広瀬すず主演のNHK連続テレビ小説『なつぞら』(毎週月~土曜8:00~)で、なつの幼なじみ・小畑雪次郎がまたまた大ピンチに! いきなり菓子職人の修行を断念し、役者になると言い出した“雪次郎の乱”で、視聴者は驚かされつつもエールを送ってきた。今週は、憧れの先輩女優・亀山蘭子(鈴木杏樹)と共演するという夢も叶い、いよいよ2人はくっつくのか!?と思いきや、まさかの急展開に!

  • 『なつぞら』

    NHK連続テレビ小説『なつぞら』小畑雪次郎役の山田裕貴

雪次郎が役者の夢を追いかけてきたのは、純粋に芝居への情熱なのか、それとも単なる蘭子への憧れなのか、彼自身もわからなくなっていた。そんな中、蘭子が雪次郎に浴びせた強烈なダメ出しが、雪次郎の心に“致命傷”を負わせることに! 乱に破れた雪次郎は、帯広に戻るという決断を下す。

演じた山田裕貴は、同じ役者への道を志して奮闘してきた雪次郎というキャラクターに、自分自身を投影して演じてきたと言うが、今回の展開をどう受け止めたのか?

――大好きな蘭子さんから「あなたの演技は最悪だった」と言われ、雪次郎の心はズタズタにされてしまいます。あのシーンを振り返ってみて、いかがですか?

あの週の撮影は、思い出すだけでも辛いです。蘭子さんの言葉には本当に傷つきましたし、雪次郎としてはすごく悔しかったとも思います。劇団の仲間とも一緒に芝居をやりたかったし、蘭子さんが好きで、彼女と一緒にやりたいという気持ちも本物だったから。でも、そこで迷っていたから、蘭子さんからあんなにきついことを言われてしまったんじゃないかと思います。

――雪次郎はそう言われたあと、役者をやめてしまいますが、もしも山田さんが同じような立場だったら、どうされますか?

たぶん僕なら諦めずに芝居を続けます。僕は何か言われても「何クソ!」と思うタイプなので。だから、蘭子さんを見返してやろうとか、彼女のことが好きだから、絶対に一緒にいてやるとか、あるいは俳優として登りつめて、もう1回蘭子さんに告白しようとするかもしれない。でも、雪次郎には育った環境もあるし、結果的に愛の深い小畑家を選んだことには、すごく納得がいきました。

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――安田顕さん演じる父・雪之助さんから「逃げてきたわけじゃないんだな?」と確認されますが、あの親子のやりとりもぐっと来ました。

雪次郎は逃げたんじゃなく、それは“良い逃げ”だったのではないかと。僕は雪次郎を敗北者じゃないと思っています。彼が北海道に帰ったのは、負けたからではなく、ただそこが人生の岐路だっただけで。愛されて育った雪次郎だからこそ、素敵な家族を選び、そこに身を委ねたんだと思いました。

――雪之助さんや、仙道敦子さん演じる母・妙子さん、高畑淳子さん演じる祖母とよさんと、小畑家のみなさんはとても温かいですね。安田さんたちとの共演はいかがですか?

3人とも愛の深い方で、すごく優しく見守ってくれるので、僕はとにかく好きです。段取りやテスト、リハなどについても「好きにやりなさい」と言ってくださいますし。家族が雪次郎にかき乱されて気持ちが動くシーンが多いので、僕がやればやるほど、いいキャッチボールができるんじゃないかと思いながらやってきました。やる度にお芝居が変わることも多く、本番が一番ぴったり来るという感覚もあります。

――帯広に戻ってきた時、雪次郎はどんな思いだったのでしょうか?

やっぱり生まれ育った場所はよく覚えているから、すごく懐かしさを感じたのではないかと。実際に「雪月」(店舗)に入っていった瞬間「ああ、懐かしい」と、気持ちをぐちゃぐちゃにされたんです。「ここはなんて居心地がいいんだろう」と思い、やっぱりここは自分が帰ってくる場所なんだなと思いました。

――息子を見る雪之助さんの深い愛情が伝わってきました。

安田顕さんとのシーンは、脚本に「泣く」というようなことは書かれてなかったのですが、自然と涙が出てきました。とよばあちゃんも母ちゃんも「良かったよ」と言ってくれたんですが、そこでやっと少し認めてもらえたような気がしました。それは、自分、山田裕貴として認めてもらえた感じと、雪次郎として許してもらった感じが相まっていて、まるでパラレルワールドみたいでした。

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――常にひるむことなく、どんどん夢を追いかけていくなつとは対照的な流れですが、山田さんはどう感じましたか!?

『なつぞら』は開拓者の話ですが、実際になっちゃんはどんどん道を開拓していくんです。最初は(戦争で)家族を失ったなっちゃんですが、その後、家族ができていきます。上京してからもあまりくじけないし、成功していきます。逆に雪次郎はもともと家族がある家のひとり息子ですが、東京へ行ってからは開拓できずに、どんどん失敗していくんです。でも、最終的には、たとえそこで開拓できなくても、幸せになれるという構図になっていくのではないかと、僕は思っています。

――今回、朝ドラに初めて出演したことで、周りからどのような反響がありましたか!?

朝ドラはやはり、みなさんが注目してくださっていると感じました。ただ、僕の熱量はどの作品でも常に変わらないし、これまでもずっと頑張ってきたつもりです。それだけに、同じ熱量で頑張っているのに、こんなに違うのかと、ある意味、悲しくもなりましたが、もちろんたくさんの人に見てもらえる俳優になりたいとずっと思ってきたので、すごくうれしくもあります。

――山田さんは将来的にどんな俳優を目指されているのですか?

よく「朝ドラ、観てますよ」と言われるようになりましたが、きっと山田裕貴という名前を覚えてもらっているわけではないんだろうなと。今回もそうですが、役名の方が知れ渡っているんじゃないかと感じます。でも、実は役者にとって、それが一番いいことなんじゃないかと、僕自身は思っています。

――山田さんが目標にしている俳優はいますか?

僕が影響を受けた俳優はゲイリー・オールドマンです。『レオン』や「ハリー・ポッター」、「ダークナイト」シリーズなど、作品によって全く違うから、エンドロールを観て、あれ? この人、ゲイリー・オールドマンだったの? と、驚くこともあります。僕もそれくらい変貌できる役者になれたらいいなと思っています。

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■プロフィール
山田裕貴(やまだ・ゆうき)
1990年9月18日生まれ、愛知県出身。2011年、ドラマ『海賊戦隊ゴーカイジャー』で俳優デビュー。初主演の舞台『宮本武蔵(完全版)』で第24回読売演劇大賞優秀作品賞を受賞。近年の主な出演作に、映画『あゝ、荒野』、『万引き家族』、ドラマでは『ホリデイラブ』、『健康で文化的な最低限度の生活』、『特捜9』シリーズ、主演映画『あの頃、君を追いかけた』など。現在はドラマ『HiGH&LOW THE WORST EPISODE.0』に出演中。映画『HiGH&LOW THE WORST』が10月4日公開、舞台『終わりのない』が10月29日から上演、映画「『嘘八百』続編」が2020年新春公開予定。

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