働く女性は、特に生理前後の身体の不調など、体調の変化を敏感に感じることが多いだろう。しかし、婦人科の病気は自覚症状がないことも少なくないため、気づいたときには進行しているケースもある。

そんな婦人科の病気のひとつである子宮頸管ポリープの症状と治療法について、産婦人科専門医の船曳美也子医師にうかがった。

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    子宮頸管ポリープの症状と治療法を専門医が解説

子宮頸管ポリープとは

子宮頸管ポリープとは、子宮頸管(子宮頸部にあり、体部に通じる穴)の粘膜の一部が大きくなった良性の腫瘍を指す。そもそもポリープとは、粘膜(上皮細胞)に覆われた管腔臓器に発生する隆起性病変の総称。健康診断を受け、「大腸にポリープあり」などの結果が出た経験がある人も少なくないはずだ。

子宮は外側の筋肉と内側の粘膜でできており、妊娠時に伸びて大きくなる体部(風船でいえば膨らむ場所)と、入り口にあり、伸びにくく硬い頸部(風船でいえば口の部分)に分かれている。子宮にできるポリープは子宮頸管ポリープと子宮内膜ポリープに分けられるが、その大半は前者だという。

子宮頸管は1~3ミリだが、その経管の粘膜の一部が細い茎のように伸びて、先に大きめの粘膜の塊がついたものが頸管ポリープとなる。通常1個で数ミリ、50%以上は1センチ未満だが、複数個できたり、3cmを超えたりするものもあるとのこと。

子宮頸管ポリープは成人女性の2~5%に見られる疾患であり、「無症状で子宮がん検診に来られた方の約3%に認められたという報告があります。40代女性に最も多いとされていますが、幅広い年齢層に見られ、再発も多く見られます」(船曳医師)。

子宮頸管ポリープの症状

子宮頸管ポリープの原因については、局所の炎症や女性ホルモンとの関係性が指摘されているが、はっきりとはわかっていない。症状も、痛みが出ずに無症状である場合がほとんどだが、出血や茶色の帯下(おりもの)が出るケースがあるという。

「ポリープができても、頸管内にとどまっているときは見えません。大きくなったり、たまたま膣に近いところにできたりしたものが子宮頸管から膣部に出てきて初めて、子宮がん検診や妊婦健診で見つかります。子宮頸管ポリープは粘膜でできており、柔らかい組織なので、『性交渉などでこすれる」『激しい運動などで刺激が加わる』『細菌感染で炎症を起こす』などの場合に出血したり、茶色の帯下として自覚されたりします」

子宮頸管ポリープの検査方法と治療法

子宮頸管ポリープの検査は、内診時における子宮膣部の視診のみで診断するが、良性かどうかの確定診断は、組織の一部を採取して調べる組織診にて行う。子宮頸管ポリープ切除術を行い、病理組織検査に提出すると、1~2週間で良性か悪性かの結果が出るとのこと。また、ポリープによる出血や分泌物があるケースでも切除術による治療を施す。

「子宮頸管ポリープ切除術は痛みもなく、比較的簡単にねじり取れることが多いです。切除後、数日は少量の出血があるかもしれません。大きいサイズのポリープですと局所麻酔が必要だったり、その後の出血が多かったりする可能性もあります。基本的に良性の疾患ですが、0.1%の確率で局所的に悪性が見られる報告があります」

無症状でサイズが小さければ経過観察することもあるが、自覚症状があったり1cm以上の大きさだったりする場合は、基本的に切除して検査するという。

子宮頸管ポリープの妊娠への影響

妊娠中の人は、子宮頸管ポリープを切除するか否かが心配になるはず。ただ、妊娠時における対応は医師によって異なるようだ。

「妊娠中のポリープ切除は、非妊時より出血しやすく、流産や破水のきっかけになる恐れがあるので、やめたほうがいいとする慎重論と、子宮頸管ポリープそのものが妊娠中の出血と、感染や感染にともなう流産や破水の原因になるから、積極的に取ったほうがいいとする積極論があります」

ポリープを取ったから早産が減ったという報告はないようだが、妊娠中のポリープ切除は、症状や大きさを含めて、担当医と相談して検討するのがよいだろう。

子宮頸管ポリープを予防するのに効果的な方法

子宮頸管ポリープを予防するの方法は特になく、「症状がなければ検診でしか見つかりませんので、2年ごとの子宮がん検診は受けるようにしましょう」と船曳医師は話す。

不正出血やいつもと違う帯下を見逃さないように注意し、検診を忘れずに受けて早期の発見につなげるようにしよう。

※写真と本文は関係ありません

取材協力: 船曳美也子(フナビキ・ミヤコ)

1983年 神戸大学文学部心理学科卒業、1991年 兵庫医科大学卒業。産婦人科専門医、生殖医療専門医。肥満医学会会員。医療法人オーク会勤務。不妊治療を中心に現場で多くの女性の悩みに耳を傾け、肥満による不妊と出産のリスク回避のために考案したオーク式ダイエットは一般的なダイエット法としても人気を高める。自らも2度目の結婚、43歳で妊娠、出産という経験を持つ。2014年、健康な女性の凍結卵子による妊娠に成功。出産に至ったのは国内初とされる。著書に、「婚活」「妊活」など女性の人生の描き方を提案する著書「女性の人生ゲームで勝つ方法」(2013年、主婦の友社)、女性の身体について正しい知識を知ってもらえるよう執筆した「あなたも知らない女のカラダ―希望を叶える性の話」(2017年、講談社)がある。En女医会にも所属している。

En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。