JR東海は22日終電後の東海道新幹線静岡駅にて、走行試験を行うN700S確認試験車の到着・発車の様子を報道公開した。走行試験は3月20日から開始され、試験期間はおおむね3年間。次期営業車両(2020年度に投入予定)に反映する新技術の最終確認を進めていく。

  • 終電後の東海道新幹線静岡駅にN700S確認試験車(J0編成)が入線

N700SはN700系以来のフルモデルチェンジとなる次期新幹線車両。「S」はN700系シリーズの中でも最高の新幹線車両を意味する「Supreme(最高の)」を表し、車体側面のシンボルマークも「Supreme」のイメージを色と形状で表現した。「デュアル スプリーム ウィング形」と呼ばれる左右両サイドにエッジを立てた先頭形状、窓開口拡大・レンズ形状最適化で視認性を向上させた前照灯(LEDライトを採用)、小牧研究施設での研究成果を反映した新技術の採用などが特徴に挙げられている。

報道公開が行われた日のN700S確認試験車は浜松~静岡間を往復したとのこと。報道関係者らが待ち構える中、深夜1時頃、浜松方面からN700S確認試験車が姿を現し、静岡駅5番線ホームへ入線。停車している間も係員による作業が行われている様子だった。N700S確認試験車は1時50分頃、再び浜松方面へ向けて発車していった。

なお、N700S確認試験車は1号車から「743-9001」「747-9001」「746-9501」「745-9001」「745-9301」「746-9001」「747-9401」「735-9001」「736-9001」「737-9001」「746-9701」「745-9601」「745-9501」「746-9201」「747-9501」「744-9001」となっていた。

年内にバッテリー自走試験や8両編成での試験も

JR東海は報道公開に先立ち、N700S確認試験車の走行試験内容として、床下機器の徹底した小型・軽量化によった生まれたポテンシャルを活用した「バッテリー自走システムによる走行試験」「8両編成での走行試験」を行うと発表している。

N700S確認試験車では、新たに自走用の小型・軽量リチウムイオン電池(東芝インフラシステムズなど電機メーカーとJR東海で開発)を搭載。これを用い、高速鉄道では初というバッテリー自走システムによる走行試験を行う。地震発生などで長時間停電し、新幹線がトンネルや橋梁上に停車した場合でも、このシステムによって低速で自力走行することが可能となり、架線からの電力を使うことなく安全な場所へ移動させられるという。バッテリー自走システムを車両の検修や整備作業などに活用することも検討中とのことで、高圧電線付近の作業の低減、車両所内の電力設備の低減などの効果が期待される。

小型・軽量化による最適な床下配置としたことで、16両編成の基本設計を用い、12両・8両といったさまざまな編成長で構成可能な「標準車両」を実現し、高品質な車両を低コストかつタイムリーに、国内外問わず提供可能としたこともN700Sの特徴のひとつ。走行試験ではこの特徴を生かし、16両編成を8両編成に変更しての試験も実施する予定だ。

N700S確認試験車は2018年度、基本性能試験を中心に、今年9月頃からバッテリー自走試験、10月頃から8両編成での走行試験を行う予定。2019年度以降は長期耐久試験を実施する。2020年度に次期営業車両が投入(予定)され、おおむね3年間という試験期間を終えた後も、N700S確認試験車は試験研究専用車両として活用されるとのことだった。

  • 静岡駅に停車中のN700S確認試験車(J0編成)の外観