劇場アニメ『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』(公開中)の男性向け上映イベントが13日、東京・新宿ピカデリーにて行われ、脚本を担当した角田貴志氏が制作秘話を語った。

  • 角田貴志

    『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』の脚本を担当した角田貴志氏

すみっコぐらしは、たれぱんだやリラックマなどで知られるサンエックスにより、2012年に誕生した人気キャラクター。自信がない「ぺんぎん?」、食べ残された「とんかつ」、恥ずかしがりやの「ねこ」など、少しだけネガティブで個性的な“すみっコ”たちが幅広い世代の心をつかみ、「日本キャラクター大賞 2019」グランプリを受賞した。

本作では、絵本の中に連れて行かれたすみっコたちの大冒険を描き、新キャラクターも登場。V6・井ノ原快彦、女優の本上まなみがナレーターを務め、原田知世が心温まるバラード主題歌「冬のこもりうた」で物語に花を添える。今月8日に公開され、9日・10日の国内映画ランキングにて邦画1位を獲得し、114館の公開規模ながら3日間で動員数11万4,280人、興行収入1億3,287万3,500円を記録。各レビューサイトでは「☆」4つ以上を超える高評価で、大人の感動も誘うストーリー展開が「逆詐欺映画」としてツイッター上でも話題になっている。

上映後に登壇した角田氏は、「僕はこの脚本のお話をいただくまで全然知らなくて、今回初めて知りました。リラックマとか、サンエックスさんのキャラクターはいくつか知っていたんですけど、すみっコぐらしに関しては全く存じ上げておりませんでした」と回顧。生みの親である横溝友里氏から4コママンガを参考資料として渡された当時、「この4コマを映画にするのか……どうなんだろう」と戸惑いもあったという。

  • (C)2019日本すみっコぐらし協会映画部

自身が手掛けた脚本については、「横溝さん、まんきゅう監督、アニメーション制作チーム……いろいろな人たちが集まってみんなで作ったお話なんです。僕が脚本を書くんですけど、それを見て頂いてアイデアを出していく。みんなの思いを形作っていった」と説明。「『泣かせよう』とか、そこまで考えていなかったです」とし、「男性、女性というのはそこまで意識しなかったかもしれないです。小さいお子さんに分かるように意識はしました。『すみっコファンに』というのが第一でした。すみっコファンは大人の方もいらっしゃるので」と、演出やターゲット層よりもファンの存在を第一に考えたことを明かした。

横溝氏が当初から危惧していたのは、「すみっコたちの声が想像できない」。本作のキャラクターは一切しゃべることなく、それぞれの思いが文字で表現されているのはそのためで、角田氏は「監督やアニメーションチームは、『しゃべった方がやりやすい』と思ってたんですけど、そこは横溝さんの強い意思で押し通して頂いて、結果良かったです」と横溝氏に感謝する。

“逆詐欺映画”として話題の本作。角田氏は世間の反応に「全然思ってなかったです」と驚く一方、「セリフがないので、『話がちゃんと伝わるかな……』と心配するぐらいでした。だから、ここまで理解してもらえて、観に来てもらえるとは」と満員の男性ファンを前に安堵の表情を浮かべていた。