大東建託は2月20日、首都圏の居住満足度調査を取りまとめた「いい部屋ネット 街の住みここちランキング2019 <首都圏版>」を発表した。さまざまな住みたい街ランキング調査が行われているが、居住者の感想を大規模に調査したものは少ない。「実際に住んでいる人の評価を参考に住まいを選びたい」というニーズを満たした今回の調査は、住環境を測る大きな指針になるだろう。

  • 「街の住みここちランキング2019 」総合、穴場ランキング上位となった北山田駅

平成最大級の大規模本格調査を実施

今回の居住満足度調査は、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)145自治体、1224駅を対象に行われた。回答者数は昨年10月の事前調査、12月の本調査を合わせて6万1319名となり、各自治体の人口比を基本に割り付けている。近接した2駅が存在している場合はグループ化(記号:G)、隣接駅が3つ以上ある場合はエリア化(記号:A)されており、回答を得られたのは1098駅。このうち30名以上の回答があった580駅を調査対象としている。

主な調査内容は、住んでいる人から見た街(駅)と行政区の評価「住みここち」、住んでいない人から見た行政区評価、住みたい街(駅)の3点。この他、よく遊びに行く街(駅)の調査結果や、穴場の街(駅)とした結果も公開されているため、多方面から街の魅力を確認できる。

  • 発表を行った大東建託株式会社 賃貸未来研究所の宗健 所長

住みここちランキング総合1位は東京都「広尾」

「街(駅)の住みここちランキング」では、全55項目の設問に対し「大変満足」「 満足」「どちらでもない」「不満」「大変不満」という選択肢を用意し、それぞれに「+2」~「-2」の評点をつけ、その平均値を比較している。

街(駅)の住みここちランキング総合1位となったのは、六本木と恵比寿の間に位置し渋谷にも近い、東京都「広尾」。大きな公園や病院があり、商店街や飲食店も充実している広尾は、交通や生活の利便性、街のイメージや治安、静かさや親しみやすさなどがバランスよく評価された。

  • 街(駅)の住みここち総合ランキング

2位は、堀をはさんで防衛省、靖国神社や千鳥ヶ淵などが存在する、東京都「市ケ谷」。駅はこじんまりとしているものの、周辺には飲食店が充実し、大通りから一歩入れば静かなエリア。交通の便が良く、治安が良好なことも高評価につながった。

3位、横浜市営地下鉄グリーンラインの、神奈川県「北山田」。あまり耳慣れない駅だが、東急・目黒線日吉駅まで4駅10分ほどで到着する郊外住宅地だ。駅から住宅地が近く、それでいて整備された公園や量販店も充実。交通や生活の利便性やイメージ、静さや治安の良さによって高評価を得た。

以降、4位に東京都「南阿佐ヶ谷」、5位に千葉県「柏の葉キャンパス」、6位に東京都「恵比寿」、7位に神奈川県「江田」、8位に東京都「築地A」、9位に東京都「都立大学」、10位に東京都「後楽園G」と続く。

「住んでいる人から見た行政区評価」も同様の方法で調査され、回答数10名以上の自治体を調査対象とした。1位「中央区」、2位「文京区」、3位「千代田区」、4位「渋谷区」、5位「港区」となる。だが街(駅)と市区町村では広さが違うため、あくまで参考データと考えるべきだろう。

  • 行政区の住みここち総合ランキングTOP100

住みたい街1位は「今住んでいる街」

「住んでいない人から見た行政区評価」は、現在居住していない行政区をランダムに表示し、「そう思う」「どちらでもない」「そうは思わない」「わからない」という選択肢を用意、それぞれに「+1」~「-1」、「null」の評点をつけ、回答数10名以上の自治体について平均値を比較している。

住んでいる人から見た行政区評価ランキングは、1位に「世田谷区」、2位「目黒区」、3位「横浜市青葉区」、4位「国立市」、5位「港区」となるが、そもそも住んでいない場所について質問されても漠然としたイメージでしか答えることはできないため、こちらも参考データといえるだろう。

「住みたい街(駅)」はフリーワードで3つの駅(街)名を入力する方式で調査され、得票率でランキングされた。1位はダントツで「今住んでいる街」(31.6%)、2位は「特にない」(11.2%)、3位は「吉祥寺」(3.5%)、4位は「横浜」(2.2%)、5位は「恵比寿」(1.4%)。実質1位の吉祥寺でも得票率は3.5%にすぎず、住みここちランキングとも一致しない。また年齢別に見ると、歳を取るほど「今住んでいる街」の得票率が上がるのが特徴だ。

  • 住んでいない人から見た行政区評価(左)と、住みたい街(駅)ランキング(右)

同じ方式で調査された「よく遊びに行く街」では、1位「特にない」(38.2%)、2位「新宿A」(6.4%)、3位「銀座丸の内A」(3.6%)、4位「池袋」(3.5%)、5位「横浜」(3.3%)と、やはりターミナル駅が中心になった。ランキング上位には「住みたい街(駅)」がかなり含まれており、吉祥寺や恵比寿、大宮、北千住などは住みたい街(駅)30位以内に入っている。

「穴場の街(駅)」は、“住みたい街ランキング100位以内に出てこないが、住みここち評価が高い街”を順番に並べたランキングだ。1位「市ヶ谷」、2位「北山田」、3位「南阿佐ヶ谷」、4位「柏の葉キャンパス」、5位「江田」と続く。ごく少数の知名度の高い街(駅)以外はほぼ穴場といえる。

  • よく遊びに行く街ランキング(左)と、穴場の街(駅)ランキング(右)

どこに住んでも一定以上の満足が得られる日本

ランキングを振り返ると、静かで住環境の良い街や、そのような街を目指して開発されたニュータウンが上位に入っていることが分かる。なお、平均値がマイナスとなったのはわずか11の街(駅)だけだったという。日本では、どの街に住んでも一定以上の満足が得られているという実態も見えた。今後は関西などの別地方についても調査を進めていきたいと宗所長は述べる。

今回の詳細レポートは、同社のWebサイト「賃貸未来研究所」で公開されている。また、公開されているデータからは、街(駅)の住みここちを「商店街の充実」、「家賃や不動産価格の安さ」、「高級感やステータス」、「閑静さ」などの個別項目ごとにランキングした結果も掲載されているので、気になる方は直接確認してほしい。

宗所長は最後に、「私が昨年書いた論文の中で主観的幸福度と住まいの関係を調べたところ、『幸せの20%は“住まい”でできている』ことがわかりました。今回の調査結果をもとに、みなさま1人1人がより住み心地の良い街、幸せになれる街を見つけられることを願っています」とまとめた。