動をやりながら、棋士としても役立てていけたら」と語りました。有言実行で6月1日現在も動画投稿を続けていることが確認できます。
今後については「アゲアゲ物語の第1章は終わり。第2章、3章とストーリー性のあるような棋士になれたら」と抱負を述べました。多くのファンに支えられ、プロ棋士になった折田四段の「アゲアゲ物語」第2章は6月3日のヒューリック杯棋聖戦一次予選、大橋貴洸六段との対局から始まります。2日後に始まる「アゲアゲ物語」新章に注目です。

 

プロ編入試験第4局、朝の折田翔吾四段
プロ編入試験第4局、朝の折田翔吾四段