JR四国が既存の特急形気動車2000系の後継として投入する新型車両2700系。土讃線特急列車での営業運転開始に先立ち、9月1日に先行乗車ツアーが開催された。半室グリーン車2両を連結した7両編成で高知駅から多度津駅まで走行し、多度津工場にて2000系試作車「TSE」との並列展示も行われた。

  • 新型車両の特急形気動車2700系。7両編成で高知駅3番線ホームに入線(写真:マイナビニュース)

    新型車両の特急形気動車2700系。7両編成で高知駅3番線ホームに入線

新型車両の特急形気動車2700系は、日本の伝統意匠をアレンジした「Neo Japonism(ネオジャポニズム)」をコンセプトにデザイン。四国の豊かな自然に映え、徳島「阿波おどり」・高知「よさこい」の情熱も表現したディープレッド、オリーブをモチーフに香川をイメージしたグリーンのラインを施すなど、特急列車が結ぶ地域性の表現をカラーリングにも盛り込んだ。既存の2000系と同様、車体傾斜制御方式に制御付自然振子方式(傾斜角度5度)を採用。2700系の最高設計速度は130km/hとされている。

8月6日から高徳線の特急「うずしお」の一部列車で営業運転を開始しており、9月3日から土讃線を走る特急「しまんと」「あしずり」の一部列車を2700系に変更して営業運転を行う予定。運転日限定の営業運転を経て、9月28日から定期運用を開始し、「うずしお」「しまんと」「あしずり」に加え、岡山駅発着で土讃線を走る特急「南風」の一部列車も2700系に変更される予定となっている。

土讃線での営業運転開始に先立ち、9月1日に行われた「2700系土讃線先行乗車ツアー ~受け継がれる振子式! 新たな時代を体感せよ!!~」では、高知駅から多度津駅まで片道乗車するAコース(募集人員80名)、同区間に往復乗車し、多度津工場にも入場できるBコース(募集人員150名。うち12名はグリーン席を利用)を設定。当日は2700系7両編成(1号車から2801・2753・2757・2707・2802・2754・2704)で運行され、1~4号車にBコース、7号車にAコースの参加者が乗車。報道関係者らも同乗した。

  • 2700系の半室グリーン車はグリーン席12席・普通席24席。グリーン席は横3列(2列+1列)の座席配置で重厚かつ上質な空間に

高知駅では多くの人が待ち構える中、10時10分頃、3番線ホームに7両編成の2700系が入線。ツアー参加者・報道関係者らが乗車した後、10時26分頃、7号車(2704)を先頭に高知駅を発車した。7両編成のうち1号車(2801)・5号車(2802)の2両が半室グリーン車となっており、5号車は報道関係者向けに撮影用としても使用された。

半室グリーン車は運転台側にグリーン席(12席)、連結部側に普通席(24席)を設けた。グリーン席は横3列(2列+1列)の座席配置で、アースカラーのブラウンを強調したデザインと落ち着きのある照明、カーペット張りの床などにより、重厚かつ上質な空間を演出している。リクライニングシートは電動レッグレストと読書灯を備え、肘掛部分にコンセントを設置した。普通席は横4列(2列+2列)の座席配置で、木質のテクスチャーと伝統文様をアレンジしたデザイン。徳島が育んだ「ジャパンブルー」、高知から望む太平洋の「オーシャンブルー」の彩りが映えるインテリアにしているという。

グリーン席・普通席ともに車内照明をLED化。各車両に荷物置場を1カ所設置したほか、多目的室や車いす対応多機能トイレ、客室内に車いすスペースを設けている。セキュリティ強化を目的に防犯カメラも取り付けた。

  • 半室グリーン車を連結した2700系が高知駅を発車。四国山地を越える土讃線は渓谷沿いを走る区間もあり、車窓風景は見応えがある

高知駅を発車した2700系は土讃線を快走し、後免駅・土佐山田駅といった特急停車駅も通過。ただし単線のため、列車待ち合わせで停車する駅もある。土佐山田駅を通過した後、列車は山間部を走り、しばらくすると渓谷沿いの美しい車窓風景が見えてくる。この区間はカーブも多く、振子式車両の実力を発揮しながらの走行となる。

大歩危駅で8分間停車して下り特急列車と待ち合わせ。大歩危・小歩危の絶景スポットを通過し、三縄駅でも列車待ち合わせを行った後、12時7分に阿波池田駅に到着した。ホームで出迎えたJR四国イメージキャラクター「すまいるえきちゃん」と「とくしまれっちゃくん」「かがわれっちゃくん」も列車に乗り、すでに乗車中だった「こうちれっちゃくん」と合流。4号車に「すまいるえきちゃん」たちのためのスペースも設置してあった。

  • 大歩危駅で8分間停車。続く阿波池田駅では5分間停車し、JR四国イメージキャラクター「すまいるえきちゃん」たちが乗車

  • 4号車に「すまいるえきちゃん」たちのためのスペースも

  • 箸蔵駅では18分間停車。ツアー参加者らでホームがにぎわう

  • 箸蔵駅は無人駅だが木造駅舎があり、撮影する人も多かった

阿波池田駅を12時12分に発車した後、佃駅で徳島線が分岐し、続いて吉野川を渡り、カーブを描いた線路上を列車は駆け抜け、三好市街を見下ろせる位置まで上って行く。次の箸蔵駅では下り特急列車・普通列車と待ち合わせのため、18分間停車した。その間に上り特急列車にも抜かれる。スイッチバックで知られる坪尻駅は通過となったが、ホーム上では多くの人が2700系が来るのを待っていた様子だった。他の駅や沿線でも鉄道ファンらの姿が見られ、新型車両への関心の高さをうかがわせた。

琴平駅では15分間停車。特急停車駅の善通寺駅は通過し、多度津駅には13時17分に到着した。3時間弱かけての往路の走行を終えたところで、片道乗車のAコースは解散となり、ホームにて5~7号車の3両が切り離される。4両編成となった2700系はBコースの参加者らを乗せ、ゆっくりとした走行で多度津工場へ向かった。

  • 琴平駅で15分間停車。多度津駅ではツアー参加者らが集まる中、5~7号車を切り離す作業が行われた

多度津工場では、世界初の振子式気動車として1989(平成元)年にデビューし、昨年引退した2000系試作車「TSE」の先頭車2両が展示されていた。その横に2700系が並び、振子式気動車の「新旧のコラボレーション」が実現。ツアー参加者らは2編成並んだ姿に加え、それぞれの車両を隅々まで撮影していたようだった。

途中、2700系のヘッドマークや車体側面の行先表示が変更される場面もあり、現時点で2700系による運行予定のない予讃線の特急「しおかぜ」「宇和海」などのヘッドマーク、普段は見られない「特急 卯之町」「特急 勝瑞」「特急 多ノ郷」「特急 平田」といった行先表示も見ることができた。

  • 多度津工場で2000系試作車「TSE」と2700系が並ぶ。普段見られないヘッドマークや行先の表示も

  • 2700系の車内(グリーン席・普通席)と外観