■江ノ電と「姉妹鉄道」ソフト面の連携も進む

2009年10月14日に神奈川県の江ノ島電鉄と「姉妹鉄道」の協定を結んだことも、当時としては珍しい連携であった。近接する鉄道事業者同士によるハード面での結節のみならず、遠方ながらも古都を走るなどの共通点を持つ鉄道事業者同士が、ソフト面で連携を図ったのだ。

  • 江ノ島電鉄の塗色をまとった「江ノ電号」

近年、相互PRなどをメリットとして、台湾の鉄道事業者との間で姉妹鉄道の協定を結ぶことが一種の流行にもなっているが、嵐電と江ノ電の連携は、国内の鉄道事業者同士による、かなり早い時期のものとして注目を集めている。中でも嵐電と江ノ電の電車に、それぞれ相手の事業者の塗色を施した施策は異色であった。

2011年5月18日からは、ヤマト運輸の宅急便の荷物を嵐電で運ぶという取組みも始めている。宅配業者と手を結び、列車やバスに荷物を混載する事業は、最近になって北越急行や長良川鉄道などで広く行われるようになっている。だが、宅配企業の物流ターミナルと、集配を担当する地域の営業所との間の輸送に鉄道を利用する事業は、この京福電気鉄道とヤマト運輸の事例が初めてだった。自動車の使用を抑え、CO2排出量削減の面からも画期的な発想として注目された。

■JR嵯峨野線・阪急京都本線との「結節」も

2011年には株主配当が復活。経営が軌道に乗り始めたことを示した。なお、2019年3月末現在、京福電気鉄道の最大株主は京阪ホールディングス(43.15%)である。2013年には、全国相互利用が可能な交通系ICカードを嵐電でも使用可能とするなど、時代に合わせた改善にも取り組んできた。

次のハード面での改善は、2016年4月1日に開業した北野線の撮影所前駅。新駅の開業は嵐電天神川駅以来、8年ぶりだった。隣の帷子ノ辻駅からわずか0.3km、常盤駅から0.6kmの地点に駅を設置したのは、JR太秦駅との乗換えの便を図ってのことだ。

  • JR太秦駅に程近い場所に設けられた撮影所前駅。東映京都撮影所のすぐそばにある

それまで、嵐電とJR嵯峨野線(山陰本線)の接続としては、嵐電嵯峨駅とJR嵯峨嵐山駅との間で可能(徒歩約3分)であったが、JR京都駅から嵐電沿線へアクセスするには位置が偏っている。とくに仁和寺や龍安寺といった人気スポットを抱える北野線方面は便利といえず、太秦駅から帷子ノ辻駅へ行くにも徒歩で6~7分かかったため、より近い場所にホーム2面の新駅を設けたのである。

2017年3月25日には、西院(さい)駅の改良工事が完成した。それまで阪急京都本線西院(さいいん)駅と隣接していながら改札口同士が離れていたのだが、阪急電鉄が嵐電のホームに近接する場所に改札口を新設し、嵐電も嵐山方面のホームを道路を挟んだ反対側に移設。これにより、阪急京都本線の京都河原町方面のりばと嵐電の嵐山方面のりば、嵐電の四条大宮方面のりばと阪急京都本線の大阪梅田方面のりばが直結され、雨天時でも傘の要らない、バリアフリーな乗換えが可能となった。

  • 移設された西院駅に入る嵐山行の電車

  • 西院駅では、改良工事によって嵐電のホームと阪急京都本線の改札口が直結となった

2001年から阪急京都本線の特急が日中時間帯に大宮駅通過となり、嵐電との接続が不便になっていたことも、西院駅を改良する背景のひとつだった。もともと大宮駅における嵐電と阪急京都本線の乗換えは、出入口の関係から必ず幹線道路を横断する必要があり、直結とは言いづらかった。

2017年に完成した改良工事により、現状において停車する列車種別が大宮駅と同等であり、より大阪方面に近い西院駅でスムーズな接続が可能となったことで、遠方から嵐電沿線への往来が大きく改善された。

平成30年度の京都市統計書によれば、嵐電の西院駅の年間乗車客数は2016年度の約75万2,000人(定期券約15万5,000人、定期券外約59万7,000人)から、2017年度は約100万5,000人(定期券約37万7,000人、定期券外約62万8,000人)と大幅な増加を見せたという。中でも日常的に利用する定期券利用者の増加が顕著である。