JR西日本は11月定例社長会見にて、重大インシデントを踏まえた新幹線の安全性向上の取組みについて説明した。同社は昨年12月11日発生の重大インシデントに関して、台車の異常を発見できなかったこと、異常を感じたにもかかわらず運転を継続したことをおもな課題として受け止めている。

  • 相互連携により連続的な車両管理体制を実現

同社は重大インシデントの背景として、「新幹線のシステムへの過度の信頼」による「新幹線の安全に関する感度の停滞」があったと認識するとともに、現場ディスカッションやヒアリング、有識者の意見などを通して、新幹線部門の風土に関しても課題があったと認識。これらの課題に対し、高速鉄道である新幹線は小さなリスクも大きな事象に結びつく可能性があることや、頻度が低くとも被害は重大になる可能性が高いという特状があることを踏まえ、新幹線の安全性向上の取組みを推進していく。

新幹線の安全性向上の取組みとしては、東海道新幹線車内における殺傷事件、山陽新幹線小倉~博多間における人と列車が接触した事象などを踏まえ、列車内および鉄道施設のセキュリティの確保・管理に努めるとともに、地震や豪雨などの自然災害への備えについても取り組んできた。とくに新幹線車両の安全および運行オペレーションについて課題を解消するための取組みを進めており、その進捗状況をとりまとめている。

新幹線車両の安全確保では、重大インシデント以降に車両所で行う車両が静止した状態での検査において、台車の超音波探傷による点検や目視による入念点検など、検査内容を見直している。また、重大インシデント発生の当日、当該の台車については、振動や音、温度など、走行中にさまざまな状態の変化が顕在化していたことが判明しており、これを踏まえて走行中の車両の状態を監視し異常を検知するなど、動的な視点からの検査をより充実させる取組みにも力を入れている。

また、車両に異常が発生した際に即応できる体制の整備として、1月末から車両保守業務経験者を東京新幹線総合指令所へ配置し、安全に関する判断が迅速かつ適切に行える体制を構築した。2月からは指令所の指令員が現地の乗務員などを的確にサポートできるように、タブレット端末を用いて複数名でやり取りできる会議用アプリを導入。指令所と現地の間で車両状態などを相互に把握し、車両点検における詳細な点検箇所の指示や車両の復旧・修繕手配などに活用している。これらの体制やツールの整備により、たとえば乗務員から異音などの申告を受けた場合の対応などにおいて、効果を発揮しているとのこと。

重大インシデントにおいては、関係者間の認識のズレや判断の相互依存といった課題があったことから、社員の教育・訓練について、これらの解消に向けて取り組んできた。「合同シミュレーション訓練」では、関係者間の連携を強化することを目的として、指令員・乗務員・車両保守担当社員といった異なる立場の社員が参加。実際に本線上を走行する列車内での「列車走行訓練」も今年の5月実施している。