人の失敗談をコンセプトにしたバラエティと言えば、古くは『明石家サンタの史上最大のクリスマスプレゼントショー』から、最近では『しくじり先生 俺みたいになるな!!』『有吉反省会』『NHK杯 輝け!!全日本大失敗選手権大会』など、さまざまな番組が存在するが、また新たな切り口で楽しめる新番組が生まれた。

きょう9日(21:00~22:48)に放送されるフジテレビ系特番『怒られ履歴書』は、スタジオに登場する有名人の“怒られた経験”を履歴書にまとめ、そのエピソードに迫っていくというもの。この企画の狙いについて、編成企画のフジテレビ・赤池洋文氏に話を聞いた――。

  • 『怒られ履歴書』MCの内村光良(左)と川口春奈

    『怒られ履歴書』MCの内村光良(左)と川口春奈

■川口春奈&長嶋一茂がまさかの共鳴

“怒られた経験”をテーマにしたことについて、赤池氏は「ほとんどの人が経験していることなので、皆さんが共有できるものを考えました」と説明。他の“失敗談系番組”と違い、誰しもが持つ“怒られる”という共通体験を切り口とすることで差別化を図り、かつ視聴者が共感しやすい番組となった。

また、ただの失敗にとどまらず、“怒られる”という要素を乗せることによって、「大概の場合は1対1で追い詰められる危機的状況なので、より強いテンションが掛かってくると思うんです。その分、のちに聞いてみたくなるような印象深いエピソード話になるのではないかと考えました」という狙いも。

そして、怒られた話は「本人にとってその瞬間はたまったもんじゃないけど、客観的に聞くと思わず笑ってしまうものが多いし、そこから学べることもあったりするんです。その笑いの部分と真面目な部分があって、バラエティ番組に落とし込んだときに幅広いものになると思いました」といい、加えて「“履歴書”というパッケージにして、その人の人生に照らし合わせながら“怒られの遍歴”をたどっていくと、さらに厚みが増して面白いのではないかということで生まれた企画です」と経緯を明かした。

こうして臨んだ収録は「事前の打ち合わせで出た話が、何倍も面白くなりました。内村(光良)さんもすごくいい感じで入ってきてくれて、川口(春奈)さんと(長嶋)一茂さんが急に共鳴する場面もありましたし(笑)、そこを劇団ひとりさんがうまく仕切ってくださって、想定をはるかに超えて面白くなりましたね。ゲストの方が変われば、怒られた数だけ番組が作れるので、続けられたらいいなという可能性を自分なりに感じながら、収録を見ていました」と手応えがあったそう。

ゲストにオファーすると、最初は「怒られた経験なんてあったかな…」と悩むそうだが、ヒアリングを進めると「怒られたエピソードがボロボロ出てきて、『今にして思えばそうだ!』『あの経験が今の自分につながってるのかな』とどんどん思い出されるんです」とのこと。「履歴書」を作るため、多くのエピソードが必要になるが、気づくとボードに収まりきらない量になっているそうだ。

そこで、赤池氏に自身の怒られエピソードを聞くと、「もうたくさんあります。どれから話せばいいのか…」と言いながら、テレビマンならではの次々にエピソードが飛び出した。

■『はねトび』演出から「笑いの正解を考えろ」

まずは「立川談春さんと落語をテーマにした番組をやったとき、最後のコーナーで視聴率を下げないためのミニコーナーを考えたんですね。それは『サザエさん』や『めざましテレビ』のように談春さんがジャンケンをしたらギャップで面白いんじゃないかっていう、今にして思えば全く大した企画じゃないんですけど、当時会議で盛り上がって。それで本人に提案したら、『普段あまりテレビに出ることのない私のような落語家は、君たちが思ってる以上に1回1回がものすごい勝負だと思ってる。その視点から考えると、そのジャンケンに正直、勝ち目があるとは僕には思えない』と。言葉こそ穏やかでしたが、その迫力に圧倒されてしまって…。ただ、談春さんが本当にすごいのはこの後で、『でも、君はテレビの世界において僕より経験のあるプロなんだから、君が本当に面白いと思うんだったら僕はやるよ』と。談春さんにそこまで言わせてしまって、もうやれるわけないですよね。あらためて、ちゃんと相手の気持ちになって考えないと、いいものは作れないんだというのを学びましたね」。

編成企画の赤池洋文氏

また、「『はねるのトびら』をやっていたとき、演出の近藤(真広)が『めちゃイケ』などをやっていた厳しい人で、とにかくいっぱい怒られたんですよ。そんな中でも特に印象に残っているのが、ある時『お前はちゃんと笑いの正解を考えようとしてるのか』と言われたことがあったんです。僕は、笑いっていろんな解釈があるから正解なんてないと思ってたんですけど、『自分の出した笑いの答えが本当に合ってるのか合ってないのかを突き詰めて、お前にとって正解だと思ったものを俺に出してこい』と言われて。なるほど、あえて正解がると考えることが大切なんだ、と。それから、ものを考えるときは『これは正解なのかなぁ…』って口癖のようにつぶやいて考えるようになりましたね」とも。

さらに、「ADの時に、タレントさんが登場する時に登場口のドアを開ける担当になったんですけど、自分ではいいタイミングでちゃんと開けたつもりだったのですが、『違う! お前は全然ドアの気持ちになってない!』と。初めは冗談で言われているのかと思ったんですけど、どうやら真剣に言われているぞ、と。タイミング的には合っていたはずなんだけど、どこがダメだったのか…。もうパニックになりました(笑)。要は1つ1つのことにちゃんと気持ちを込めてやれということだと思うんです。ただ、これについては、いまだにこの解釈で本当に正解なのか、つかみきれてないです(笑)。これを言われたのは三宅恵介さん(『オレたちひょうきん族』などのディレクター)なんですが、『お前は全然ドアの気持ちになってない!』『はい、すいません!』って、客観から見たらコント以外の何物でもない状況だったと思います(笑)」という脱力系の話まで。エピソードに“怒られる”という縛りを課しながらも、バリエーション多く展開できることが分かる。