佐藤天彦名人に豊島将之二冠が挑戦する第77期名人戦七番勝負第1局が4月10、11日の両日、東京都文京区「ホテル椿山荘東京」で行われます。同所で名人戦第1局が行われるのは第66期以来12期連続です。

佐藤名人は1988年1月16日生まれの31歳、豊島二冠は1990年4月30日生まれの28歳。年齢は佐藤名人が少し上ですが、両者は奨励会三段リーグの在籍が4期かぶっている10代の頃からのライバルです。

ライバル対決は4月10日の第1局でスタート

  • 佐藤名人(右)は連続4期目、豊島は初の名人獲得を目指す

三段リーグは在籍者が半年を掛けそれぞれ18局を戦い、上位2名が四段昇段・プロとなります。公式戦の順位戦と同様に、リーグを終えて同星の三段が複数いる場合は、前回の成績によって決められた順位が上の三段が優遇されます。また、次点(3位)を2回取ると、フリークラス(※公式戦で定められた条件を満たさないと順位戦に参加できない四段)としてプロ入りする権利を得ます。

佐藤名人は14歳当時、2002年度後期の第32回で三段リーグに初参戦。第34期に昇段者と同星ながら惜しくも3位となり次点を獲得します。そして次回第35回にも次点を獲得し、次点2回によるプロ入りの権利を得ましたが、佐藤三段は何とこれを行使せず三段リーグに留まる選択をしたのです。後にも先にも次点を獲得した三段が権利を行使しなかったケースはこの1件となっています。

こうして佐藤三段は2回連続となる「順位1位」で第36回に参加することになりましたが、この回に新加入したのが14歳の豊島二冠でした。翌第37回には直接対決が組まれ、先輩が貫禄を示しています。

そして2006年度前期の第39回、ドラマがありました。順位2位の佐藤三段が12勝4敗、順位4位の豊島三段が13勝3敗で迎えた大詰めの17回戦、佐藤vs豊島の直接対決――

結果は佐藤三段が勝ち、土壇場で両者13勝4敗となりました。最終18回戦は両者勝ち14勝4敗でリーグを終えましたが、佐藤三段が2位でプロ入り決定、豊島三段は次点…。佐藤三段が第34回で経験したように、豊島三段もまた、順位の差に泣いたのです。

惜しかった豊島三段。しかし次回2006年度後期、順位1位で参加した第40回でまたも14勝4敗の好成績を挙げ、今度は文句なしの1位でプロの座を勝ち取りました。

プロ入り後も2011年度の第42回新人王戦決勝三番勝負(佐藤2-1で優勝)、2015年度には第86期棋聖戦と第63期王座戦の挑戦者決定戦(前者は豊島、後者は佐藤が挑戦権獲得)、2016年度には第37回JT将棋日本シリーズ決勝(豊島優勝)で相まみえるなど要所でぶつかっていて、長年のライバルと呼ぶにふさわしい両者。順位戦の昇級を含めた名人をめぐる争いでは先輩・佐藤名人が少しずつ上を歩んでいましたが、今期ついに、後輩・豊島二冠が名人の背中をとらえたのです。

名人連続3期、安定感の光る佐藤名人が永世名人(通算5期)への礎を築くか。2018年度に棋聖、王位を獲得し波に乗る豊島二冠が一気三冠獲りを果たすか。もはや春の風物詩とも言える「椿山荘決戦」で、楽しみなシリーズが始まります。