2017年4月、『ラッパー、家を買う。』という楽曲が世に産み落とされた。同楽曲はタイトル通り、ラッパーである十影(トカゲ)氏がマイホームを購入したという実話をベースに制作されたものである。

一国一城の主となり、同楽曲のリリースから1年半が経った今、実際にマイホームを購入してみての率直な感想を十影氏に伺った。持ち家の購入を検討している人や、戸建てとマンションとで迷っているという人は、一切のキレイごとを排除した同氏の言葉にぜひとも耳を傾けてみてほしい。

  • 十影(トカゲ) 東京を拠点に活動するラッパー。LUCK END CREWの一員として長きにわたり東京のアンダーグラウンドシーンをけん引し、現在はソロでの活動を精力的に行っている。唯一無二のキャラクターと振り切った楽曲の数々が話題を呼び、映画やバラエティー番組、CMなど、活躍の場を拡大中

この街で俺は根を張る

インタビューに入る前に、一家の大黒柱としての覚悟が込められた十影氏の同楽曲『ラッパー、家を買う。』をお聴きいただこう。

哀愁漂うトラックの上で力強く語られるマイホーム購入までの道のり。同楽曲は、HIPHOP好きはもちろんのこと、不動産業界に身を置く人からも多くの反響を呼んだ。マイホームの頭金や登記費用などは、すべてラッパーとしての稼ぎでまかなったという同氏。「ラッパー」と「35年ローン」という、対極に位置するとも言えるような属性を抱えながら、マイホームを手に入れることはかねてからの夢であったと語る。

  • こちらが噂の十影城外観(東京都葛飾区某所)。現在は奥様と2人で暮らしている

――マイホームを購入しようと思い始めたのは何歳ぐらいのときですか?

中学生ぐらいのときにはもう考えてましたね。家に投函されてくるマンションとか一軒家のチラシとかがなぜかクソ好きで。「なんなんだよこの間取りチクショー」つって。もともと実家は2世帯住宅で、40平米ぐらいの2DKで家族4人暮らしだったんですよ。母子家庭で、おふくろの親と住んでました。その頃は兄貴と同じ部屋だったのとかも嫌で、とりあえず俺は子どもできたら絶対に部屋あげるわと思って。1人1部屋だコノヤローつって。そんなことを思いながらチラシとかを見てましたね。

――今住まれている家はご実家から近いと伺いました。

クルマで20分ぐらいですね。家を買うときも、まずはこのあたりっていうエリアを決めるところから始まって。墨田区がよかったんですけど、予算の都合で葛飾区に決めました。地元もけっこう近いんで。まあ実家は年に1回も行かないですけどね。

  • 2階リビングの窓から我々の到着を確認する十影氏

俺が実家を出てからおふくろが出世して、今はなんか超豪邸になってるんですよあの家。俺には1銭もくれないですけど。でも実家はマジでヤバイっすよ。カギとか指紋認証っすもん。一族の中で唯一俺だけ指紋登録されてなくて、俺がピッてやるともれなく警備会社が来ますから。

――とはいえ十影さんも今やこうしてマイホームを手にされたわけですもんね。「何歳までに買いたい」という目標はあったんですか?

まず、子どもにローンを残したくないっていうのがあって。なので30代のうちには買おうと思ってました。家を買ったときは33歳でしたね。

――購入へ向けて実際に動き始めたのはいつぐらいですか?

25、6歳ぐらいのときに一度、買おうとは思ったんですよ。ただ、そのときって金利が高かったんですよね。それで今じゃねぇなと思って。これから金利安くなるだろうって勝手に思い込んでたんで。

――そのときも同じエリアで探されていたんですか?

そうですね。そのときはパートナーもいなかったんで、後輩を格安で住ませてローン返そうかなとか企んだり(笑)。

  • 訪問販売などをことごとく跳ねのけてきたというのも納得の佇まいで歓迎してくれた