「幼児教育・保育の無償化」がスタートしたことで、保育料はどのように変わるのでしょうか? また、子どもを保育園に通わせることで、保育料以外に、どのような費用がかかるのでしょうか。子どもの年齢や利用する施設などによって金額が異なる「保育園にかかる費用」について、解説します。
認可・認可外、年齢別、保育料の違い
子どもを通わせる園が認可保育園か認可外保育園か、子どもの年齢はいくつかによって、幼児教育・保育の無償化による補助の内容が変わり、保育料も異なります。
(1)認可保育園の場合
認可保育園は、国が定めた基準をクリアし都道府県知事等の認可を得ている保育園です。 幼児教育・保育の無償化により、認可保育園に通う3歳~5歳の保育料は無料になります。なお、0歳~2歳は今まで通り、世帯の収入などにより保育料が決まり、住民税非課税世帯の場合に限り保育料が無料です。
0~2歳の保育料は、国が定める上限額はあるものの、住んでいる自治体、世帯の所得、子どもの人数、保育時間という4つの要素で決まります。
例えば、夫300万円、妻200万円、世帯年収500万円(所得控除は基礎控除のみ)、「市町村民税の所得割額」が14万8,000円だった場合、1歳児1人(10時間保育)の保育料は、東京都港区で1万8,300円、大阪府大阪市で3万9,400円と大きく異なります。
自治体が設定している保育料の金額表にこれらの情報をあてはめて、ご自身の家庭ではいくらかかるのか、確認してみましょう。
(2)認可外保育園の場合
一方、認可外保育園は、認可保育園以外の保育園で、国の認可基準を満たしていないものの、各都道府県に届出を行い、指導を受けています。
認可外保育園では、施設によって利用料・サービスが異なります。認可保育園と比較して長時間預かってもらえたり、少人数保育だったり、それぞれの施設によって特色があります。
保護者が申請して市町村から「保育の必要性の認定」を受けている場合、3歳~5歳であれば月額3万7,000円まで、0歳~2歳で住民税非課税世帯であれば月額4万2,000円まで、月額保育料が補助されます。
なお、認可保育園に通っていない場合の一時預かりや、病児保育事業、ファミリーサポート事業を利用する場合も対象となります。
無償化における注意点
無償化の対象は3歳になってすぐではなく「3歳になった後の4月1日から」となります。つまり、3歳児クラスから保育料の無償化対象となります。3歳前後のお子さまがいる家庭は、適用時期にお気をつけください。
また、認可外保育施設の場合、いったん保育料等を全額保育施設に支払い、後日、自治体に請求することで、補助金の支給を受けることができます。このため、最終的には家計への負担が軽くなりますが、お金が返ってくるまでに少し時間が必要という点は覚えておきましょう。
保育料以外にかかる費用は
無償化の範囲は、あくまで保育料だけです。例えば給食などの食材料費や延長保育料、雑費などについては、保護者が負担することとされています。また、認可外保育園で課外授業などを受けている場合も保護者負担となります。
保育園にかかる費用はどうなる?
結果として、保育園にかかる費用はいくらになるのでしょうか。京都市内にある保育園を例にとって算定してみました。
例えば、3歳児が認可保育園を11時間利用した場合、保育料は無料になりますが、給食費が4,500円(年収360万円以下の場合は免除)、体操服や教材費などの雑費が1,058円、3時間分の延長保育料が3,000円となり、月あたり8,058円の費用がかかりました。
一方、11時間あたり3万1,300円の保育料がかかる認可外保育園では、保育料が補助の上限額を下回るので0円、給食費が2,400円、雑費が4,917円となり、月あたり7,317円かかりました。認可保育園より、費用が安い計算となります。
11時間あたり8万5,000円と保育料が高めの認可外保育園では、補助によって保育料が2万8,000円に抑えられ、給食費(1万1,000円)、雑費(2,000円)と合わせて4万1,000円となりました。
※雑費については年額を月の負担額にならして算定
例に挙げた認可保育園では、雑費の内訳として、貸しふとん料、通園ブック、保険料、体操服上下、運動帽、教材補充費、外ぐつ、アルバム代が記されていました。
我が家の場合ではありますが、例えば5歳児になると行事が増え、遠足費用などもかかってきますし、行事の様子をおさめたDVD代や、送迎用自転車の駐輪代などもかかりました。
これから保育園選びをされる方は、細かいようでも一度、保育料以外にかかる費用を総点検してみましょう。
保育料の負担を軽くするためにできること
0~2歳児をお持ちの方は、認可保育園の保育料が安くなる方法についても確認しておきましょう。
(1)所得控除を利用
認可保育園の保育料が決まる要素の中に、世帯の所得(市町村民税の所得割額)がありま す。「所得控除」を上手に利用すれば、所得を少なくすることができます。所得控除には、例えば、生命保険料控除、医療費控除、個人型確定拠出年金(iDeCo)があります。
該当するものがあれば、年末調整、確定申告などで申告しておきましょう。
(2)自治体の減免措置
急に働けなくなった場合の減免措置をとっている自治体もあります 。困った時は、一度自治体に相談してみるとよいでしょう。
(3)きょうだいがいる場合は2人目半額、3人目以降無料
保育料の負担を抑えるための方法とは少し違いますが、複数の子どもを望むご家庭に配慮した措置があることも知っておきましょう。
世帯年収に関係なく、認可保育園等にきょうだいがいる場合、2人目は半額、3人目以降は無料となります。きょうだいが通う保育園が異なる場合でも対象となります。年収360万円未満相当の世帯の場合は2人目から無料になります 。
保育料だけでなく、将来の家計を見据えた選択を
幼児教育・保育の無償化によって、保護者の費用負担が大幅に減少しました。このため、今まで保育料の高さで働くことを諦めていた人でも、働き続けやすい環境になりました。
キャリアの継続は生涯賃金に大きく影響します。今時点の家庭の状況だけではなく、長期的な視点で「働く」ということを考えてみてはいかがでしょうか。