棋士のサインとも言える揮毫には棋士の思い、信念を感じることができます。アンケート「揮毫は何と書きますか? 」から棋士の思いを感じてみましょう。

揮毫とは平たく言えば、毛筆で言葉を書くこと。将棋の棋士にとってはサインのようなもので、色紙や扇子に書いたりすることが多いです。揮毫は棋士の信念や、座右の銘などが書かれるもので、書く言葉は棋士によって様々です。揮毫する言葉は棋士一人につき一つとは限りませんが、棋士によって好んで書く言葉があります。本記事では『将棋年鑑2019 棋士名鑑アンケート』の「揮毫は何と書きますか? また、揮毫に込めている思いは?」の回答から棋士の思い、信念を感じてみましょう。

 

今年から書き始めたのは 清流無間断(谷川浩司九段)

谷川九段といえば十七世名人資格を保持する棋士です。「光速」や「飛翔」などと揮毫することもあります。清流無限断は「清流に間断なし」、つまり絶え間なく続くものは淀みなく清らかだということです。決して格闘ゲームの必殺技ではありません……。清流無間断には谷川を流れる清流という意味合いがあるのかもしれませんね。

 

天衣無縫(佐藤康光九段)

佐藤九段は永世棋聖資格を保持し、将棋連盟会長としても活躍している棋士です。「名前を見なくても誰が指したかわかる」と呼ばれるような独創的な将棋を指すことで知られています。「天衣無縫」は天人の衣は縫い目がないことから、自然で巧みに完成されているという意味があり、また純真で無邪気なさまを表すこともあります。佐藤九段のオリジナリティあふれる将棋はまさに天衣無縫と言えましょう。

 

英断 師匠(花村)が書いていた言葉でした(深浦康市九段)

深浦九段は花村門下ではじめて師匠の果たせなかったタイトル獲得(王位)を達成しました。師匠(故・花村元司九段)は終盤の切れ味を武器としており、「断」を好んで揮毫したようです。また花村九段は弟子を手厚く指導していました。深浦九段は、師匠への尊敬の念という意味で「英断」を好んで揮毫するのではないでしょうか。

 

鋭気 思い切りのいい将棋を指して観ている方に喜んでもらいたい(三枚堂達也七段)

三枚堂七段は26歳のフレッシュな棋士です。鋭く踏み込んでいく将棋を指す棋士で、揮毫の鋭気はまさに自らの将棋観を表す言葉でしょう。飛躍(斎藤明日斗四段)や勇猛果敢(青嶋未来五段)など、三枚堂七段に限らず若手棋士は上昇志向の揮毫が多くみられます。

 

以上、4名の棋士の揮毫をご紹介しました。揮毫する言葉はその棋士の人生観や将棋観を表す言葉なので、好きな棋士の揮毫する言葉を知らない人は調べてみてはいかがでしょうか。

「清流無間断」を好んで揮毫する谷川浩司九段
「清流無間断」を好んで揮毫する谷川浩司九段