オリンピックイヤーということもあり、ますます増加している訪日外国人観光客。東京都内では、ヴィーガンやハラールなどに対応するレストランも増えつつある。時代と共に食の多様性への対応が飲食業者に求められているようだ。そんな中、岩手県二戸市の事業者団体が"フードダイバーシティ宣言"を行い、話題を集めている。
岩手県二戸市の食産品を世界へ
この宣言は、二戸市内企業における食の多様性対応を推進し、今後増えていく訪日外国人に「東京2020+1都市」として選ばれること、また市内食産品の世界展開を目指すために、地域経済牽引企業を中心とした市内民間業者によって、行政と連携して行われたもの。1月24日に東京・西麻布「権八」(ブッシュ元大統領と小泉元首相の歴史的な「居酒屋会談」が行われた店として有名)にて実施された記者会見には、多くのメディアが取材に訪れ、関心の高さを伺わせた。
事業者を代表して挨拶を行った日本酒の蔵元・南部美人の代表取締役・久慈浩介氏は、昨年アフリカ・ウガンダに行った際、スーパーでも空港のラウンジでも当たり前にヴィーガン、ベジタリアン、ハラール対応がされていたことを目の当たりにして、日本ではそれが当たり前に出来ていないことに大きなショックを受けたという。
そんな中、南部美人では2019年1月に世界初の日本酒でのヴィーガン認証を国内外で取得。また、南部せんべいの老舗・小松製菓(代表取締役 小松豊)でも、2019年12月に5商品のヴィーガン認証を取得したことで、二戸市には複数のヴィーガン認証企業が誕生。これを生かして、世界中からインバウンドで集まるヴィーガンの方々に、「安心して食べる・飲む・買う」をしてもらうための、ヴィーガン・フレンドリーな街づくりを考えたという。
また、久慈ファーム(代表取締役 久慈剛志)が2018年より販売している「熟レ鶏(うれどり)」で今後ハラール認証を申請予定ということもあり、ヴィーガンだけでなくハラールも含め、世界中の食の禁忌者にも優しい、世界標準の街づくりとしてフードダイバーシティ宣言を行うことに。
今回の宣言は、行政である二戸市が出すのではなく、上記の事業者3社が宣言を出し、それを岩手県、二戸市、JETRO盛岡貿易情報センターが応援する形となる。今後は米農家、野菜農家、果物農家等も含め、二戸市全体でできるだけ多くの事業者と連携しながらフードダイバーシティを創造していくそうだ。
試食会で美味なニ戸グルメを満喫
会見後は、試食会も実施された。「権八」の提供によるアボガド、しいたけ、コーンなどを使ったヴィーガン寿司は、1つ1つの味が濃い感じで、想像以上に食べ応えがあり。久慈ファームの「熟レ鶏」は、弾力があり肉の旨味が凝縮されており、思わず目の前にあった南部美人の日本酒に手が伸びてしまった。酒のつまみに最高だ。
また、小松製菓の南部せんべいは、米ではなく小麦粉が主原料となっており、胡麻の風味と食塩による控えめな味付けが良し。気が付けば何枚でも食べてしまいそうな美味しさだった。お土産にもいただいたのだが、あっという間に食べてしまったほどだ。
訪れたことがなくあまりなじみがなかった岩手県二戸市だったが、今回取材したことでグッと身近に感じられるようになった。フードダイバーシティ宣言を経て、今後二戸市がどのような街づくりを実践していくのか注目しよう。