カスハラにあったときにしてはいけない言動

以下のようなことは、取り掛かる前に注意や検討が必要だ。

1.お客様をすぐに法的手段で訴えようと試みる

「法的手段で訴えることは、ときに必要な場合もあるかもしれませんが、すぐに訴える癖をつけると、それそのもので悪評が広がり、後々大変なことになるためNGです。一般のお客様から不評を得ることにつながるので、注意が必要です」

2.お客様を脅すような履歴の取り方で、お客様を抑制する

「お客様は監視監督されることを、お望みにはならないためNGです。お客様が嫌がることは、できるだけ慎みましょう。信頼されていないことに不快感を覚え、常識的・良心的なお客様も離れていってしまうかもしれません。ビジネスにリスクが出てくるためNGです」

3.お客様と同じような暴言暴動を起こす(逆切れ、怒鳴る、脅す等)

「暴言や暴力は、社会的に常識的にNGです。意外にしてしまうのが、この同調による暴言暴動です。負けるものかと闘おうとして、強く言ってしまう場合があるので気をつけましょう。反対に法的に訴えられる可能性が出てきます」

4.お客様から逃げる、無視する

「ビジネスで逃げや無視は問答無用のNGです。もちろん、常識的に身の危険がある場合は別ですが、一般的には責任問題に関わるので注意しましょう。非常事態ともいえるような場合は、警備員や警察官、弁護士といった専門職の方の支援が必要になるかもしれません。対処法がわからないからといって、自分たちが逃げたり無視したり、そのまま放置したりするのは、ビジネスの取り組み方として間違っています。基本は決着がつくまで応対します」

5.お客様への応対が遅くなる

「ハラスメント応対は、初期の応対が肝心でスピードを必要とします。そのため、『遅くなる』はNGです。スピード感がない応対、お客様にとって『遅い』応対は、お客様を怒らせ、よりいっそう激しい逆襲に出たくなる心理にさせてしまう可能性が出てきます。

ハラスメントは加害者が悪いとされる事項であることに間違いはありません。しかし、ビジネスでの関係においては、お客様をハラスメント加害者にさせてしまった商品・サービス提供側にも、今後に向けて改善余地があると考える視点が必要です。早めの応対を心がけましょう。なお、『遅い』という感覚は、人や業界により千差万別なため、大切なのは心構えです。『できるだけ早く』『こまめに』といった親切心に基づいた誠意ある応対を、どの業界でも大切にすると良いでしょう」

カスハラにあったときの対処法

以下のような対応を心がけてみると良い。

1.一人で解決しようとせず、組織や仕事仲間と解決する

「ビジネスの問題は、組織や関係者で解決していくことが基本です。たとえ個人の性格や暮らしぶりを責められるようなカスタマーハラスメントであっても、会社やお店の方、関係者の方等に相談をして、協力を得て解決への道をつくります。なお、個人事業や個人商店の方も、関係者や協力者をつくり、複数の人たちで解決の道を開拓しましょう」

2.堂々と応対する

「お客様の前であなたはプロです。ビジネスのプロフェッショナルとして、堂々と応対する必要があります。もし経験が少なくて難しい、男性のお客様に暴力を振るわれる可能性があり女性として難しい等、どうしても困難である場合は、組織の皆さんや仕事関係者の方々と協力し合って、脅しを受けないような、受けても屈せずに進められるような体制づくりが事前に必要です」

3.お客様との関係性を、各立場から改善努力する

「最も大切なのは、お客様とのより良い関係が成り立つことです。ハラスメント事件となると、お客様にどのような制裁を与えるかに集中しがちですが、それは最終目的ではありません。ビジネスの最終的なねらいは、社会貢献であり、お客様とのより良い関係を継続化することです。お客様への満足を追求する必要があります。

それぞれの立場で、できることを模索し、実行していくことを軸に問題解決を図りましょう。お客様とのより良い関係構築、カスタマーサティスファクション(Customer Satisfaction=顧客満足)を追求することが、カスタマーハラスメント防止・軽減には、地道に継続的に必要です。

経営者の方、管理職の方は、組織全体への改善を図ることを試みることがミッションといえます。中堅~若手の方は、現場の状態やハラスメント内容の詳細、お客様のご様子、問題になっていること等を、上層部の方にご理解をいただけるように報告・相談しましょう。可能であれば、改善提案までできるとより望ましいです」

4.被害者の心身ケアを

「ハラスメントは被害者の心身に大きなダメージを与えるため、被害者のケアは必須です。企業の場合、産業医や心理カウンセラーを手配することが有効かもしれません。また、周囲が話をよく聞いてあげて、共感の意を示してあげることも必要です。そして、ダメージが重い場合は、部署替えや職種替えも必要となる可能性が出てきますので、管理職の方は注意をし続けましょう。

なお、自分自身が被害者になった場合は、どうか我慢せずに、周囲に相談したり、助けを求めたりするようにしましょう。どの立場の方も、普段から周囲とは『最近どうですか』と、近況伺いができる信頼関係を構築しておくことが大切です。いざというときは、助け合うことができるからです」

5.危機管理体制を構築しておく

「一度起きたことは、また起きる可能性があります。問題解決へとスムーズにアクションを起こせるように、一度起きたことをデータベースとして活かし、今後への対策を練っておきましょう。専門家とのネットワークを構築しておくことも大切です。小規模の企業や個人事業の方は、そのために、日ごろから人脈づくりに励んでおくと良いでしょう」

監修者プロフィール:中川裕美子

マナー講師・コンサルタント。OL時代に役員秘書を担当し、現在はおもてなしの教育を担当。有限会社SONORI代表取締役。