――「仮面ライダーをぶっ倒す」という気構えで作ってきた『アマゾンズ』は、かつてないバイオレンス描写が強烈ではありましたが、それでも「敵と同じ力を身に着けた者が、異形の戦士となって戦う」という、仮面ライダーの根幹にあたる部分を描いていて、ある意味"正統派"もしくは"王道"の仮面ライダーと呼んでも問題ないですね。

それはあると思います。特にシーズン1の最終回(第13話)で、まったく立場の異なる仁と悠が最後に対決する場面を観ていただけると、『アマゾンズ』の"狙い"がはっきりわかると思います。最終話だと、仁が殺したアマゾンをガツガツ食べたり、ぶっ壊れた"変身"を見せたりしているので、一気に"ワル"みたいな感じになっていますけれど、仁は誰よりも人間を守ろうとしている男。一方で悠は一番人間らしい存在なのに、アマゾンを守りたいという……。対立する両者の構造が逆になっているんですね。あの最終回に至るまで、富との関係性も含めて芝居をするのがどんどん楽しくなっていきましたし、配信された直後にはいろいろな意見をいただきました。シーズン1の最終回から、シーズン2の第8話で再登場するあたりの仁の流れが、もっともノッていたときじゃなかったかな(笑)。

――ご自身で"伝説のヒモ・鷹山仁"と称しているほど、頼もしいヒーロー像からかけ離れた人物として仁を演じられている谷口さんから、改めて「仁を演じる楽しさ」および「仁という人物の魅力」を語るなら、どんな風になるでしょう。

仁を演じるにあたっては、観ている人に"違和感"を持ってもらうような、「この人普通じゃない」という印象を与えるような芝居をやってみたかったんです。怒っているときに、怒っている表情をしない。笑顔のまま怒りを表現する。どうやってこの感情をストレートでない形で表そうかと、いつも考えていました。

男というのは、女に弱くて、だらしなくて、何もできなくて……でもキメるときはキメる、というものだと思っています。仁には"いい色気、不思議な色気"を出すことができたらいいな、と思って芝居をしていました。七羽さんがいないと何もできない、何かというと怒られて謝ってばかりいるのに、仮面ライダーに変身したら強いという。このギャップがいいんですよね。仁というキャラクターを書いてくださった小林靖子さんには感謝しかないです。

ヒモなのに強いとか、ワルっぽく見えるのに人間の味方だとか、仁には"ギャップ萌え"の部分があるからこそ魅力的なんじゃないかなって思えるんです。ときどきTwitterで"鷹山仁"としてつぶやくと、多くの人たちがすぐに反応してくれます。あまり過激な言葉を使うと、Twitter社から怒られますけれど(笑)。僕自身、学生時代にヤンキー漫画とか、不良っぽいヒーローに憧れたりすることがありましたし、自分ができないようなこと、人からやっちゃダメと言われるようなことをやってくれる人――もちろん法に触れるようなことではないですよ(笑)――に魅力を感じる部分があるんだなって思います。

――もしも今後、仮面ライダーシリーズへのオファーが来て、鷹山仁ではない別の役柄で出演するとしたら、どんな人物を演じてみたいですか?

難しいですね……。できれば鷹山仁以外は演じたくはないんですけれど。今は仁と違う仮面ライダーなんて、想像できないですね。どうせなら、鷹山仁として時系列をさかのぼり、七羽さんと出逢ったころの物語とか、アマゾンアルファ誕生を描く「エピソード0(ゼロ)」的な作品だったら、ぜひ出てみたいですね。これから先、ふたたび鷹山仁を演じるチャンスがゼロではない以上、他の役柄で仮面ライダーに出るのはちょっと考えたくないかな。あえて別の仮面ライダーをやるのなら、アマゾンアルファとは正反対の、めっちゃ正統派の仮面ライダーとして出てくるのはどうかな。似合うかどうかは別として(笑)。複雑なポーズで変身して、専用バイクにちゃんと乗って、武器をたくさん使う仮面ライダー。『アマゾンズ』でやっていなかったことを全部こなす仮面ライダーなら、ちょっと興味があります(笑)。

(C)石森プロ・東映