フルシーズン戦った3年で2度の後手番過多。2018年度はなんと振り駒勝率3割以下!

新型コロナウイルスに対する予防措置のため、しばらく対局がない藤井聡太七段。藤井将棋ロスになりつつある方も多いのではないでしょうか。筆者もその一人です。しかし嘆いていても仕方ないので、この機会に藤井将棋をデータから見てみようと思います。

今回はいきなりですが将棋の内容ではなく、対局前の振り駒を取り上げます。記録係が対局開始を告げて相手が初手を指したあと、お茶を一口飲んでから△8四歩と指す藤井七段の姿をライブ中継で見かけることって多くないでしょうか? 気になったので調べてみました。なお、本記事では振り駒で先手番となることを勝ち、後手番となることを負けとしています。

対象となる将棋は、藤井七段のデビュー戦から2019年度最後の対局、第91期棋聖戦決勝トーナメントの菅井竜也八段戦までの振り駒を行った将棋。あらかじめ先後が決まっている、順位戦、王将リーグ、王位リーグ、新人王戦三番勝負第2局、千日手指し直し局は除いています。また、未放映のテレビ対局2局分は含めていません。

藤井七段のデビュー戦は2016年12月24日の対加藤一二三九段戦。この対局で藤井七段は振り駒で後手番になっています。年度途中からのデビューだったので、2016年度は対局が少なく、10局。そのうち先手だったのが6局なので、振り駒は勝ち越し。上々の振り駒成績でデビュー年度を終えました。

暗雲が立ち込め始めたのが、2017年度。年度開幕戦で後手番になると、1局先手番をはさんで怒涛の8連続後手。なお、この期間は29連勝記録の最中のため、藤井七段がすべて勝利しています。

その後は振り駒の偏りも少なかったものの、年度初めの負債が響き、2017年度は振り駒で28勝37敗。勝率4割3分1厘で負け越しとなりました。理論上(駒の性質による偏りはさておき)5割になるはずの振り駒勝率でこの成績はなかなかに不運でしょう。しかし、不運はこの程度では済まなかったのです。

2018年度は先後半々の立ち上がりを見せたものの、6月5日に行われた、竜王戦ランキング戦5組決勝、対石田直裕五段戦から、7月28日の新人王戦、対八代弥六段戦まで再び振り駒8連敗で後手番続きとなってしまいました。ちなみに石田五段戦は升田幸三賞を受賞した、「△7七同飛成」の歴史的絶妙手が飛び出した一局として有名です。

その後も振り駒6連敗などがあり、結局2018年度は12勝30敗。勝率は驚異の2割8分6厘と、散々な成績でした。

2019年度は持ち直した藤井七段。振り駒成績は24勝22敗でついに勝ち越しに成功しました。また、昨年度は順位戦以外に王将リーグ、王位リーグとあらかじめ先後の決まっている対局が多く、偏りがかなり解消されました。

デビューから2019年度終了までのトータル振り駒成績は、70勝93敗で勝率4割2分9厘。相当負け越してしまっており、5割復帰はいつになるのでしょうか。もしかしたら最後まで……と思ってしまうような、目をつむりたくなる成績です。

ここまで藤井七段の振り駒成績を見てきました。先後の差が大きいと言われる現代将棋において、これだけ後手番が多いと厳しいようにも思いますが、藤井七段の後手番勝率は8割0分4厘。8割超えで途方もない成績です。しかし、先手番勝率はそれをはるかに上回る8割8分5厘。やはり先手番を引いた方が藤井七段も勝率が上がります。(未放映のテレビ対局は除く)

まだ高校生ながら3年連続で勝率8割超えを達成するなど、圧倒的な成績を残し続けている藤井七段。唯一の弱点(?)の振り駒で、もし2019年度と同様に、2020年度も真っ当な成績になるならば、どんな活躍を見せてくれるのでしょうか。

不運もものともしない成績を残す藤井七段
不運もものともしない成績を残す藤井七段