――石ノ森章太郎先生によるユニークな「仮面怪人」の個性も『ゴレンジャー』の魅力のひとつです。最初は黄金仮面、青銅仮面、ヒスイ仮面……と、江戸川乱歩作品に出てくるようなミステリアスな仮面怪人でしたが、だんだんフォーク仮面や機関車仮面、電話仮面、時計仮面、ストーブ仮面のように、モチーフとなる物体を頭に配置した面白おかしい「ギャグ怪人」が増えていきました。あの怪人たちはどのようにして生み出されていったのでしょうか。

あのころは新宿の西口にあるビルで『ゴレンジャー』の試写を観た後、メインのスタッフが階上のレストランに集まって、吉川(進/プロデューサー)さんや僕たちと石ノ森さんとで「次の怪人はこんなヤツで」と簡単な打ち合わせをするんです。すると石ノ森さんがその場でササ~ッとスケッチをして見せてね。それを見ながらさらに「こんなアイデアはどうでしょう」なんて言うと、また違ったデザインが上がってくる。まさに"天才の仕事"だと、そのとき思いましたね。

――上原さんが特に好きな仮面怪人は誰ですか?

黒十字軍の指揮官を務めた日輪仮面(第15~20話に登場)が気に入っています。僕はこの怪人が出てきたとき、『ウルトラマン』とも『仮面ライダー』とも違う『ゴレンジャー』独自の世界を築けるぞ、と確信しましたよ。それくらい日輪仮面のデザインが気に入っていて、彼の最後の決戦(第20話)は特にノッて書きました。

――『ゴレンジャー』では合間に入る太郎くんと大岩大太の「ナゾナゾ」問答や、ゴレンジャーストーム・ニューパワー作戦およびゴレンジャーハリケーンが最後に奇想天外な変形をして仮面怪人を倒すなど、非常にコミカルな描写も子どもたちの興味を引きつけました。ああいったギャグのアイデアもシナリオ段階で書かれているのでしょうか。

もちろん僕たちシナリオライターがひとつずつ考えています。当時は小学生の間でナゾナゾが流行っていたし、よく本を読みながら新しいナゾナゾがないか探していました。ときどき素っ頓狂なギャグも入れているんだけど、あのころだと「上原が書くのならいいか」なんて雰囲気があって、どんなことでも許容されていた感じでした。

ギャグの描写なら曽田(博久)くんが特に秀逸でね。僕が書かないようなキャラクターの動きを好んでやっていた。野球仮面(第53話)や牛靴仮面(第61話)なんて最高ですよ。彼がどんどん面白いアイデアを出してくるので、こちらとしては負けてられねえぞという気持ちで、お笑い要素が多くなっていったかもしれないよね(笑)。

――改めて『ゴレンジャー』のころを振り返ってご感想をお願いします。

『ゴレンジャー』や『ロボコン』をやっていた時期は、僕の子どもたちが幼稚園から小学校に上がるタイミングだったんです。家でテレビを観ていると、彼らがどういう場面で面白がってくれるのかがよくわかり、いいモニターになってくれました。ある意味、子どもたちに向けてシナリオを書いていたところがありましたね。

改めて『ゴレンジャー』を振り返ると、監督の竹本弘一さん、特撮の矢島信男さんといったプロフェッショナルの方たちが張り切って、ものすごい画を撮っている。このような人たちと一緒に仕事ができたことは、僕にとって幸せでしたね。

――その後、シリーズ第2弾として『ジャッカー電撃隊』(1977年)が製作され、上原さんはここでもメインライターを務められています。そして『透明ドリちゃん』(1978年)や『がんばれ!レッドビッキーズ』(1987年)『スパイダーマン』(1978年)を経て、1979年には『バトルフィーバーJ』でふたたび「スーパー戦隊」を手がけられ、『電子戦隊デンジマン』(1980年)『太陽戦隊サンバルカン』(1981年)でシリーズが完全に定着するまでの道筋をしっかりと作られました。

『ジャッカー電撃隊』は『ゴレンジャー』の直後なので印象を変えようとして、最初のころはずいぶん重くシリアスな作風なんだよね。あの独特のムードは吉川さんの好みとするところで、僕も好きなものですからどんどん暗い方向に行ってしまいました。その反動で、後半からは『ゴレンジャー』的な明るさを取り入れようとしていますね。

『バトルフィーバーJ』では高久進さんが第1話、僕が第2話を書いています。この作品だとヒーロー5人それぞれが好き勝手に遊んでいたりするでしょう。バトルケニアの大葉健二さんが、基地の中で魚を焼いて食べているとか(笑)。これは『ゴレンジャー』との差別化を図り、キャラクターの描き方に変化をつけようとした結果です。

秘密結社エゴスの作戦については、テレビを観ている子どもたちの生活に密着したところからの発想が多いですね。「君のそばにいる人は、もしかしたらエゴスかもしれないよ」みたいな感じ。まずなんでもない日常があり、何かのきっかけで「非日常」に転じていく……といった作劇は常に意識していました。

『デンジマン』では、メカニカルでシンプル、未来的なヒーロー像に新鮮な感覚を覚えました。一方で、野口竜さんがデザインされたベーダー一族のキャラクターもとてもよかった。特に曽我町子さん演じるヘドリアン女王なんて、ゾクゾクするほどの存在感がありましたね。

また『サンバルカン』では、賀川雪絵さんの演じる行動隊長アマゾンキラーがとても魅力的でした。僕は『スパイダーマン』で鉄十字団の幹部アマゾネス役だったときから、賀川さんのカッコいい悪役演技に惚れこんでいました。曽我さんや賀川さん、そして嵐山長官役の岸田森さんのような素晴らしい役者さんと出会えたのは、まさに幸運というしかないですね。