もともと心当たりがある場合や多少背伸びをした計画の場合は別でしょうが、コツコツ準備し、いよいよ住宅取得を決めたところ、「住宅ローンの審査にパスしなかった」という事態は青天の霹靂でしょう。金融機関は詳しい理由は教えてくれないかもしれません。

  • 住宅ローンの審査に通らなかった! ……なぜ?

    住宅ローンの審査に通らなかった! ……なぜ?

それでも住宅取得は重要なものであり、ローンを抱えるというリスクはあっても、同時に人生設計上リスク回避にもなる面も持ち合わせています。これから住まいを取得しようと考えている人、実際に審査を通らなかった人には、どのような問題が考えられるのでしょうか。

住宅ローン審査の流れ

住宅ローン審査にはいくつかの段階があります。

住宅ローン事前申し込み

最初にどこで借り入れるのかを考える必要があります。日頃から取引のある銀行が何かと便利です。何らかの特典が設けられているケースもあり、毎年貯金が堅実に増えているなどの人となりも銀行は把握できます。後々のことを考えれば、新しく購入したり建築したりする住所の最寄りに支店があればベストです。また購入マンションがメインの銀行として指定している場合や住宅メーカーが紹介してくれるケースもあります。

大切なことは、必要な情報を正確に伝えることです。有利になるように情報提供して本審査にパスしなければ、それまでの動きが無駄になります。

最終的に審査が通らなければ、売買契約等は白紙に戻す特約があるのが普通ですので、その点は心配ありませんが、相当なエネルギーの消耗となりますし、信用も失いかねません。事前審査の申し込みの前に、おおよその借りられる金額の一般的基準を相談してもよいでしょう。一般的な回答にはなりますが、いくら借り入れられるかによっては購入価格や建設費が変わってきます。

事前審査

どのような物件を購入予定で、価格はいくらか、住宅の建築の場合は建物の見積金額や土地の所有形態など、物件の担保価値を確認します。また、勤務先や勤続年数、年収、自己資金はいくら用意しているか、住宅ローンはいくら借りたいか、返済期間などを伝えます。その人の返済能力や計画の健全性がチェックされます。

その銀行が審査を行い、審査には1週間程度かかります。金融機関には年収に応じた年間の返済金額に一応の規定はあります。ただし、担保価値と返済能力があると判断された場合には、規定を超えて融資されるケースがないわけではありません。その逆もあるでしょう。

住宅ローン申し込み

購入物件や建設計画も確定し、いよいよ実際の計画に基づいた借り入れの申し込みをします。

本審査

審査は信用保証会社等が行い、2週間程度審査にかかります。事前審査以降にクレジットの滞納などがあると本審査に通らないケースも考えられます。スマホの料金滞納やDVDの返却日を過ぎてしまったなども情報として登録されているかもしれません。住宅を取得しようと思ったら、日ごろの緻密な管理が求められます。

住宅ローン契約

住宅ローンの金利などはこの時の金利が適用されます。最初の事前審査や本審査の時から金利が変更になっている場合もあることを考慮しておいてください。完成している物件の場合は問題ありませんが、建設する場合などは着工金や中間金の支払いのためにつなぎ融資が必要な時もあります。

審査項目と重要度

国土交通省の『民間住宅ローンの実態調査報告書(平成29年)』によると、民間金融機関等が住宅ローンの審査を行うにあたって、重要視する項目の内90%を超える項目は「完済時の年齢」「健康状態」「借入時年齢」「担保評価」「年収」「連帯保証」「勤続年数」のようなものがあります。

  • 住宅ローン融資を行う際に考慮する項目 (C)佐藤章子

    住宅ローン融資を行う際に考慮する項目 (C)佐藤章子

審査に通らない人の特徴

上記の一般的な審査項目の他に、審査に影響するものはどのようなものがあるでしょうか。

収入が不安定とみなされるケース

個人事業主、契約社員、派遣社員のほか、勤続年数が短い方、転職を頻繁に繰り返している方、自分で会社を立ち上げてまだ1~2年目で赤字決算という方などが考えられます。以前は勤続年数5年必要と言われましたが、現在は2年程度が目安のようです。

クレジットカードの滞納

滞納記録が残っていると住宅ローンがパスしないかもしれません。過去に滞納した経緯がある場合は、クレジット会社や信販会社が登録している信用情報機関に自分の個人信用情報を請求し確認しておきましょう。住宅取得には、頭金確保のための堅実な貯蓄額の増加だけでなく、カードの管理にも注意しましょう。キャッシング枠は要注意です。

他のローンがある

車のローンや奨学金の返済、その他のローンなどがあると審査がパスしないか、減額される可能性があります。

数千万円の費用を投資し、数十年間にわたって住宅ローンを返済し続けていく住宅取得を簡単に考えてよいはずはありません。

もし審査に通らなかったとすれば、「今までコツコツ貯金をしてこなかった」「何かしらの支払いを滞納してしまつた」、「収入などの条件に照らし合わせて無理な計画であった」など、生活設計が甘い部分を持ち合わせているということであり、そうしたことを改善しないで安易に住宅取得を考えるのは危険です。この機会に生活を見直して時間をかけて住宅取得に臨むことをお勧めします。

とはいっても凡ミスは誰にでもあることです。心当たりがある場合は、正直にそのことを表明して、行っている対策などを説明するとよいでしょう。ミスをまったく犯さない人はありません。最終的には金融機関はその人となりを判断しますので、きちんと返していけることをしっかり伝えられることが大切です。

■著者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。