マイナビニュースでは、フジテレビ系演芸特番『Cygames THE MANZAI 2018 マスターズ』(12月9日放送)のスタジオセットにフォーカスした記事を掲載。すると、SNS上で「すごいこだわり」「美術に対する力の入れ様が一歩抜きん出ている」「番組の美術セットはもっと注目されるべき」といった反響が相次いだ。

そこで、『THE MANZAI』のセットを解説してくれたフジテレビ美術制作局デザイナーの鈴木賢太氏に、他の担当番組についてもインタビュー。そこには、我々の想像を超えたたくさんのこだわりがあった――。

  • 『VS嵐』のスタジオセット

    『VS嵐』のスタジオセット

■『ネタパレ』イスの回転は演者の自力

――『THE MANZAI』『ENGEIグランドスラム』と同じネタ番組として、『ネタパレ』(毎週金曜23:30~)のセットもデザインされていますよね。

「都内のどこかにひっそりとある、本当に面白い芸人だけが出てくる小劇場」という設定で作りました。支配人である南原(清隆)さんたちが温かく見守るということで、客席後方の上から観覧している構造にしています。また、ネタ番組がたくさんある中で違いを出したいと思ったときに、ゴールデンの番組ではないのであまりお金のかかる仕掛けは作れないじゃないですか。そこで、演者さんのちょっとした工夫でできて、みんなが見て新しいセットということで、ネタが始まる前にイスを回転させてステージを見るというスタイルにしたんです。

――あれって、演者さんが自分で回ってるんですか!? 自然で皆さん一斉に回るから、自動で動いているものだと思ってました。

ご自分の足で動いてもらっているんですよ。舞台演出において、3回やればマスターできるくらいのことだったら演者さんにお願いしてもいいのではないかと僕は思っています。それ以上一晩かけて練習しないとできないことは頼んではダメだと思うんですけど、あれくらいだとどんなにトークに集中にしててもやれると思うので。

――ネタが終わると、また回転して戻ってくるわけですね。

もし、あの回転を違った構図で撮ると、別々の収録に見えてしまうじゃないですか。実は、最近のテレビは、“ライブ”の画を嫌いすぎちゃってる気がするんです。歌番組でも、スタジオを転換してる様を見せないですよね。でも、それによってライブ感を失っていると思うんです。だったら、映せる裏の画は見せて、よりライブ感を味わってもらったほうがいいと僕はよく思っているんです。『ネタパレ』は、そこを大事にしてる番組でもありますね。

  • 『ネタパレ』のセット

■『ワイドナショー』背景に森のような街並み

――『ワイドナショー』(毎週日曜10:00~)のセットデザインも担当されていますよね。

セットを遠くからみた瞬間に「WIDE na SHOW」って読めるデザインにしています。また、当初話していたのは、スタジオに来れない解説のゲストがいたときに、松本(人志)さんと東野(幸治)さんの間にモニターを置いて、等身大の人間を映像ではめ込んで、そこにいるかのように表現できるんじゃないかと考えたんです。その名残で、今もモニターがあるんですよ。それから、バラエティが作る新しい形のワイドショーというコンセプトなので、セットデザインの発注を受けたときに、全局のワイドショーをチェックしました。その上で、同じ色にならないように白とオレンジをベースに、青空と緑色に染めた街並みが見えるというバランスにしました。

『ワイドナショー』のセット

――深夜番組としてスタートしましたが、現在の日曜午前帯に移るときに、デザイン面での変更はあったのですか?

当初は背景が夜景だったんです。それが午前の時間帯に移るにあたって、殺伐としたワイドショーではなく、柔らかいイメージにしたいという制作の希望でしたので、緑の森みたいに感じる街並みにしようと考えて、緑色に染めました。

――セットの中にはかわいい小道具がたくさん置いてありますよね。

人知れず買ってきてちょっとずつ増えていったり、新年になると正月っぽい飾りにしてみたりしてます。ワイドショーってよくボトルシップが置いてあるイメージがあるので、こっちはモーターボートを置いてみたりとか、少しずつふざけているんです(笑)

――前園真聖さんたちが奥にいるバーカウンターのデザインというのは、どういう発想から出てきたんですか?

あれは、バーカウンターにいた人が、たまたま振り返ったら専門家だった…という感じで行こうということになったんです。そしたら、前園さんや犬塚(浩)弁護士といったレギュラーの専門家の登場はバーテンにしちゃおうと。でも、彼らが待っている位置を決めるのが意外と難しくて。スタジオのトークが行き詰まったり、ワンクッション置きたいときに入ってほしいんだけど、常にいると邪魔になってしまう。その中で、「ちょっと前園さん~」と呼んで、少しセットの陰にいながら、トークをちゃんと聞いていたのが分かる一番いい位置が、あそこだったんです。

  • 『ワイドナショー』のセット

■『脱力タイムズ』2段構造の理由

――ニュースがベースにある番組といえば、『全力!脱力タイムズ』(毎週金曜23:00~)もですが、こちらのセットにはとにかくいろんな人形が置いてありますよね。

世界のニュースを取り上げるという番組なので、コンセプトは、その辺で買える家庭にあるもので、みんなが知ってる世界中にある人形を集めるということにしました。その中で、日本代表としてちびまる子ちゃんやジョジョがいたり、ロシアのくるみ割り人形がいたり。あと一見、真面目なニュース番組の雰囲気を出しながらボケていく番組なので、建物を傾けていたりしているんです。総合演出の名城ラリータさんからは「CNNみたいなセットにしてほしいです。そこから、ボケ倒していくんで」と言われました(笑)

  • 『全力!脱力タイムズ』のデザイン画(左)とセット

――キャスターやパネラーのいる席を壇上にして、高さをつけている狙いはなんですか?

あれは、その下のフロアーでネタなどをやるためです(笑)。ネタをやるときに、画面の構図でパネラーの皆さんが被らないように、高さをつけてるんですよ。最後にネタをしっかりやることでオチをつけたいバラエティなので、ニュースという体にそのままボケのところは映したくない。でも、別のセットでやろうとすると空気感が途切れてしまう。そこで、2段構造ということにしました。