暖冬な上、少しずつ春の足音が聞こえるようになってきたものの、急に寒さが戻るなど、まだまだ体調管理には予断を許さない昨今。日々の手洗い、うがいの徹底を心掛けることと、何と言っても人間が本来持つ、バリア機能である"免疫力"を高めることが重要だ。

免疫のはたらきを強くするには、適度な休養や運動に加えて、バランスが取れた栄養の摂取が不可欠だが、日本の伝統的な"栄養ドリンク"ともいえる飲み物が「飲む点滴」ともいわれる甘酒だ。

  • 体調管理には免疫力を高めることが大事

甘酒は清涼飲料水

甘酒には、主に米麹、または酒粕を原料としたものに二分される。「酒」と名が付いてはいるものの、酒粕が入った市販の甘酒のアルコール含有は1%未満で、清涼飲料水に分類されると話すのは、森永製菓 マーケティング本部 食品マーケティング部 渡部耕平さんだ。

森永製菓は、1969年に日本で初めて甘酒を工業生産して全国発売し、以降、現在まで続く甘酒を製造・販売している。その特長は、米麹と酒粕の両方をブレンドしていることで、渡部さんはそのメリットを次のように解説する。

「蒸したお米に麹菌を繁殖させたものが米麹です。甘酒以外にも、日本酒やみりん、味噌なども米麹を発酵させて作られたものです。米麹は、麹菌の発酵により、ビタミンB群や葉酸、ブドウ糖やオリゴ糖が含まれています。やさしい甘みが特長です。

一方、日本酒を作る過程で作られる酒粕は、米麹に酵母、乳酸菌を加えて発酵させて生まれます。酒粕は、3つの発酵菌の力で、さまざまな成分が凝縮し、たんぱく質や食物繊維、ビタミン、ミネラルなどの他にも、発酵によりできたペプチドやアミノ酸、葉酸なども含まれており、深いコクが特長です。森永製菓の甘酒は双方の『いいとこ取り』をしているのが特長です」。

  • 森永製菓の甘酒は「いいとこ取り」が特長と話す渡部さん

現在、甘酒のマーケティングを担当している渡部さんだが、以前は研究部門で甘酒の製造・開発を担当していたそうだ。

「甘酒は発酵食品。微生物を相手にしているので、味わいや甘さなどお客様に満足していただける一定のパフォーマンスをコントロールするのがとても難しいです。

森永製菓は酒造メーカーでも米麹屋でもないので、原料は他から調達しなければならないのですが、それぞれ味わいが異なり、最終的にブレンドをして森永製菓の甘酒としての一定の味わいを作り出さないといけないところに苦労していました」と、研究者目線での「甘酒の奥の深さ」を明かしてくれた。

甘酒缶では米麹の粒感にもこだわる

「発酵食品には、酵母、細菌、麹菌の3つに由来するものがありますが、酒粕というのは3つの発酵物をすべて使用しなければ生成されず、同様のものには、味噌、醤油、穀物酢も挙げられます。しかし、醤油、穀物酢のような液体のものはろ過することで一部栄養成分が抜けてしまうデメリットがあるのですが、味噌と酒粕は凝縮されています。

ただし、お酒が含まれている酒粕は独特な風味があって苦手な人もいます。そこで、森永製菓では米麹由来の甘酒をブレンドすることで、全国の多くのお客様に親しまれるように、酒粕の香り高くコクのある味わいと米麹のやさしい甘さが引き立つよう仕上げています」と渡部さん。

現在、同社では、雲マークと梅の花柄でお馴染みのスタンダードな赤い缶入りの甘酒の他に、粉末タイプやチルド用、スパークリングタイプなど多数のラインナップを展開している。

「西日本では圧倒的に『しょうが入り』が人気。地域によって好みも異なるようですね。そして、甘酒缶では米麹の粒感にもこだわっています」と渡部さんは話す。

積極的に飲みたい甘酒だが、さすがに毎日だと飽きてしまうことがあるかもしれない。そこで渡部さんに、おススメの食生活への取り入れ方とアレンジレシピを教えてもらった。

甘酒を使った簡単メニュー

「粉末タイプのものだと、パンやヨーグルトにかけたり、お砂糖代わりに簡単に使ったりできます。我が家では、出し巻き卵やポテトサラダにちょっと入れてみたりもしています。

粉末だと成分も凝縮されていますし、そもそもアミノ酸は旨味成分でもありますので、調味料感覚で使うのもいいですね。あとはココアやトマトジュースも甘酒との相性もいいです」。

  • 粉末甘酒を使った「甘酒だし巻き卵」 提供:森永製菓

また、ゼラチンで固めたプリンや、フレンチトーストなど、牛乳代わりに甘酒を使うスイーツもおススメだそう。さらに、寒い時期だと、鍋や雑炊に入れることで栄養アップだけでなく、旨味も加わり、おいしさもアップできると言う。

  • 甘酒フレンチトースト 提供:森永製菓

米麹を使った甘酒は、家庭でも手作りすることが可能だが、渡部さんのお話のとおり、確かに一定の味わいで仕上げるのは難しい。また、衛生管理にも十分に気を遣う必要がある。

市販品は、保存もきいて手間なくいつでも同じ味を飲めるのがメリット。手軽に栄養補給ができる食品として、自宅に常備しておくのもよさそうだ。