将棋では、これまで数々の斬新な新戦法が生まれてきました。棋士を一番驚かせた新戦法を棋士アンケートの結果から見てみましょう。

将棋の世界は日進月歩、新しい戦法が生まれたり、昔は良くないとされた形が今では評価されているということは珍しいことではありません。近年では将棋ソフトの影響もあり、加速度的に将棋は進化しています。そんな新戦法の中には将棋を最前線で指している棋士をも驚かせるものもあるわけです。では棋士たちが一番驚いた新戦法とは一体何なのでしょうか。『将棋年鑑2018 棋士名鑑アンケート』の「登場したときに最もびっくりした戦法はなんですか?」の回答を一部ご紹介します。(以下カッコ内敬称・肩書略)

 

棋士たちをもっとも驚愕させた戦法はやはり「藤井システム」

藤井システム(羽生善治)
藤井システム(塚田泰明)
藤井システム(中村太地)
藤井システム(谷川浩司)

ほか多数

藤井猛九段が開発した、緻密な序盤研究によって居玉で居飛車穴熊を破る破天荒な戦法です。登場当時は居飛車穴熊の優秀さによって振り飛車にとって向かい風が吹いていましたが、藤井システムの登場によって安易に穴熊へ組みづらくなりました。この戦法を原動力に藤井九段は竜王位を獲得しています。

 

相居飛車で後手でもやれる「横歩取り△8五飛」

横歩取り8五飛車戦法(森内俊之)
横歩取り8五飛車戦法(井上慶太)
中座飛車戦法(三浦弘行)
中座飛車(中田宏樹)

ほか

中座真七段が初めて採用した戦法なので中座飛車と呼ばれることもあります。後手番ながら主導権を握って指せる画期的な戦法です。その後、後手番一手損角換わりや、ゴキゲン中飛車の研究など、後手番戦法は幅を広げていきました。

 

2手目からそんな手があるのか「2手目3二飛戦法」

3二飛戦法(久保利明)
2手目△3二飛戦法(長岡裕也)
2手目3二飛戦法(豊島将之)
2手目3二飛戦法(佐藤康光)

ほか

今泉健司四段が奨励会時代に開発した戦法。後手番から石田流を目指す指し方です。序盤から角交換の乱戦となっても、後手もやれるということがわかり、指されるようになりました。2手目から飛車に手をかける見た目は凄まじいインパクト!

 

阪田流向かい飛車かと思いきや「△ 3三金型三間飛車」

最近だと、菅井先生の阪田流三間飛車(佐藤天彦)
菅井流△3三金型三間飛車(脇謙二)
菅井王位が考案した阪田流三間飛車(上野裕和)
菅井先生の阪田流三間飛車(斎藤明日斗)

ほか

阪田流向かい飛車の出だしから三間に飛車を振る指し方です。飛車先の金が重くて一見指しづらい形です。菅井竜也八段はこの戦法を王位戦七番勝負第5局という大舞台で初披露。この将棋を制して、菅井王位誕生となりました。

 

少数意見も一部紹介します。

ダイレクト向かい飛車(阿久津主税)
角打ちを恐れず途中下車しない堂々とした戦法です。角を打たれても悪くなることはないらしい。

ゴキゲン中飛車が大流行した時は大変驚きました(近藤正和)
なんと流行の立役者が一番びっくりしていました!

中飛車左穴熊で飛車が2手損で戻る形(高田尚平)
2手損してもいいという発想はなかなかできませんよね。
 

以上、「登場したときに最もびっくりした戦法はなんですか?」の回答をご紹介しました。振り飛車の回答が多いのが面白いですね。皆さんも気になった戦法を試してみてはいかがでしょうか。

藤井システム考案者の藤井猛九段
「藤井システム考案者の藤井猛九段