渡部愛女流王位に里見香奈女流四冠が挑戦する第30期女流王位戦五番勝負第3局が29日、福岡県飯塚市「旧伊藤伝右衛門邸」で行われ、里見女流四冠が勝ってシリーズ成績を2勝1敗としました。

五冠復帰&クイーン王位に前進

里見女流四冠(※写真は5月14日、第12期マイナビ女子オープン五番勝負第3局より)

対局は先手の里見女流四冠が三間飛車を採用。渡部女流王位は流行の最先端「エルモ囲い」(※コンピュータソフト「elmo」が得意とする構え)の布陣を敷き急戦を仕掛けました。中盤の押し引きが長く続きましたが、女流棋界第一人者・里見女流四冠と、前期本棋戦でその第一人者からタイトルを奪った渡部女流王位の戦いらしくどちらも崩れず、大熱戦となりました。

終盤に差し掛かる前に相手の角を捕獲した里見女流四冠が若干抜け出しましたが、渡部女流王位も勝負手で迫り再び形勢は混沌。しかし、両者持ち時間が少ない中、最後に勝利の糸をたぐり寄せたのは里見女流四冠でした。総手数149手、何度でも大熱戦と讃えたくなるような好局でした。

この勝利で、里見女流四冠は女流王位への復位まであと1勝となりました。それに加え、前期本棋戦で崩れた女流五冠への復帰、そして女流王位獲得通算5期で許される永世称号「クイーン王位」も見えてきました。女流棋界において永世称号を最も多く持つのは清水市代女流六段で、クイーン名人、クイーン王位、クイーン王将、クイーン倉敷藤花の4つ。里見女流四冠はクイーン女流王位以外の3つはすでに許されていて、奪取なら偉大な先輩に並ぶことになります。

一方、日本女子プロ将棋協会初のタイトル保持者・渡部女流王位はカド番に立たされました。第4局は6月13日、徳島市「ホテルクレメント徳島」で行われますが、ここは前期五番勝負でも第4局が行われた場所。渡部女流王位にとっては2勝1敗で迎えたこの対局に勝ってタイトル初戴冠を果たした歓喜の地でもあります。地の利、先手番の利を生かしてタイに戻せるか。

これまで3局を通じて渡部女流王位の居飛車vs里見女流四冠の振り飛車、「対抗形」の濃密な戦いが繰り広げられているこの五番勝負。第4局も熱戦になること必至です。