『仮面ライダークウガ』(2000年)を第1作とする「平成仮面ライダーシリーズ」の記念すべき20作目となった『仮面ライダージオウ』(2018年)は、50年後の未来で"サイテーサイアクの魔王"と呼ばれる存在になるといわれている高校生・常磐ソウゴが、仮面ライダージオウとして運命に抗い、"最高最善の魔王"になるため戦う物語。ソウゴとは別の王を擁立しようと企むタイムジャッカーと戦いながら、歴代19人の平成仮面ライダーの力をもつライドウォッチを受け取り、その力を身に着けていく。

2018年9月から始まった『ジオウ』の物語も、いよいよクライマックスに突入しはじめている。そして2019年7月26日には、『ジオウ』の集大成ともいうべき映画『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』(監督:田崎竜太※田崎監督の崎は立つ崎が正式表記)が公開される。

  • 奥野壮(おくの・そう)。2000年生まれ。大阪府出身。男劇団 青山表参道Xのメンバー。2017年にジュノン・スーパーボーイ・コンテストでフォトジェニック賞と明色美顔ボーイ賞をダブル受賞。『仮面ライダージオウ』は初の連続ドラマ出演であり、初主演作でもある。撮影:宮川朋久

マイナビニュースでは『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』および『騎士竜戦隊リュウソウジャーTHE MOVIE タイムスリップ!恐竜パニック!!』の公開を記念して、両作品で活躍するキャストに特別インタビューを敢行。第1回目となる今回は、仮面ライダージオウ/常磐ソウゴを演じる奥野壮に登場してもらった。テレビシリーズの撮影開始から現在までで様々な経験を積み、役者としても人間としても大きく成長を遂げた奥野。『ジオウ』の1年間で培ってきたさまざまな経験や、劇場版にかける思い、共に過酷な撮影を乗り越えてきた共演者、スタッフへの感謝を語ってくれた。

――『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』の公開日が迫ってきました。映画を撮影しているときは、テレビシリーズのクライマックス時期と被っていて大変だと思いますが、奥野さんにとって「いま映画を撮っているんだなあ」と実感できるのはどんなときでしょうか?

今はまだテレビのほうの"結末"は僕たちもわからないですが、映画の台本はテレビとは異なる"エンディング"が描かれているところですね。また、映画はテレビと比べてもスケールの大きさが違います。歴史をさかのぼって織田信長のいた時代に行くシーンなども含め、映画のときは「いま僕たちは映画を撮っているな」と実感するんです。カットごとにモニターで映像をチェックするんですけれど、画面を観ても「おおっ、やっぱり映画だなあ」なんて思いますよ。大きなスクリーンで上映することを想定して画面作りが行われているからかもしれませんが、映画はいつものテレビと違う迫力が感じられると思います。

――ゴールデンウィークに開催された『ジオウ』のトークイベントで、奥野さんは最近「演技を勉強するため、とにかくテレビドラマや映画をたくさん観て刺激を受けている」と話していましたが、テレビと映画の違いをはっきり感じ取れるのはそういった"勉強"の成果かもしれませんね。

まだまだあやふやな見解なのかもしれませんが、感覚的にそういうのがわかるようになってきたのかな(笑)。

――最近ご覧になった映画の中で、特に面白かった、興味を惹きつけた作品はどんなものがありましたか。

『グリーンブック』は良かったですね。昔のアメリカを舞台に、人種差別をテーマにした骨太のメッセージが込められた映画でした。観ているときはボロボロ涙が出てきて、やっぱり映画はいいなあ、ハリウッドはすごいなあって感動しました。そういったメッセージ性の強い作品に、自分も出演してみたいなって思ったんです。あとは、『ボヘミアン・ラプソディ』ですね。伝説のロックバンドQUEENについては、兄が好きだったなあ、くらいにしか知らなかったのですが、映画を観た後はもう「フレディ・マーキュリーかっこいい!」なんて、感激してしまいました。実際のフレディを知らないのに、映像の中に"本物のフレディ"がいる!って思えたんです。主演のラミ・マレックさんのお芝居は、フレディの持つカリスマ性を再現していて、とても感銘を受けました。映画のあと、CDでQUEENの曲を積極的に聴いていますし、往年のQUEENライブ映像に興味を持つようになりました。

――奥野さん自身も『ジオウ』の撮影開始のころと現在とでは、お芝居に対する考え方が変わってきて、日に日に変化している自分自身を実感されているとのことでしたが、ソウゴとしてもゲイツ(明光院ゲイツ/仮面ライダーゲイツ、演:押田岳)との激しい対立を経て現在は大切な仲間同士になるなど、感情を高ぶらせるハイテンションの演技が増えましたね。

やりましたね! EP28「オレたちのゴール2019」でソウゴとゲイツが肩を組んで支え合うシーンなんてすごく気に入っていて、ゴールデンウィークのイベントでも「好きなシーン」として挙げさせていただきました。最近になって、自分の演技で"出したいもの"が出せている気がします。でも、最初のころから常に、自分の持つ"最大"のものを出していると思っています。決してすべてに満足しているわけではないですが、今いる場所で必ず精一杯のものを出していますし、出せるよう頑張っています。

――EP1、2のころに戻って、もう一度演技をやりなおしてみたい、なんて思われませんか?

もし戻れるのなら、ぜひもう一度演じ直してみたいですね。でも、最近はファンのみなさんに改めて、最初のEP1、2を観返してもらえたらいいな、という気持ちもあります。ちょっと前までは、観てほしくないなと思っていましたが、もう今になると「むしろ観てくれ!」と(笑)。それは、EP1、2のころから現在に至るまで、自分でも"成長"しているんだぞ、と自信を持って言うことができるからなんですよ。もう一度EP1、2を観ていただいて、それから最新の話を観てもらえたら、奥野はこんなに成長したんだなって、少しでも感じ取ってもらえるんじゃないかと……。今はもう、最終回まで残りわずかになってきましたが、残りの撮影でもう1段階、いや2段階……3段階くらいレベルアップをしていけたらいいですね。

――テレビシリーズの最終回を撮りおわるまでに、奥野さんがつかめるものはぜんぶつかんでおきたい、という感じでしょうか。

まさに、そういうことです(笑)。

――EP1、2を撮られた田崎監督も、劇場版インタビューで奥野さんの成長ぶりを称えていましたね。奥野さんから田崎監督に、何か"成長"をアピールできたと思えるシーンなんてありましたか?

あります! 映画の中で、ウォズに対してソウゴが激しい感情をぶつけるところがあるんです。台本上ではソウゴがずっと落ち込んで悲しそうにしているのですが、田崎監督は「ずっとソウゴの気持ちがローのままではシーンが盛り上がらない。どこかでグワッとテンションを上げたい。演出的に感情が盛り上がるところを作りたい」と言っていたんです。でも、台本のセリフのどこを盛り上げればいいか、見つからないと。そこで、僕が自分で「ここのセリフを変更して、こういう風に言えばどうですか。これが僕の中でいちばん自然で、しっくり来るのですが」と提案したら、監督が「よし、それで行こう!」と言ってくださったんです。自分で考えたセリフが監督から「いいね!」と言われたのは初めてで、すごくうれしかったです。本番でも、自分の言葉で話しているからこそ、とても自然にソウゴの感情を出すことができて、いいシーンになったと思いました。