俳優の木村拓哉が、フジテレビ開局60周年特別企画ドラマ『教場(きょうじょう)』(2020年新春、2夜連続放送)で主演を務めることが2日、分かった。

『教場』に主演する木村拓哉

このドラマは、長岡弘樹氏の同名小説を、『踊る大捜査線』の君塚良一氏の脚本で初めて映像化するもの。木村と『若者のすべて』(94年)、『眠れる森』(98年)、『プライド』(04年)などで仕事をしてきた中江功氏がメガホンをとる。

今回木村が演じるのは、警察学校のカリスマ教官・風間公親(かざまきみちか)。極限状態を生き抜く生徒それぞれのよこしまな思惑を監察力に長けた教官が暴いていくミステリーで、過酷な警察学校で覚せいしていく生徒たちの青春物語や、厳格なカリスマ教師が個性あふれる生徒たちとガチンコで向き合う人間教育も描かれる。

厳しすぎる規律、守れなかった際の厳罰制度、絶対服従の上下関係などをリアルな描写し、体罰問題、働き方改革といった世論が高まる昨今の社会に一石を投じる作品だ。

木村は、脚本ができていない段階から実際の警察学校へ視察に訪れ、本物の「教場」を目の当たりにし、プロデューサーや監督と細かい設定や過去などを話し合い、脚色を加え、原作とはまた違う“風間像”をスタッフとともに作り上げているという。

さらに、警察学校の所作訓練にも積極的に参加し、生徒役のキャストと共に厳しい訓練と向き合った。生徒役のキャストに対し、木村は「訓練を重ね、制服に袖を通すたびに、皆さんそれぞれ役における軸を確立していっていると感じます」と語り、生徒役のキャストとは訓練を超えて、積極的にコミュニケーションを図っている。

一方で、「風間という役は、生徒の立場からすると“睨まれたら終わり”というような、できれば距離を取りたいキャラクターなので、現場では、アンテナを張って間合いを取る必要があると思っています」とコメント。先日のクランクインでは、「一刻も早く撮影したかったので、ようやくゲートが開いて前に進むことができるという思いです。久々にご一緒するスタッフや監督ともハイタッチさせていただいて撮影開始したのですが、非常に心地良い緊張感の中で現場がスタートしたので、すごく楽しいです」と、気合十分で撮影に臨んでいる。

原作の長岡氏は「主人公である教官、風間を造形するにあたり、最も心掛けたことは、その正体を誰も知らない謎めいた人物にする、ということでした。原作者である私にも、彼について未知の部分がまだいろいろあります。このキャラクターが、日本中で知らない人がいない俳優・木村拓哉さんの強烈な存在感で演じられたとき、画面の中でどれほど予想を超えた化学反応が起きるのか。いまから楽しみでなりません」と期待をコメント。

脚本の君塚氏は「木村さんのドラマが好きで、いつか一緒に作りたいなと思っていました。楽しみです。木村さん演じる教官は、容赦しないやり方で生徒を厳しく育てます。体罰でなく、熱血でもない。彼の教え方は、これからの教師とは何かを示すでしょう」と話す。

そして、西坂瑞城プロデューサーは「キャスト・スタッフの熱い思いを結集して、目が離せないエンタテインメント作品に仕上げるべく、全力を尽くします。2020年新春、皆さまには新米警察官になったつもりでハラハラドキドキの“風間教場”に身を投じ、極限状態の世界を思いっきり堪能していただければと思います」と呼びかけている。

■演じる役は「非常に魅力ある人物像」

クランクイン前の木村への一問一答は、以下のとおり。

――今作の出演オファーを聞いていかがでしたか?

警察という組織を描いている作品は数多くあるのですが、今作は内容が非常に刺激的だと思いました。警察という機関の根っこの部分、警察官になってからではなく警察官になるまでの話を描いており、色々なエピソードを盛り込んでいるので、その着眼点もすごく面白いなと思いましたし、やりがいも感じました。クランクインするずいぶん前から、すぐ10分後にでも撮影を始めたいという気持ちでいました(笑)。共演者の方々の今作への熱も感じていますし、とても楽しみです。また、中江功監督という存在は自分にとっては教官に近い存在なので、再び共同作業ができることを非常にうれしく思います。

――脚本を読まれていかがでしたか?

原作がある作品ではありますが、脚本はそれをスマートにかつ、君塚さんならではの肉付けをしていただきました。原作も読みやすいのですが、脚本も非常に読みやすかったです。原作、脚本どちらも読み物として面白いので、逆に具現化するのは非常にハードルが高いなとも思いました。

――ご自身の役どころについて、どのように捉えていますか?

風間は非常に動物的な感覚を持っていると感じました。今の世の中の方針とは真逆だとは思うのですが、肉体的にも精神的にもすごく相手に対して間合いを詰めた状態で教育・指導していく人です。教官という立場ながら退校届をすぐに生徒につきつけるというというのがひとつのポーズとしてあるのですが、警官を育成していくという点では一切手を抜いてない。キャラクターとしては非常に魅力ある人物像だと思います。

――役作りについて、事前にやったことなどありますか?

監督と実際の警察学校の見学に行かせていただいたり、話し合いをしたりする中、原作から脚本にする段階で、風間の置かれている状況や経験した過去の部分で新たに脚色をさせていただいたところがあり、風間というキャラクターを自分なりに掘り下げながら、みんなで一緒に作り上げているつもりです。脚本はすでにでき上がっていますが、撮影する現場において、いらないものはどんどん削っていくでしょうし、必要なものはどんどん足していくことになると思います。それはきっと、現場で人と人が対峙(たいじ)したときに発せられるモノから作りあげられるモノなのだと思います。

――個人的に注目のシーンは?

もうありすぎて…(笑)。非常に中身が濃くて、いろいろなエピソードがあるのでどれも楽しみです。所作指導で少し動いただけで、普段全く使っていない筋力・エネルギーが必要なのだと体感しました。街で見かける交番に勤務されている方や、道路で笛を吹いて旗を振ってくださっている方など、僕らが普段目にしている、お世話になっているあの方たちもみんなここ(教場)を通っていますからね。そういう不思議な感覚があります。フィクションではありますが、警察の方々が通ってきた場所を僕らで今、作っているというのが非常に責任も感じるし、楽しみでもあります。

――武道場での剣道シーンがありますが…。

剣道をドラマの中でやるのは初めてです。剣道は経験があるので、いろいろな経験が今になって生きるのだと思いました。

――視聴者にメッセージをお願いします。

おそらく見たことのない、味わったことのない作品になると思うので驚く方が多いのではないかと思います。作る側としては、僕らの責務として全力で作品を作るしかないので、楽しみに待っていていただけたら、と思います。

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