2004年にアニメ『天上天下』棗亜夜役でデビューし、同年にアルバム「HEROINE」で歌手デビューも果たした声優・茅原実里。2020年2月5日には、デビュー15周年を記念したベストアルバム『SANCTUARY II ~Minori Chihara Best Album~』をリリースした。

  • 茅原実里(ちはらみのり)。11月18日生まれ。栃木県出身。ホリプロインターナショナル所属。主な出演は『涼宮ハルヒの憂鬱』長門有希役、『みなみけ』南千秋役、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』エリカ・ブラウン役ほか
    撮影:稲澤朝博

本アルバムは2枚組となっており、DISC1にはQ-MHz制作による新曲「We are stars!」に加え「会いたかった空」から「エイミー」までのシングルリード曲と本人セレクトの過去のシングルリード曲を収録。DISC2にはこれまで歌唱してきた様々なキャラクターソングをセレクトして収録しており、まさに、声優・歌手両面から15年の活動を振り返るアルバムとなっている。

今回は茅原にインタビューを実施。これまでの活動を振り返ってもらいつつ、新曲「We are stars!」の聴きどころ、そしてこれからの活動についてを聞いた。

●長門有希がたくさんのチャンスをくれた

――デビュー15周年を記念したアルバム「SANCTUARY II ~Minori Chihara Best Album~」の発売、おめでとうございます。まずは制作が決まったと聞いたときのお気持ちについて教えてください。

以前にベストアルバム『SANCTUARY ~Minori Chihara Best Album~』を出したのが2014年。10周年のタイミングでしたが、まさか15周年イヤーでも出せるとは思っていなかったので、ビックリしました。最初はちょっと他人事のような感じもしていて…。ただ、長く活動されている方々って、15、20、25年という周年でベストアルバムをリリースされていることが多くって。だから、私もそのタイミングで出すことができるくらい活動を続けてこられたんだと、徐々に実感が湧いてきて感動しました。

――今回は前回のベストアルバムと違い、ご自身の歌手活動で歌われてきた曲を収録したDISC1とキャラクターソングをまとめたDISC2の2枚組で構成されていますね。

DICS1は「SANCTUARY」をリリースした後からのシングルリード曲とアルバムリード曲、茅原実里の名刺代わりになるような5曲、そして15周年を振り返る新曲を収録した一枚、DISC2はこれまで歌ってきたキャラクターソングのなかからチョイスした一枚に仕上がっています。私もキャラクターソングをまとめた一枚を作ってみたいという想いがずっとあったので、プロデューサーから「やりませんか?」という提案を受けたときは嬉しかったですね。前回とは違い、今回は歌手と声優どちらの面からも私の活動を振り返る、楽しんでもらえるアニバーサリーのアルバムになりました。

――キャラクターソングについては、茅原さんから入れたい曲のリクエストを出された?

そうですね。私から案を出しました。

――これまで数あるキャラクターを演じ、キャラクターソングもたくさん歌われてきています。権利などの関係もあったかと思いますが、どういった基準で曲をチョイスされたのでしょうか。

ユニットで歌っている曲も含めるともう何十、何百のキャラクターソングを歌ってきましたので、まずソロで歌っている曲に絞りました。なかでも、キャラクターの個性がより際立つ曲、そしてこの15年の活動のなかで外せないキャラクターたちの曲をチョイスしています。あとは、一枚のアルバムになるということで、バリエーションのある楽曲を選んで音楽性のあるものにしたい気持ちもあったので、曲調のバランスも考えつつ決めていきました。正直、もっと入れたい曲がたくさんあって……! だから、キャラクターソングを集めたCDをまた出したいですね。

――茅原さんを応援されているみなさんも期待されていると思います!

そうだといいな。キャラクターソングってあんまり人前で歌う機会がなくって。私は過去にファンクラブイベントで「キャラソンライブ」をやりましたが、それでも、日の目を浴びる機会って少ないと感じています。だからこそ、この15周年のタイミングでアルバムとして出せるのは感慨深いですし、一人でも多くの人に届けられるならキャラクターたちもすごく喜ぶだろうなと思っています。

――そんな15年やってきたことが詰まった一枚。茅原さん自身はこの15年活動を続けてきて、変わったと思うところはありますか?

私、高校生の頃からずっと歌手になりたくて、10代の頃からしばらくはオーディションを受けては落ちるというのを繰り返していたんです。その当時は自分のためだけに歌っていたような気がするのですが、デビューしてからは歌を聞いてくださる方々に向けて歌うようになりました。さらに、15周年を迎えたいまは自分や聞いてくださる方といった特定の“誰か”というよりも、もっと広い世界に向けて、みんなの心の安らぎや幸せを願ったり祈ったりする感覚に変わってきていますね。日常の中で起こる様々な出来事の影響であったり、最近では海外での活動も増えたから余計にそう思うようになったところもあるのかもしれません。

――なるほど。そもそも歌手になりたいと思ったのはいつ頃でしたか?

きっかけは高校生の文化祭で行われたカラオケ大会。私、それまでは何にもできなかったんです。人に助けてもらってばっかりの人生。人前に出るのもすごく苦手で、誰にも何もしてあげることができなかった。でも、なぜか周りの人たちは私のことを助けてくれた。大好きな人たちに何もできないなってずっと思っていたんです。その中の一人が、高校時代にお世話になっていた体育の先生。その先生がカラオケ大会の担当だったんですけど、なかなか人が集まらなくて困っていて。だから、「先生が困っているなら私、出ます!」って一歩踏み出してみたんです。

そしたら、カラオケ大会で優勝できて! ステージを降りたあと、違うクラスの喋ったことがない子が私のところにきて「茅原さんの歌声にすごく感動しました」って、笑顔で言ってくれたんです。そこで、「あっ、歌でこんなに喜んでくれる人がいるんだ」と思ったんですよね。衝撃的でしたし、嬉しくて仕方ありませんでした。私が歌ったら笑ってくれる人がいるかもしれない……すごく単純ですけども、そこから歌手になりたいと思うようになりました。

――先ほどデビュー前は「自分のためだけに歌っていた」とおっしゃられていましたが、ルーツの部分では「人に喜んでもらいたい」という気持ちがあったんですね。

そうですね。根底の部分ではありました。

――15周年を迎えた今は、茅原さんの歌を聞いて笑顔になる方々がたくさんいらっしゃいます。

皆さんが喜んでくださっている顔を見ると嬉しくなるし、安心します。自分の歌やお芝居などで、作品を通してその先にいるファンの方々だったりスタッフさんだったりクライアントさんだったりが喜んでくれるのが一番のやりがいですね。誰かが喜んでくれないとこの仕事をやっている意味がない、私はそう思っています。

――歌手になりたいという思いがあった茅原さん。その後、夢は叶うこととなりますが、2004年には先に声優としてデビューを果たすこととなります。

歌の勉強がしたくて養成所に入ったのですが、なかなか歌手デビューには繋がらなくて、気が付けば卒業間近。そんなタイミングでたまたま学校に声優タレントコースというのが創設されることになったんです。スタッフの方にも勧められ、背中を押されて「声優の勉強に挑戦してみようかな」と、ここでも一歩踏み出してみました。そして、2004年に『天上天下』のオーディションを受けて、声優デビュー。それだけでも夢のような話なのですが、当時、声優さんのなかにラジオのパーソナリティや歌手など、幅広い活動をされる方がいらっしゃったので、私も声優としてお芝居しつつ、アニメの主題歌なども歌えるようになったら最高だなって、大きな目標を持つようになりました。

――その“最高”も叶うこととなりました。

デビューできたのはすごくミラクルと言いますか、ありがたいご縁だったと感じています。今思えば声優の道を勧められなければ、声優として、歌手として15年間仕事を続けてくることなんてできなかったはずですから。でも、決して声優活動も順調ではなかったんですよ。デビューはできても首の皮一枚で繋がっていた状態。ギリギリで何とか進んでいました。そんななか転機となったのが『涼宮ハルヒの憂鬱』。長門有希と出会えたことが今に至るまでのすべてのきっかけになったんです。

――長門有希との出会いが、ターニングポイントとなった。

そうなんです。それは歌手活動においても。今回のアルバムのDISC2にも収録されている長門有希のキャラクターソング「雪、無音、窓辺にて。」が、茅原実里の音楽の方向性にものすごく反映されています。あの曲を当時のランティスのスタッフさんが聴いてくださって、のちに私のプロデューサーになる方に「茅原さんはこういう路線でやったほうがいいよ」と後押ししてくださったんです。それが今に繋がっている。声優活動においても、歌手活動においても有希が私にたくさんのチャンスをくれました。