JR東海は24日、8両編成で走行試験を行うN700S確認試験車を報道公開した。8両編成となったN700S確認試験車の車両外観に加え、車内での測定の様子や、床下に搭載されたバッテリー自走システムなども公開された。

  • 8両編成のN700S確認試験車。「標準車両」としての性能を確認するための走行試験が始まった

東海道・山陽新幹線の次期新幹線車両N700Sは2020年度の営業投入を予定しており、今年3月からN700S確認試験車による基本性能試験がスタート。小型・軽量化を徹底した最適な床下機器配置とすることで、16両編成の基本設計を用い、12両・8両などさまざまな編成両数に変更可能な「標準車両」を実現したことも同車両の特徴であり、16両編成を8両編成に変更しての基本性能試験が10月10日夜から始まっている。報道公開では、1・2・11・8・9・6・15・16号車を連結した8両編成のN700S確認試験車が場内を走行した。

車内で行われる走行安全性測定・集電性能測定の様子も公開された。走行安全性測定は8両編成の3両目の車輪(ブレーキディスク内側)に測定用センサを取り付け、輪重(車両・レール間に作用する上下方向の力)・横圧(車両・レール間に作用する左右方向の力)を測り、車内の測定基地にて横圧輪重比(走行安全性)を解析する。

  • 走行安全性測定の様子。車輪に取り付けた測定用センサで輪重・横圧を測定する

  • 集電性能測定の様子。パンタグラフ付近に取り付けた測定用センサ・測定用カメラをもとに、パンタグラフと架線の離線状況を測定する

集電性能測定は車両に電気を供給するパンタグラフと架線の離線状況を測るもので、パンタグラフに設置した測定用センサで電流式測定(パンタグラフに流れる電流の測定)・光学式測定(パンタグラフと架線が離線した際に生じるアークの光の検知)を行い、測定用カメラでパンタグラフおよび架線の状況を監視し、車内の測定基地にて解析するという。

今回の報道公開では、9月11・12日に行われたバッテリー自走試験についても紹介された。N700S確認試験車では、床下機器の大幅な小型・軽量化により生み出されたスペースを活用し、高速鉄道では世界初というバッテリー自走システムを搭載している。自走用リチウムイオンバッテリーから駆動システムに電力を供給することで、架線の電力を使用することなく、低速で自力走行できる。地震等で長時間にわたり停電が発生した場合の移動に加え、車両の検修や整備作業等への活用も検討中。9月11・12日の試験では、16両中2両(4・13号車)にバッテリー自走システムを搭載し、約5km/hの速さで約300mを複数回走行。バッテリーで自走できることを確認したという。

  • 4号車の床下に搭載されたバッテリー自走システムも公開

  • 1・2・11・8・9・6・15・16号車の8両編成となったN700S確認試験車の外観

報道公開で取材に応じたJR東海執行役員 新幹線鉄道事業本部副本部長の上野雅之氏は、8両編成での走行試験に関して「16両編成の試験と同様、加減速性能やブレーキ性能といった基本的な性能を確認するものです」とコメント。報道陣との質疑応答では、JR東海が「標準車両」を採用するメリットを問う質問に対し、「当社は海外展開も積極的に行っており、テキサス(米国)で導入をめざす高速鉄道は8両編成を考えています。技術支援を行う台湾高速鉄道は12両編成。当社内でもドクターイエローは7両編成です。さまざまな編成長に変更できることは、当社にとっても非常に必要なことです」と答えた。

上野氏はN700S確認試験車に搭載されるバッテリー自走システムにも言及。「たとえば地震が発生した場合、N700Sはバッテリーによる自力走行が可能で、東海道新幹線のトンネル・橋りょう上から脱出できるなど、安全性は格段に上がると思います。その他、車両所内での移動や検修面でもさまざまなメリットがあり、これを使って新幹線をさらに進化させたい」と語った。

  • JR東海執行役員 新幹線鉄道事業本部副本部長の上野雅之氏

N700S確認試験車は10月から約2カ月間にわたり8両編成での基本性能試験を実施する。その後、2019年3月頃から16両編成での長期耐久試験、2019年5月頃にバッテリー自走システムによる約30km/h(実運用時の速度)での走行試験を予定している。