■京都市バスとのシームレスな乗継ぎも実現へ

北野線の終点、北野白梅町駅では現在、今年3月の完成をめざし、改良工事が進捗している。駅のホームを改築し、電車のりばの対面に京都市バスのバス停を設置する事業で、完成すれば電車とバスが段差なしで乗り換えられるようになり、北野白梅町駅と金閣寺道、烏丸今出川(地下鉄今出川駅)、出町柳駅前、銀閣寺道などを結ぶ102系統が乗り入れる予定。嵐電の運賃は車内で支払う方式であり、駅に改札口を設けていないことを活用した形だ。

  • 北野白梅町駅では、嵐電と市バスを直結する改良工事が進む(2019年11月撮影)

昨今の公共交通機関は、「MaaS」に代表されるように競合関係から協調関係への転換が基本路線となっている。そのネットワークは交通機関に限らず、観光や飲食、物流など他の産業へも広がりつつある。

もちろん、ここで紹介した事業は京福電気鉄道が単独で行ったわけではなく、とくに行政との連携が重要であったことは言うまでもない。ただ、それほど大規模な鉄道ではないものの、嵐電が時代の流れを先駆的に体現してきた存在であるとは言えよう。

筆者プロフィール: 土屋武之

1965年、大阪府豊中市生まれ。鉄道員だった祖父、伯父の影響や、阪急電鉄の線路近くに住んだ経験などから、幼少時より鉄道に興味を抱く。大阪大学では演劇学を専攻し劇作家・評論家の山崎正和氏に師事。芸術や評論を学ぶ。出版社勤務を経て1997年にフリーライターとして独立。2004年頃から鉄道を専門とするようになり、社会派鉄道雑誌「鉄道ジャーナル」のメイン記事を毎号担当するなど、社会の公器としての鉄道を幅広く見つめ続けている。著書は『鉄道員になるには』(ぺりかん社)、『まるまる大阪環状線めぐり』(交通新聞社)、『新きっぷのルール ハンドブック』(実業之日本社)、『JR私鉄全線 地図でよくわかる 鉄道大百科』(JTBパブリッシング)、『ここがすごい! 東京メトロ - 実感できる驚きポイント』(交通新聞社)など。