JR九州は29日、新たなD&S列車「36ぷらす3」に使用する787系の改造工事などを報道関係者らに公開した。「36ぷらす3」は787系の面影を残しつつ、「九州のすべてが、ぎゅーっとつまった“走る九州”といえる列車」のコンセプトを体現する新たな列車として、2020年秋の運行開始を予定している。

  • 「36ぷらす3」は787系1編成(6両編成)を使用。改造工事の様子が公開された(写真:マイナビニュース)

    新たなD&S列車「36ぷらす3」は787系1編成(6両編成)を使用。改造工事の様子が報道公開された

使用車両の特急形電車787系は1992(平成4)年に登場し、博多~西鹿児島(現・鹿児島中央)間の特急「つばめ」を中心に活躍。水戸岡鋭治氏が車両デザインを担当し、ダークグレーの外観と落ち着いた車内空間、モダンかつ機能的なデザインで好評を博した。九州新幹線の全線開業後、787系は九州内の各地へ活躍の場を移し、現在も特急「かもめ」「きらめき」「にちりん」「きりしま」などの列車で使用されている。

「36ぷらす3」は787系1編成(6両編成)を改造し、JR九州では初という電車によるD&S列車に。全車グリーンで合計103席を予定し、1~3号車はグリーン個室(1号車は4席×4室、2号車は6席×3室、3号車は2席×6室)、4号車はイベント等に活用できるマルチカー、5・6号車はグリーン席(5号車は30席、6号車は27席)となる。特急「つばめ」の時代から人気を博したビュッフェも復活し、3号車に設置される。

今回は「36ぷらす3」に使用される6両のうち、1・5・6号車の改造工事を公開。外観に加え、1号車の車内に入ることができ、5号車の車内で行われる工事の様子も見学できた。JR九州代表取締役社長執行役員の青柳俊彦氏、「36ぷらす3」の車両デザインを担当するドーンデザイン研究所の水戸岡鋭治氏も工事の見学に訪れた。

  • 報道公開では1号車の車内と5号車での工事の様子も見学できた

  • JR九州の青柳社長、「36ぷらす3」の車両デザインを担当する水戸岡氏も工事を見学

続いて「36ぷらす3」の社員向け車両改造キックオフミーティングが行われ、青柳社長と水戸岡氏も出席した。青柳社長は挨拶の中で、「まだ新幹線がなかった時代、787系『つばめ』はまさにJR九州の命運を分けた重要な列車でした」「787系がまだまだ健在であるところを皆さんに見ていただきたい。その思いで新たなD&S列車の挑戦を開始しました」と説明した。

水戸岡氏は787系について、「いまから27~28年前、この車両をデザインする仕事をいただき、知らないことも多い中、試行錯誤しながら出来上がりました。私にとって一番思い出深い、大切な車両です」と話す。「いま見てもよく出来ている車両で、これに触りたくないという気持ちもありましたが、787系がデビューしたときの感動をもう一度、そして『36ぷらす3』で新たな感動を提供したいという気持ちで取り組んでいます」と語り、「『ななつ星』と比べて予算はありませんが、クオリティだけは『ななつ星』や『或る列車』に負けないレベルにもっていきたい。外観は黒のメタリックで深みを出し、車内も最高の塗装になるようお願いしています」と説明した。

出席した社員らに向けて、「出来上がったとき、自分の家族、親戚、友達にぜひ乗ってほしいと思えるような車両にしてほしい。私も頑張ります。皆さんも一緒になって、感動体験の生まれる素晴らしい九州一周の旅を作っていきましょう」と水戸岡氏。その後、社員による決意表明も行われ、車内サービスを担当する社員は、「この『36ぷらす3』を通して、驚き、感動、幸せをお届けし、お客様や地域の皆様と一緒に、世界一大きな“39(サンキュー)”の輪を描きます。その実現のため、九州の魅力を貪欲に学ぶとともに、ご協力いただくすべての皆様へ、感謝の思いを持ち続けます」と述べた。

  • 社員向け車両改造キックオフミーティングに青柳社長と水戸岡氏が登壇。「36ぷらす3」の販売方法に関する説明も

787系を改造した新しいD&S列車「36ぷらす3」は2020年秋に運行開始し、木曜日から月曜日までの5日間で九州7県を巡る運行ルートを予定している。木曜日は博多駅を10時頃に発車し、途中の玉名駅で20分ほど停車。熊本駅を経て八代~川内間で肥薩おれんじ鉄道に乗り入れ、牛ノ浜駅で20分ほど停車する予定(調整中)となっている。鹿児島中央駅には16時半頃に到着する。金曜日は鹿児島中央駅を12時頃に発車し、途中の大隅大川原駅で50分ほど停車。宮崎駅に16時頃に到着する。

土曜日は11時半頃に宮崎空港駅・宮崎駅を出た後、延岡駅で10分程度、宗太郎駅で10分程度、重岡駅で20分程度の停車を予定。16時半頃に大分駅・別府駅に着く。日曜日は11時頃に大分駅・別府駅を出た後、杵築駅に15分程度、中津駅に10分程度、門司港駅に30分程度の停車を予定し、博多駅へ。月曜日は博多~長崎間の往復で運行され、往路は博多駅を11時頃に発車し、肥前浜駅で50分ほど停車した後、15時半頃に長崎駅に到着。復路は17時半頃に長崎駅を発車し、21時頃に博多駅に到着する。

「36ぷらす3」に宿泊設備はなく、日中時間帯のみの運行となるが、青柳社長によれば、「昼間は列車で楽しみ、夜は大いに地元で盛り上がってもらいたい。そういった意味でも、この列車が地域経済に及ぼす影響は大きいのではないかと考えています」とのことだった。なお、「36ぷらす3」の販売方法に関して、乗車の数カ月前から販売する「昼食付きのプラン」、乗車1カ月前から「みどりの窓口」などで販売する「きっぷのみのプラン」の2本立てで計画しているとの説明もあった。

  • 「36ぷらす3」への改造工事が始まった787系(1・5・6号車)の外観・車内と工事の様子