「大人のための変身ベルト」をコンセプトに開発されたバンダイの「COMPLETE SELECTION MODIFICATION(CSM)」の第24弾が、2016年からAmazonプライム・ビデオで配信が始まった特撮ドラマ『仮面ライダーアマゾンズ』より、アマゾンアルファ、アマゾンオメガ、アマゾンシグマの共通変身ベルト「アマゾンズドライバー」に決定し、大きな話題を呼んでいる。

  • 谷口賢志(たにぐちまさし)。1977年生まれ。東京都出身。 『救急戦隊ゴーゴーファイブ』(1999年)ゴーブルー/巽流水(ナガレ)役でデビュー。俳優、モデルとして活動し、W主演映画「どうしても触れたくない」外川陽介役や舞台「文豪ストレイドッグス 黒の時代」織田作之助役、「ジョーカー・ゲーム」結城中佐役、ヨウジヤマモト GroundY/s’yteの広告モデルなどを務める。2016年アマゾン・プライムビデオ配信作品『仮面ライダーアマゾンズ』鷹山仁/アマゾンアルファ役に抜てき。撮影:大塚素久(SYASYA)

『仮面ライダーアマゾンズ』とは、Amazonプライム・ビデオにて2016年4月から全13話(Season1)、2017年4月7日から全13話(Season2)を配信した連続ドラマシリーズで、2018年5月には"完結編"というべき劇場版『仮面ライダーアマゾンズ THE MOVIE最後ノ審判』が公開された。

このシリーズでは、人間社会に潜む危険な人工生命「アマゾン」をめぐって戦いを繰り広げるさまざまな登場人物の激しいぶつかり合いを描き、人が"生きる"とはどういうことか、人の"命"はどうして大切なのかといった根源的なテーマと熱き人間ドラマが追求されている。その中で、テレビ地上波はとてもオンエアできないような強烈すぎるバイオレンス描写や、刺激的なハードアクションも展開。1974年に放送された『仮面ライダーアマゾン』を"原典"として、「仮面ライダー」シリーズが本来持っていた"怪奇・恐怖"の世界の再構築が試みられている。

劇場版『最後ノ審判』から1年、鷹山仁という最高の役柄に出逢えたことを「今でも感謝している」と語る谷口に、改めて『アマゾンズ』に没頭した3年間の日々をふりかえってもらい、とめどもなく出てくる"忘れ得ぬエピソード"の数々や、共演者、スタッフへの思いを語ってもらった。

――『仮面ライダーアマゾンズ』の物語は昨年の劇場版『最後ノ審判』で完結しましたが、今回の「CSMアマゾンズドライバー」商品化のように、今なお『アマゾンズ』への関心が強くあることに対して、谷口さんはどのように思われていますか? そして『アマゾンズ』で仁を演じてきた3年間を改めてふりかえり、どんなお気持ちでいますか?

作品としてはもう終わっていますけれど、イベントがあったり、こういった商品が出たりしたとき、『アマゾンズ』、および鷹山仁をみんなが好きでいてくれていることがわかって、なんて俺は幸せな状況を生きているんだ、と思います。

鷹山仁を演じていたときは楽しすぎて……演じるというより、"仁という人生を生きている"ことが楽しすぎて、谷口賢志で生活する日常のほうがつまらなくなってしまうくらいでした。『アマゾンズ』をやっていた3年間は、本当に幸せな時間だった。撮影現場のスタッフの方たちは全員が、この作品を良くしよう、面白くしようと考えて、どんな辛さも厭わず全力でやってくれました。監督やプロデューサーも、「お前がやりたいように、好きなこと全部やっていいよ」と。それはもう幸せすぎる日々でした。

――やはりそこには、全力で役に挑んだ谷口さんの熱意による影響も大きかったんだと思います。しかしそれだけに、劇場版で『アマゾンズ』の、鷹山仁の物語が"完結"したときは、寂しさを感じたりしたのではないですか。

3年間ずっと鷹山仁のことを考えていたような気がします。終わってからも、正直"終わった"とあまり思えなかったんです。しかし、仕事はやっていかなければならないし、他の役も演じます。もちろんどんな役でも真剣に考えて楽しく取り組んでいましたが、心のどこかに『アマゾンズ』という作品が残っているんですよ。

日曜日の朝にやっている仮面ライダーは、年月が過ぎると新しい作品に替わっていくんですけれど、『アマゾンズ』はずっと残っていて、Amazonプライム・ビデオで今も配信していますよね。そうすると「まだあるよな。アマゾンズ」って思いますし、Twitterでも「鷹山仁さん、アマゾンズ観てます」みたいなコメントがいまだにあると、なかなか消えづらいものがあります。

劇場版から1年が過ぎて、"アマゾンズロス"というか、あのときは楽しかったな、終わって悲しいなという思いがようやく無くなったんですけれど、僕自身が鷹山仁だという感覚だけは、ずっと残っているんです。だから、みなさんに"しつこいな"って思われない程度に(笑)、鷹山仁として何かを発信することができたらいいなと思っています。僕の中にある鷹山仁は永遠不滅のものになりました。その点『アマゾンズ』をやる前と後では、役者としての感覚が違ってきているのかもしれません。

――東映の白倉伸一郎プロデューサーにとっても『アマゾンズ』はいろいろな意味で"攻めた"作品だったそうですが、最初のころ谷口さんが白倉さんに言われた言葉には、どんなものがありましたか?

いちばん印象に残っている言葉が、僕や(藤田)富との顔合わせのとき、白倉さんが言った「今までの仮面ライダーを全員ぶっ倒す。そのために君たちを選んだ。すべては君たちにかかっている」という言葉でした。これを聞いたとき、俺はなんて幸せな現場に来ることができたんだ、と思いましたし、みんなで「いける!」と気合いが入りました。

白倉さんは続けて「この作品を"仮面ライダー"だと思わないでください。普通のお芝居だと思って、全力で役のことだけを考えてください。仮面ライダーに出たから他のドラマにも出て、人気が出て……とかは考えないでほしい」とも言っていたんです。よくTwitterで僕の発言が炎上とか凍結とかしているように見えますけれど、一番"炎上"を呼ぶ発言をするのは白倉さんなんですよ。制作発表会見で「最近の仮面ライダー、面白いですか?」と言ったり、「牙がありませんよね」なんて言ったり。東映の偉い人がそんなことを言うのか……と衝撃を受けましたからね(笑)。でも、そんな白倉さんの発言に背中を押されるかたちで、僕たちキャストや撮影スタッフが全力を出せたわけだし、みんな現場で切磋琢磨して、良いものを作ろうと頑張ることができたんだと思っています。

――シーズン1、2、劇場版とすべてに携わられた石田秀範監督も「アマゾンズは自分にとって最高の作品だった」と話していますね。本作の演出陣のみなさんや脚本の小林靖子さんも、『アマゾンズ』には並々ならぬ力が入れられていたと感じました。

シーズン1のときの石田監督は、『アマゾンズ』の骨組みを作り上げた人。最初に僕が演じた鷹山仁の芝居を、「それはつまらない」と指摘していただいたので、じゃあどんどん違う演技をやっていこうとして、だんだんと役が固まっていった感じがありました。

シーズン2での仁は、第8話からの登場で、これを撮ってくださったのが田崎(竜太※田崎監督の崎は立つ崎が正式表記)監督でした。「シーズン2の後半から、ようやく現れたお前(仁)を、最高の状態で視聴者のみなさんのもとへ届けるぞ!」という意気込みで、撮影現場でもかなり粘って、夕景のロケーションなどにこだわってくださいました。田崎監督からは芝居について何か言われたことはないですけれど「谷口、今回お前はブレーキ踏まないでいいから、行けるところまでぶっ壊れてくれ」って、いわばお墨付きをもらったので、そのおかげで思いっきりやることができました。

脚本を書かれた小林靖子さんとは、20年前に『救急戦隊ゴーゴーファイブ』(1999年)という作品でレギュラー(ゴーブルー/巽ナガレ役)入りしていたころから知り合っていて、お酒やご飯をご一緒する機会もありました。あの人は俳優に対して何か注文をつける脚本家ではないのですが、やっている間、ところどころでアドバイスというかエールをくれるんです。何より、僕が出ていた芝居を観てくれて「いいじゃん」とメールをくれたりします。そういう風に見てくれるのが、僕にとってすごく自信につながって、靖子さんが書かれる鷹山仁を自分もアクセル全開で突っ走ろうと思えたんです。