10月7日(月)21時からフジテレビ系でスタートする連続ドラマ『シャーロック』で、主人公の誉獅子雄(ほまれ・ししお)を演じるディーン・フジオカ。本作では今なお多くの人から愛される古典的名作『シャーロック・ホームズ』を、現代の東京に舞台を移して描かれていく。名だたる世界の俳優たちが演じてきたこの役を、令和の今、彼なりにどう演じようとしているのか。

ディーン・フジオカ

――これまでにたくさんの俳優がシャーロックを演じてきたと思いますが、今回ディーンさんが獅子雄を演じる上で、従来と沿っている部分と、新しく加えた部分について教えて下さい。

いろいろなアイコニックなパーツがあると思うんです、シャーロックって。たとえばファッションとか、アイテムとか、ボクシングだとか。それらをすごく緻密に、取捨選択しながら演じています。西谷(弘)監督とも話し合いながら、テイクごとに可能性があるものをトライさせてもらったり。でも、それもやりすぎると残ったものが少なくなるし、かといって離れすぎても奇をてらいすぎたものになってしまうし、そこのバランス加減がすごく緻密ですね。

それに、今回の作品はセリフがすごく早いんですよ。謎解きする際もワンブレスでバーっと呼吸せずに行くから、その緩急がどこか音楽的でもあって。納得がいかない時は、自分からもう一回やらせてもらえるよう監督に頼んだりしながら、毎回せめぎあっている感じです。でも、そのせめぎあいのところにオリジナリティがきっと生まれると思うし、第1話を半分ほど撮り終えた段階で「これが令和のシャーロックの姿だと思います」と言ってくれた西谷さんの言葉が自信につながったというか、手ごたえを感じています。

――シャーロックの大切なバディ、ワトソンとなる若宮潤一を演じる岩田剛典さんとの共演についてはいかがでしょう。

そうですね……ガンちゃんとは8歳くらい年齢が離れてますが、やっぱり音楽や共通の趣味の「あるある話」で盛り上がったりしてます(笑)。隣で見ていて彼の真摯な姿、努力家の面には頭が下がりますし、決して無駄話はしませんが、たまにちょっかい出すと、彼の人となりが垣間見えるのが興味深いです。

ソロとグループの違いはありますけど、ミュージシャンであり俳優でもある立場として、いろいろなことをマルチタスキングで進めながら、それぞれの現場に覚悟を持って臨んでいるからこそ気づくこともあったり。とても気持ちよくコミュニケーション取らせてもらっています。

  • 岩田剛典(右)はワトソンとなる若宮潤一を演じる
    (C)フジテレビ

――今回、ご自身が歌われる主題歌『Shelly』に込めた思いについて聞かせて下さい。

そもそも、Shellyは誰なんだって話だと思いますが(笑)、そこは聴いてくださる方がそれぞれ想像してもらえればと。音楽の表現については「こう聴いて欲しい、これはこういう意味です」とはっきり言うのではなく、理路整然と説明がつかないところに感動ってあると思うんです。

あえて言うとすれば、つかめそうでつかめない運命の象徴や、抗えない宿命と一個人の関係性みたいなものとして受け止めてもらえればいいかなと思っています。聴く人によっては特定の女性を思い浮かべて情感を感じてくださるかもしれないですし、聴く時と場所が違えばまた違うような響きになってくれると思いながら作りました。

――本作ではさまざま犯罪者たちの心理に獅子雄たちが迫っていきますが、人間が犯罪に走る心理について、ディーンさんはどう考えますか?

いい質問ですね……でも、同時にすごく難しい質問でもあります。人それぞれの考え方があると思いますが、今の自分の考えを言葉にすると、一線を越えてしまう衝動はおそらく誰しもが持っていると思うんです。でも、どんな言葉で表しても、すぐに「いや、そうではない」と思ってしまう自分がいます。

"愛"ゆえにその一線を越えてしまうこともありますよね。理想論的な話をすれば、守るべき大切なものがあるからこそ踏みとどまれることもあると思うのですが、なかなかそんな単純な世の中ではなかったりするじゃないですか。どうしても自分が信じたい価値観や守りたいものと相反するものが目の前に突きつけられた時、頭が真っ白になってしまい、目の前のそれを消し去ってしまいたいと思う衝動が生まれることがあるかもしれない。それが愛ゆえに、ということかもしれない。その一方で、倫理観や信仰に基づいて行動基準が定められている国だってあるし、月の満ち欠けや、自然界の不思議な現象によってパラダイムシフトが起きてしまうこともある。

獅子雄も自分の中の犯罪衝動と向き合って生きているという側面を持ったキャラクターですし、それゆえに"謎"を解くことに対する異常なまでの執着心があり、それが彼の推理力が説得力を持つ理由でもある。その意味で「なぜ人は犯罪を犯すのか」という根源的な問い、そこと向き合うことが、この作品のもう一つのテーマでもあると思います。