働く女性の中には、毎月やってくる生理をわずらわしいと感じている人も少なくないだろう。生理痛がひどい人はもちろんのこと、痛みがなくても身体の不調を感じることが多いはず。ただ、「多少の不調は当たり前だから」と我慢して月経の異常を放置していると、その裏に思わぬ病気が隠れている可能性もある。

そこで今回、産婦人科専門医の船曳美也子医師に、さまざまな月経異常の原因や症状についてうかがった。

  • 月経異常の原因や症状を専門医が解説

月経異常の種類と各症状

生理に伴う身体の不調を疑うためには、まず正しい生理の周期や月経期間について正しく把握しておく必要がある。

「日本産婦人科医会は、正常な生理(月経)の目安として『月経血量は平均50~60g(20~140g)』『周期を25~38日(変動6日以内)』『持続日数が3~7日以内』をあげています」

月経初日から次の月経初日の前日までを生理周期と呼ぶが、通常の生理周期は約1カ月。6日程度の周期のずれは正常範囲であるため、一般的な生理の正常周期は25日~38日とされている。

この正常な生理サイクルは、過度のストレスや睡眠不足などに伴うホルモンバランスの乱れによって前後する。ただし、まれにこの約1カ月のサイクルから全く離れたタイミングで生理が来る月経異常が起きるケースもある。

月経異常には以下のような種類がある。

原発性無月経

18歳になっても初経が来ない状態を指す。その理由としては、「女性ホルモンの分泌をコントロールする脳の視床下部や脳下垂体、卵巣の働きの異常」「染色体や遺伝子の原因」「子宮や卵巣などの月経をつくる臓器の欠損」などが考えられる。

続発性無月経

初経以後に月経があったものの、3カ月以上にわたり月経がない状態を続発性無月経と呼ぶ。このような無月経では、排卵が行われずにホルモン機能が低下しているケースが多い。原因としては「体重の急激な減少・増加」「ストレス、薬などの外的原因によるホルモンのアンバランス」「甲状腺ホルモン異常など内科的疾患」などがある。

頻発月経

月経の周期が24日以下のため、1カ月に2回以上の月経が起こること。頻発月経は、卵巣からの排卵がない「無排卵性」と排卵がある「排卵性」に分類できる。無排卵性頻発月経は思春期や閉経前などで起きやすく、月経血量は少ないが、10日以上も月経が続く。排卵性頻発月経は、卵胞期が短くて排卵が早く起こり頻発月経になるケースと、黄体期が短くなって起こるケースがある。黄体期の短さは黄体ホルモンの分泌量低下に関与しているため、黄体期が短い頻発月経は不妊症や流産の原因となりうる。

稀発月経

月経の周期が39日以上のため、月経が2カ月に1回程度しか来ない。次の月経がいつになるか全く見通しがつかないほど不定期な場合、卵巣や脳下垂体の働きが低下している可能性があるため注意が必要となる。

過多月経

月経血が多すぎる月経。1周期で月経血が140gを超える場合が過多月経に該当し、日中1時間ごとにナプキンを替えないといけないか、1周期で夜用ナプキンを5枚以上使うかどうかが判断の目安となる。

過少月経

過多月経とは逆に月経血が少なすぎる月経。一般的に1周期で月経血が20g以下の場合が過少月経とされている。

過長月経

月経が8日以上続く状態を指す。原因としては、何らかの子宮疾患や月経不順に伴うものがあるという。

この中で注意が必要なのが過多月経や過長月経。どちらも結果として経血量が多くなり、体内から血が失われるため、貧血状態に陥りやすくなるからだ。

「若年女性の過長月経の原因の多くは、月経不順に伴うものです。特に排卵しないで起こる無排卵性出血の場合、長引く月経のように思える出血が続くことがあります」

一方、性成熟期女性の過長月経の多くは、過多月経が原因で起こる。

「子宮筋腫、特に子宮の内腔に突出してできる粘膜下筋腫や、内膜ポリープ、子宮内膜増殖症、子宮腺筋症といった疾患では、月経時に剥がれる子宮内膜の総量が多いため、過多月経とともに過長月経になります。また、更年期出血といったホルモンバランスの不調に伴う月経様出血の場合も、過長月経になることがあります」

月経異常に伴う健康上のリスクとは

これらの月経異常が続くと、将来にさまざまな健康上のリスクが生じる可能性がある。

無月経や稀発月経の場合

女性ホルモンだけが分泌されていて、排卵障害が長く続く場合は、子宮内膜症や将来の子宮体部がんのリスクがある。

『多のう胞性卵巣』という卵胞がたくさんあるが育たない状態の場合は、男性ホルモンやインスリン抵抗性が高くなっているため、将来の糖尿病や高脂血症、高血圧といった生活習慣病になるリスクが高まります」

若年女性がやりがちな急激なダイエットにも危険が伴うと船曳医師は指摘する。

「急激なダイエットなどにより、女性ホルモンも分泌されない重度の無月経が長く続いた場合、思春期の間に作られて18歳頃ピークになる骨の量(最大骨量)が低下してしまいます。そのため骨折や、将来の骨粗しょう症のリスクが上がります」

無月経は極限まで体脂肪を落としたアスリートによく見られ、女性アスリートと月経の問題は叫ばれて久しい。ただ、そこまで激しい運動をしない一般の女性でも、短期間に過度なダイエットをすれば無月経に陥る可能性はゼロではない。ダイエット時にはその事実を十分に肝に銘じておく必要があるだろう。

過多月経や過長月経、頻発月経の場合

繰り返し出血するので、慢性的な鉄欠乏性貧血になる可能性がある。鉄欠乏性貧血になるとめまいや立ちくらみ、疲れやすいなどの症状が出現する。

受診が必要か判断する目安

前述のように、日本産婦人科医会は正常な月経周期は25~38日であり、6日間程度のずれは許容範囲としている。ただし、「3カ月間以上にわたり生理がない」あるいは「次の月経までの間隔が常に1カ月半以上ある」などの条件に該当する女性は、一度検査したほうがよい。そして、月経の期間が3日から7日の間に収まっているかも確認しよう。

「月経量の平均は50~60gで、20~140gでしたら正常範囲に入っています。ただ、子どもがほしい方は、量が少ないと感じる場合や、反対に昼中、夜用パットを頻回に替えないといけない場合は早めに検査したほうがよいでしょう」

月経異常は痛みなどのはっきりした自覚症状がないこともあるが、月経量や周期、期間を改めてチェックし、気になることがあったら、婦人科で相談することが重要だ。不妊になる可能性だけでなく、生活習慣病や骨粗しょう症などのリスクもある。将来、手遅れとなる前に、早めに受診するようにしよう。

※写真と本文は関係ありません

取材協力: 船曳美也子(フナビキ・ミヤコ)

1983年 神戸大学文学部心理学科卒業、1991年 兵庫医科大学卒業。産婦人科専門医、生殖医療専門医。肥満医学会会員。医療法人オーク会勤務。不妊治療を中心に現場で多くの女性の悩みに耳を傾け、肥満による不妊と出産のリスク回避のために考案したオーク式ダイエットは一般的なダイエット法としても人気を高める。自らも2度目の結婚、43歳で妊娠、出産という経験を持つ。2014年、健康な女性の凍結卵子による妊娠に成功。出産に至ったのは国内初とされる。著書に、「婚活」「妊活」など女性の人生の描き方を提案する著書「女性の人生ゲームで勝つ方法」(2013年、主婦の友社)、女性の身体について正しい知識を知ってもらえるよう執筆した「あなたも知らない女のカラダ―希望を叶える性の話」(2017年、講談社)がある。En女医会にも所属している。

En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。